建築物省エネ法の概要や、新築住宅の省エネ基準適合の義務化を解説
家づくりの基本
2025/01/06
2025/01/06
2025年度から戸建て住宅にも省エネ基準への適合が義務化されることになり、注文住宅を建てる予定の方々の関心が高まっています。本記事では、建築物省エネ法の概要から具体的な対応方法まで、わかりやすく解説していきます。
目次
建築物省エネ法とは
建築物省エネ法(建築物のエネルギー消費性能の向上に関する法律)は、2015年7月に公布された法律で、建築物の省エネルギー対策を総合的に推進することを目的としています。
制定の背景と目的
日本のエネルギー消費量のうち、建築物関連が約3割を占めているという現状を踏まえ、建築物の省エネ性能の向上を図ることで、地球温暖化対策やエネルギー資源の有効活用を推進することを目指しています。
法律の対象となる建築物
当初は、延べ面積2000㎡以上の非住宅建築物を中心に規制が行われていましたが、段階的に対象が拡大され、2025年度からは300㎡以上の建築物に加えて、全ての新築住宅にも省エネ基準への適合が義務付けられることになります。
規制の具体的内容
建築物省エネ法では、建築物の省エネルギー性能を「外皮性能」と「一次エネルギー消費量」の2つの観点から評価します。外皮性能は断熱性能を、一次エネルギー消費量は設備機器のエネルギー効率を示す指標となります。
省エネ性能の基準
省エネ基準では、建築物の用途や規模に応じて、断熱性能や設備の省エネ性能について具体的な数値基準が設けられています。例えば、住宅の場合、外壁や窓などの断熱性能、暖冷房設備、換気設備、給湯設備などの効率性が評価対象となります。
届出・審査制度
建築物の規模や用途に応じて、着工前の届出や省エネ適合性判定などの手続きが必要となります。特に大規模な建築物では、第三者機関による省エネ適合性判定を受ける必要があります。
省エネ性能向上計画認定制度
省エネ性能が優れた建築物について、所管行政庁による認定を受けることができる制度も設けられています。認定を受けた場合、容積率の特例などのインセンティブを受けることができます。
建築物の表示制度
建築物の省エネ性能を評価・表示する「建築物省エネルギー性能表示制度(BELS:Building-Housing Energy-efficiency Labeling System)」が設けられており、消費者が建築物の省エネ性能を容易に比較できるようになっています。
罰則規定
基準不適合の建築物の建築や、虚偽の届出などに対しては、是正命令や罰金などの罰則が設けられています。これにより、法律の実効性が確保されています。
支援制度
省エネ基準への適合を促進するため、省エネ性能の高い建築物の建築や改修に対する補助金制度や税制優遇措置などの支援制度が設けられています。これらの制度を活用することで、省エネ対策のコスト負担を軽減することができます。
建築物省エネ法の改正と注文住宅への影響
2025年度から実施される建築物省エネ法の改正は、注文住宅の建築に大きな影響を与えることになります。この改正により、全ての新築住宅において省エネ基準への適合が義務化されることになりました。
改正の主なポイント
改正法では、これまで大規模建築物を中心に適用されていた省エネ基準適合義務を、新築する全ての戸建て住宅にまで拡大します。この改正は、2050年カーボンニュートラル実現に向けた重要な施策として位置づけられています。
注文住宅への具体的な影響
注文住宅を建築する際には、外壁や窓などの断熱性能、設備機器の省エネ性能について、国が定める基準を満たす必要があります。具体的には、UA値(外皮平均熱貫流率)やηA値(平均日射熱取得率)などの指標で評価されます。
求められる省エネ性能基準
住宅の省エネ性能は、「外皮性能」と「一次エネルギー消費量」の両面から評価されます。外皮性能では、屋根、外壁、床、開口部等の断熱性能が評価され、一次エネルギー消費量では、暖冷房、換気、給湯、照明等の設備のエネルギー効率が評価されます。
必要となる具体的な対策
省エネ基準を満たすためには、高性能な断熱材の使用、複層ガラスやLow-E複層ガラスの採用、高効率な設備機器の導入などが必要となります。また、太陽光発電システムの設置なども、省エネ性能向上に有効な対策として推奨されています。
建築コストへの影響
省エネ基準への適合により、断熱材や設備機器などの初期コストは増加する可能性があります。ただし、光熱費の削減効果や各種補助金の活用により、長期的には経済的なメリットが期待できます。
手続きの変更点
注文住宅の建築時には、省エネ計算書の作成や提出が必要となります。また、工事完了時には、省エネ基準への適合状況について、建築主事等による検査を受ける必要があります。
経過措置と支援制度
円滑な制度移行のため、一定期間の経過措置が設けられる予定です。また、省エネ性能向上のための改修工事に対する補助金や、省エネ住宅の取得に対する税制優遇などの支援制度も用意されています。
建築主に求められる対応
建築主は、設計段階から省エネ基準への適合を意識する必要があります。設計者や施工者と十分な協議を行い、必要な省エネ対策を計画的に進めることが重要です。また、各種支援制度の活用についても、早めに検討することが推奨されます。
住宅性能の向上メリット
省エネ基準に適合した住宅では、光熱費の削減だけでなく、室内環境の快適性向上や、結露防止による建物の長寿命化なども期待できます。また、将来的な環境規制の強化にも対応できる持続可能な住まいとなります。
よくある質問(Q&A)
基本的な質問
Q1:2025年度からの省エネ基準適合義務化は、全ての住宅が対象になるのですか?
