あなたの土地は大丈夫?盛土・切土のリスクと対策を徹底解説
家づくりの基本
2024/08/16
2024/08/20
家を新築する際、土地の状況は非常に重要です。その中でも、「盛土」と「切土」は特に注意が必要な点です。盛土や切土が行われた土地は、見晴らしが良く、日当たりも良好ですが、同時に地盤の安定性や災害リスクなど、考慮すべき点も多くあります。この記事では、盛土と切土について詳しく解説し、家を新築する前に知っておくべき注意点をまとめています。
目次
盛土・切土について
盛土と切土は、宅地造成や道路建設などで広く用いられる土木工法です。これらの技術は、自然の地形を人工的に変更し、建築や開発に適した平坦な土地を作り出すために使用されます。それぞれの特徴と重要性について、詳しく見ていきましょう。
盛土・切土の定義
盛土とは、平地や低地に土を盛って高くした土地のことを指します。具体的には、他の場所から運んできた土や、現地で発生した土を使って地面を盛り上げる工法です。これにより、低い土地を高くし、水はけの改善や建物の基礎を高くすることができます。
一方、切土は山や丘陵地を削って平らにした土地のことです。自然の地形を切り取ることで平坦な面を作り出し、建築に適した土地を生み出します。切土は、山間部や丘陵地での宅地開発によく用いられる手法です。
両者とも、自然地形を人工的に変更する点で共通していますが、盛土は土を足す作業、切土は土を取り除く作業という点で異なります。また、同じ開発地内でも、場所によって盛土と切土が併用されることも多々あります。
法面保護工について
盛土や切土を行った際に生じる斜面を「法面」と呼びます。この法面は、雨や風による侵食を防ぐために保護工事が必要です。法面保護工には、様々な工法があります。
1. 植生工:草や木を植えて根系で土を固定する方法
2. モルタル吹付工:モルタルを吹き付けて表面を保護する方法
3. 石張工:石を並べて法面を保護する方法
4. 法枠工:コンクリートなどで格子状の枠を作り、その中に植物を植える方法
これらの工法は、現場の状況(斜面の角度、土質、気候条件など)に応じて適切なものが選択されます。法面保護工は、盛土や切土地の長期的な安定性を確保するために非常に重要な役割を果たします。
大規模盛土造成地について
大規模盛土造成地とは、盛土の高さが5メートル以上で、面積が3,000平方メートル以上の盛土造成地のことを指します。これらの地域は、地震や豪雨時に崩壊のリスクが高いため、特に注意が必要です。
国土交通省は、全国の大規模盛土造成地の調査・把握を進めており、その結果を公表しています。この情報は、土地選びや住宅購入の際の重要な判断材料となります。
大規模盛土造成地では、以下のような対策が必要とされています。
1. 定期的な点検と維持管理
2. 必要に応じた補強工事の実施
3. 災害時の避難計画の策定
4. 住民への情報提供と啓発活動
これらの対策を適切に実施することで、大規模盛土造成地の安全性を高めることができます。
盛土と切土は、私たちの生活に密接に関わる土木技術です。これらの技術により、自然地形を変更し、より多くの土地を有効活用することが可能になりました。しかし同時に、適切な施工と維持管理が行われないと、災害リスクを高める可能性もあります。盛土・切土について正しく理解し、適切な対策を講じることが、安全で快適な住環境を実現する上で重要です。
盛土や切土に関する法律
盛土や切土に関する法律は、安全な宅地造成と災害防止を目的として制定されています。これらの法律は、土地開発や建築に関わる全ての人々に影響を与える重要な規制です。主要な法律について詳しく見ていきましょう。
宅地造成等規制法
宅地造成等規制法は、宅地造成に伴う災害を防止するために1961年に制定された法律です。この法律の主な目的と内容は以下の通りです。
1. 規制区域の指定: 都道府県知事等が、宅地造成に伴う災害の発生のおそれが大きい市街地または市街地となろうとする土地の区域を「宅地造成工事規制区域」として指定します。
2. 許可制度: 規制区域内で一定規模以上の宅地造成工事を行う場合は、都道府県知事等の許可が必要となります。
3. 技術基準の設定: 盛土や切土の高さ、擁壁の設置基準、排水施設の設置など、宅地造成工事に関する技術的基準を定めています。
4. 監督処分: 違反行為に対しては、工事の停止命令や是正命令などの監督処分を行うことができます。
5. 既存宅地の改善命令: すでに造成された宅地で災害の危険が認められる場合、所有者等に対して改善命令を出すことができます。
この法律により、無秩序な宅地開発が抑制され、より安全な宅地造成が促進されています。
盛土規制法