A1:新築する住宅が対象となります。既存の住宅や、建築確認申請が2025年3月31日以前に行われる住宅は対象外です。
Q2:省エネ基準に適合しない場合、どうなりますか?
A2:建築確認申請が受理されず、着工できません。また、基準不適合が判明した場合は、是正命令や工事停止命令の対象となる可能性があります。
具体的な基準に関する質問
Q1:具体的にどのような性能が求められますか?
A1:外壁や窓などの断熱性能(UA値)、日射遮蔽性能(ηA値)、そして設備機器のエネルギー効率(一次エネルギー消費量)について、地域区分ごとに定められた基準値を満たす必要があります。
Q2:地域によって基準は異なりますか?
A2:はい、日本は1〜8地域に区分されており、それぞれの気候特性に応じた異なる基準値が設定されています。寒冷地ほど厳しい断熱性能が求められます。
費用に関する質問
Q1:省エネ基準に適合させるために、どのくらいコストが増加しますか?
A1:建物の規模や地域によって異なりますが、一般的に従来と比べて数十万円〜百数十万円程度のコスト増が見込まれます。ただし、光熱費の削減や各種補助金の活用により、長期的にはコスト回収が可能です。
Q2:補助金や支援制度はありますか?
A2:省エネ性能の高い住宅の建築や改修に対する補助金、住宅ローン減税などの税制優遇措置が用意されています。詳細は国や地方自治体の制度をご確認ください。
手続きに関する質問
Q1:省エネ基準への適合はどのように確認されますか?
A1:設計段階で省エネ計算書を作成・提出し、建築確認申請時に審査されます。また、工事完了時には完了検査で基準適合が確認されます。
Q2:省エネ計算は誰が行うのですか?
A2:通常は設計者や省エネ適合性判定機関が行います。ただし、小規模住宅については、簡易な計算方法も認められています。
施工に関する質問
Q1:既に契約済みの場合はどうなりますか?
A1:建築確認申請が2025年3月31日以前に行われる場合は、現行の基準が適用されます。それ以降の申請には新基準が適用されます。
Q2:リフォームの場合は規制の対象となりますか?
A2:増改築を行う場合、規模や用途によって基準適合が求められる場合があります。ただし、純粋な改修工事は対象外です。
性能・効果に関する質問
Q1:省エネ基準に適合すると、どのようなメリットがありますか?
A1:光熱費の削減、室内環境の快適性向上、結露防止による建物の長寿命化、資産価値の向上などが期待できます。
Q2:省エネ性能の表示制度はありますか?
A2:BELS(建築物省エネルギー性能表示制度)により、省エネ性能を★の数で表示することができます。また、住宅性能表示制度でも省エネ性能が評価項目となっています。
まとめ
建築物省エネ法の改正により、2025年度からは新築戸建て住宅にも省エネ基準への適合が必要となります。住宅を建てる際には、早めに専門家に相談し、必要な対策を計画的に進めることが重要です。この法改正は、環境に優しく快適な住まいづくりを推進する重要な取り組みとなります。
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