盛土規制法(正式名称:宅地造成及び特定盛土等規制法)は、2022年5月に成立した新しい法律です。この法律は、近年多発している盛土による災害を受けて制定されました。主な特徴と内容は以下の通りです。
1. 規制対象の拡大: これまで規制の対象外だった農地や森林での盛土も規制の対象となりました。
2. 全国一律の規制: 全国で一律の基準による規制を行います。これにより、地域による規制の差がなくなり、より統一的な安全基準が適用されます。
3. 許可制の導入: 盛土等を行う区域を「特定盛土等規制区域」として指定し、この区域内での盛土等の行為には都道府県知事の許可が必要となります。
4. 既存盛土の調査: 既存の盛土についても、行政による調査・監視の対象となります。必要に応じて、是正命令等の措置を講じることができます。
5. 罰則の強化: 違反行為に対する罰則が強化され、懲役刑や高額の罰金刑が設けられました。
この法律の施行により、盛土による災害リスクの低減が期待されています。また、土地取引の際にも、この法律に基づく規制状況を確認することが重要になってきます。
これらの法律以外にも、土砂災害防止法や建築基準法など、盛土や切土に関連する様々な法規制があります。これらの法律は互いに補完し合いながら、安全な土地利用と災害防止を目指しています。
盛土や切土に関する法律を理解することは、安全な住宅地選びや適切な土地開発を行う上で非常に重要です。特に、新しい盛土規制法の施行により、これまで以上に盛土に関する規制が厳格化されることが予想されます。土地の購入や家の建築を検討する際は、これらの法律に基づく規制状況を確認し、必要に応じて専門家のアドバイスを求めることが賢明でしょう。
盛土や切土のメリット・デメリット
盛土や切土は、宅地造成において広く用いられる手法ですが、それぞれにメリットとデメリットがあります。これらを正しく理解することで、より良い土地選びや家づくりの判断ができるでしょう。詳しく見ていきましょう。
盛土や切土のメリット
1. 見晴らしが良い: 盛土や切土により高台に位置する土地は、周囲を見渡せる良好な眺望が得られます。特に、都市部では貴重な眺望を楽しむことができ、居住満足度の向上につながります。また、良好な景観は不動産価値の向上にも寄与する可能性があります。
2. 日当たりや風通しが良い: 高台に位置するため、周囲に日光を遮る建物が少なく、日当たりが良好です。また、風通しも良いため、夏場の暑さ対策にも効果的です。これらの要素は、住環境の快適性を大きく向上させ、エネルギー効率の面でもメリットがあります。
3. 水害のリスクが低い: 盛土により地盤が高くなるため、浸水被害のリスクが低くなります。特に、河川の近くや低地では、この利点が大きな意味を持ちます。近年、気候変動の影響で水害が増加傾向にある中、この点は重要な利点となっています。
4. 多層的な家づくりができる: 傾斜地を利用することで、複数の階層を効果的に配置した家づくりが可能になります。例えば、1階をガレージとし、2階以上を居住空間とするなど、土地を最大限に活用した設計ができます。これにより、限られた敷地面積でも効率的な空間利用が可能になります。
盛土や切土のデメリット
1. 自然災害のリスクが高い: 盛土地や切土地は、地震や豪雨時に地盤が不安定になるリスクがあります。特に、大規模な盛土造成地では、崩壊の危険性が高まります。また、切土地では、土砂崩れや地滑りのリスクも考慮する必要があります。これらのリスクは、適切な地盤改良や擁壁の設置などで軽減できますが、追加のコストがかかる場合があります。
2. 土地が売りにくくなる可能性がある: 盛土や切土が行われた土地は、地盤の安定性に不安を感じる買主が多いため、将来的に土地を売却する際に不利になる可能性があります。特に、大規模盛土造成地として公表されている地域では、その影響が大きくなる可能性があります。ただし、適切な対策が施されていることを証明できれば、この不利な点を緩和できる場合もあります。
3. 地盤改良工事のためのコストがかかる: 盛土地では、地盤の安定性を高めるために地盤改良工事が必要になることがあります。この工事には追加のコストがかかるため、建築予算に影響を与える可能性があります。ただし、この投資は長期的な安全性と資産価値の維持につながるため、必要経費として考えるべきでしょう。
4. 勾配があるため上下移動が必要な家になる: 傾斜地に建てられた家では、階段の上り下りが多くなります。これは、高齢者や小さな子どもがいる家族にとっては負担になる可能性があります。バリアフリー設計を考慮する必要があり、場合によってはエレベーターの設置なども検討しなければならないかもしれません。
5. 見分けることが難しい: 盛土や切土が行われた土地は、一見しただけでは判断が難しいことがあります。特に、造成から時間が経過している場合は、周囲の環境に馴染んでいることが多く、素人目では判断が困難です。そのため、土地購入時には専門家による調査や自治体への確認が必要になります。
盛土や切土には、このようなメリットとデメリットがあります。土地選びや家づくりの際は、これらの点を十分に考慮し、専門家のアドバイスを受けながら判断することが重要です。また、デメリットとされる点も、適切な対策を講じることで軽減できる場合が多いため、過度に恐れる必要はありません。むしろ、これらの特性を理解した上で、メリットを最大限に活かし、デメリットを最小限に抑える家づくりを目指すことが大切です。
安心して家づくりをするために建築前にすべきこと
盛土や切土が行われた土地で安心して家づくりを行うためには、事前の十分な調査と適切な対策が不可欠です。以下に、建築前に行うべき重要なステップを詳しく解説します。
古地図を確認する
土地の過去の状態を知るために、古地図の確認が有効です。この作業の重要性と方法は以下の通りです。
1. 国土地理院の地図や、地元の図書館などで過去の地図を閲覧しましょう。
2. 地形の変化を時系列で追うことで、盛土や切土の履歴を把握できます。
3. 昔の河川や湿地帯だった場所は、軟弱地盤の可能性があるため特に注意が必要です。
4. オンラインで閲覧できる「今昔マップ」などのサービスも活用すると便利です。
周辺環境を確認する
実際に現地を訪れ、周辺環境を詳しく観察することが重要です。
1. 急な斜面や大きな擁壁の有無を確認しましょう。これらは盛土や切土の痕跡を示す可能性があります。
2. 近隣の建物の状態を観察します。傾いている建物や地盤沈下の跡がある場合は注意が必要です。
3. 雨天時に訪れ、水はけの状況を確認するのも効果的です。
4. 周辺の植生も重要な手がかりになります。特定の植物が生えている場合、その土地の特性を示唆している可能性があります。
建築会社や自治体に確認をする
専門家や行政機関からの情報収集は非常に重要です。
1. 建築会社に土地の履歴や地盤の状態について確認しましょう。信頼できる会社は、正直に情報を開示してくれるはずです。
2. 地元の自治体で、ハザードマップや土砂災害警戒区域の指定状況を確認します。
3. 大規模盛土造成地マップが公開されている場合は、必ず確認しましょう。
4. 過去の災害履歴や、地域特有の地盤リスクについても自治体に問い合わせると良いでしょう。
擁壁の状態を見る
擁壁は盛土や切土地の安定性を保つ重要な構造物です。
1. 擁壁にひび割れや変形がないか、注意深く観察しましょう。
2. 水抜き穴が正常に機能しているか確認します。詰まっている場合は要注意です。
3. 擁壁の傾きや膨らみがないか確認します。これらは不安定化の兆候かもしれません。
4. 専門家による擁壁診断を受けることも検討しましょう。
地盤改良工事や擁壁工事を行う
必要に応じて、地盤改良工事や擁壁の補強工事を検討しましょう。
1. ボーリング調査などの地盤調査を実施し、地盤の状態を正確に把握します。
2. 軟弱地盤の場合、杭打ち工法や地盤改良工事を検討します。
3. 既存の擁壁が不安定な場合は、補強工事や建て替えを行います。
4. これらの工事は専門性が高いため、信頼できる業者を選定することが重要です。
家の耐震性を高める
盛土地や切土地では、地震時の揺れが増幅される可能性があるため、建物自体の耐震性を高めることが重要です。
1. 耐震等級の高い設計を採用しましょう。耐震等級3を目指すのが理想的です。
2. 制振装置や免震装置の導入を検討します。これらは地震の揺れを大幅に軽減できます。
3. 基礎工事に特に注意を払い、地盤との一体性を高めます。
4. 耐震性の高い建材や工法を選択します。例えば、耐震木造在来工法や鉄骨造などが挙げられます。
これらのステップを慎重に踏むことで、盛土や切土が行われた土地でも、より安全で快適な家づくりが可能になります。ただし、これらの調査や対策には専門的な知識が必要な場合が多いため、信頼できる専門家のアドバイスを積極的に求めることが大切です。また、これらの対策にはある程度のコストがかかることを念頭に置き、予算計画を立てる際にはこれらの費用も考慮に入れましょう。安全性への投資は、長期的に見れば必ず価値があるものです。
よくある質問(Q&A)
盛土と切土に関して、多くの方が疑問に思う点をQ&A形式でまとめました。これらの質問と回答を通じて、盛土と切土についての理解を深めていただければと思います。
Q1: 盛土や切土が行われた土地は避けた方が良いのでしょうか?
A1: 必ずしも避ける必要はありませんが、十分な調査と適切な対策が重要です。盛土や切土が行われた土地でも、適切な施工と維持管理がなされていれば安全に住むことができます。ただし、地盤の状態や周辺環境を十分に確認し、必要に応じて地盤改良工事を行うことが大切です。また、ハザードマップなどで災害リスクを確認し、リスクが高い場合は慎重に判断する必要があります。
Q2: 盛土や切土が行われた土地かどうかを簡単に判断する方法はありますか?
A2: 完全に判断するのは難しいですが、いくつかの目安があります。周辺と比べて明らかに高低差がある場合や、大きな擁壁がある場合は、盛土や切土が行われた可能性が高いです。また、地形図を過去のものと比較することで、地形の変化を確認できる場合もあります。ただし、確実に知るためには、専門家による調査や自治体への確認が必要です。土地の履歴や地盤調査結果を確認することが最も確実な方法です。
Q3: 盛土規制法が施行されると、どのような変化がありますか?
A3: 盛土規制法の施行により、これまで規制の対象外だった農地や森林での盛土も規制の対象となります。また、全国一律の基準で盛土が規制されるため、より安全な土地利用が促進されることが期待されます。具体的には以下のような変化が予想されます。
1. 盛土を行う際の許可制度が厳格化される
2. 既存の盛土についても行政による調査・監視が強化される
3. 違反行為に対する罰則が強化される
4. 盛土に関する情報公開が進み、土地取引時の重要な判断材料となる
これらの変化により、盛土に関する安全性が向上し、災害リスクの低減につながることが期待されます。
Q4: 盛土や切土が行われた土地で家を建てる場合、追加でどのくらいのコストがかかりますか?
A4: 追加コストは、土地の状況や必要な対策によって大きく異なります。一般的に、地盤改良工事が必要な場合、100万円から数百万円程度のコストがかかることがあります。また、擁壁の補強や新設が必要な場合は、さらに高額になる可能性があります。ただし、これらの対策費用は、将来的な安全性確保や資産価値の維持につながる重要な投資と考えるべきです。具体的な費用については、専門家による調査と見積もりを行うことをおすすめします。
Q5: 盛土や切土が行われた土地での地震の影響は、平地と比べてどう違いますか?
A5: 盛土や切土が行われた土地では、地震の揺れが増幅されたり、地盤が不安定になりやすい傾向があります。特に、大規模な盛土造成地では、地滑りや崩壊のリスクが高まる可能性があります。一方で、適切に施工された盛土や切土、そして十分な地盤改良が行われている場合は、平地と同等以上の安全性を確保できることもあります。地震の影響は、地盤の状況や施工方法、周辺環境など多くの要因に左右されるため、専門家による個別の評価が重要です。
Q6: 盛土や切土が行われた土地で家を建てる際、特に注意すべき点は何ですか?
A6: 以下の点に特に注意を払う必要があります。
1. 地盤調査を徹底的に行い、地盤の安定性を確認する
2. 必要に応じて適切な地盤改良工事を実施する
3. 擁壁の状態を確認し、必要があれば補強や新設を行う
4. 排水設備を適切に設計・施工し、水はけを良くする
5. 建物の耐震性を高める設計や工法を採用する
6. 定期的な点検と維持管理の計画を立てる
これらの点に注意を払うことで、盛土や切土が行われた土地でも、安全で快適な住まいを実現することができます。
まとめ
盛土と切土は、宅地造成において重要な工法ですが、同時に様々なリスクも伴います。家を新築する際は、土地の履歴や地盤の状態を十分に調査し、必要な対策を講じることが大切です。見晴らしの良さや日当たりの良さといったメリットを活かしつつ、地盤の安定性や災害リスクにも十分な注意を払うことで、安全で快適な住まいを実現することができます。専門家のアドバイスを積極的に求め、慎重に検討を重ねることで、長期的に安心して暮らせる家づくりが可能となります。
なお、当社が提供している「housemarriage」では、住宅コンシェルジュが理想の家づくりのサポートとして、住まいを探す上で重要なハウスメーカーや工務店の営業担当者とのマッチングサポートをさせていただきます。住宅購入の資金計画の相談・作成や、相性良く親身になってくれる「営業担当者」をご紹介します。家づくりに関して少しでも不安を感じるようであれば、お問い合わせください。
この記事のタグ
運営会社情報
会社名
:有限会社ティーエムライフデザイン総合研究所
代表者
:渡辺知光
本社
所在地:〒104-0045 東京都中央区築地2-15-15 セントラル東銀座1002
アクセス
:地下鉄日比谷線築地駅より徒歩3分
:地下鉄日比谷線都営浅草線東銀座駅より徒歩3分