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知っておくべき日照権の基礎知識やトラブル防止策、実践的な対応方法

家づくりの基本

2024/08/16

2024/08/16

記事監修者

1級ファイナンシャル・プランニング技能士 / 渡辺 知光

知っておくべき日照権の基礎知識やトラブル防止策、実践的な対応方法

新築住宅の建設や増改築を計画する際、近隣住民との関係で最も注意すべき問題の一つが「日照権」です。日照権をめぐるトラブルは、長期化しやすく、解決に多大な時間とコストがかかることもあります。本記事では、日照権の基本的な概念から、トラブルを防ぐためのポイントまで、詳しく解説していきます。

日照権について

日照権とは、建物の居住者が太陽の光を十分に享受する権利のことを指します。具体的には、建物の窓や庭などに適切な日当たりを確保する権利のことです。この権利は、健康的で快適な生活を送るために重要な要素として認識されています。

日照権の概念は、主に以下の観点から重要視されています。

1. 健康面:適切な日照は、ビタミンD合成や体内リズムの調整など、人体の健康に重要な役割を果たします。

2. 生活の質:十分な日照は、室内の明るさや温かさを確保し、快適な居住環境を維持するのに欠かせません。

3. エネルギー効率:日照は自然光や熱源として活用でき、エネルギー消費の削減にもつながります。

4. 植物の生育:庭や家庭菜園などの植物の健全な生育には、十分な日照が必要です。

日照権は、憲法や法律で保証されている?

日照権は、明確に成文法で規定されているわけではありません。しかし、裁判所の判例を通じて、「健康で文化的な生活を営む権利」の一部として認められるようになりました。この考え方は、以下の憲法条文に基づいているとされています。

1. 憲法第25条(生存権):「すべて国民は、健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有する」

2. 憲法第13条(幸福追求権):「すべて国民は、個人として尊重される。生命、自由及び幸福追求に対する国民の権利については、公共の福祉に反しない限り、立法その他の国政の上で、最大の尊重を必要とする」

これらの条文を根拠に、裁判所は日照権を法的に保護すべき利益として認めています。ただし、具体的にどの程度の日照が保障されるべきかについては、個々の状況や地域の特性によって判断が分かれる場合があります。

建築基準法と日照権の関係

建築基準法は、直接的に日照権を規定しているわけではありませんが、建物の高さや配置に関する規制を設けることで、間接的に日照権を保護しています。具体的には、以下の規制が関係しています。

1. 日影規制:建物が周囲に落とす影の時間を制限する規制です。

2. 北側斜線制限:建物の北側の高さを制限する規制です。

3. 容積率・建蔽率規制:建物の大きさや敷地に対する建築面積を制限することで、間接的に日照を確保します。

4. 高度地区:地域ごとに建物の高さの最高限度を定めることで、周辺環境との調和を図ります。

これらの規制は、地域や用途地域によって基準が異なります。都市計画において、それぞれの地域の特性に応じた日照の確保が考慮されているのです。

日照権は、法律で明確に定義されているわけではありませんが、憲法の理念と建築基準法の具体的な規制を通じて、実質的に保護されています。しかし、都市の高密度化や建築技術の進歩により、日照権をめぐる問題は複雑化しています。そのため、建築計画の際には法規制を遵守するだけでなく、周辺環境や近隣住民への配慮も重要となります。

日照権が問題となるケース

日照権が主張されるのは、主に新しい建築物や構造物によって、既存の建物の日当たりが著しく阻害される場合です。以下、具体的なケースと注意点について詳しく解説します。

近隣との距離・方角は?

日照権が問題となりやすいのは、主に以下のような状況です。

1. 南側の隣地に高層建築物が建設される場合: 冬至の日を基準に、午前8時から午後4時までの間に日照が著しく阻害される可能性が高くなります。特に、敷地境界線から近い位置に高い建物が建てられると、影響が大きくなります。

2. 東西の隣地に中高層の建物が建設される場合: 朝夕の日照に影響を与える可能性があります。特に、冬季は太陽高度が低いため、影響が顕著になることがあります。

3. 北側の隣地からの主張: 北側斜線制限に違反するような建築物が南側に建設される場合、北側の住民から日照権が主張されることがあります。

距離に関しては、一般的に建物の高さの2倍程度の範囲内にある建物が影響を受けやすいとされていますが、建物の形状や周辺環境によって変わります。

樹木に対して日照権を主張できる?

樹木による日照阻害に対しても、日照権を主張できる場合があります。以下のような状況が考えられます。

1. 隣家の庭木が著しく成長し、日照を妨げている場合

2. 敷地境界線付近に植えられた生垣や並木が高く伸びて日照を阻害している場合

3. 公園や街路樹が大きくなり、近隣住宅の日照に影響を与えている場合

ただし、樹木は生き物であり、完全な除去が難しい場合もあります。また、樹木には環境保全や景観形成といった公益的機能もあるため、話し合いによる解決が望ましいでしょう。具体的には、剪定や一部伐採などの対応が考えられます。

太陽光発電への影響は?

近年増加している太陽光発電パネルへの日照阻害も、日照権の問題として扱われることがあります。以下のような点が問題となります。

1. 発電効率の低下: 日照が阻害されることで、太陽光パネルの発電効率が著しく低下し、経済的損失につながる可能性があります。

2. 投資回収期間の延長: 発電量の減少により、設備投資の回収期間が当初の計画よりも長くなる可能性があります。

3. 環境への貢献度の低下: 再生可能エネルギーの利用が妨げられることで、環境保護の観点からも問題となる可能性があります。

ただし、太陽光発電に特化した明確な法的基準はまだ確立されていません。そのため、従来の日照権の考え方を応用しつつ、個別のケースごとに判断されることになります。

日照権が主張されるその他の状況としては、以下のようなケースも考えられます。

1. マンションのベランダに設置された物干し台や物置が、下階の住戸の日照を阻害する場合

2. 公共施設や大規模商業施設の建設により、周辺住宅の日照環境が変化する場合

3. 高架道路や鉄道の建設により、沿線の住宅の日照が阻害される場合

4. リフォームや増築により、自宅の一部の部屋の日照が悪化する場合(自己主張)

日照権の主張が認められるかどうかは、日照阻害の程度、地域性、建物の用途、従前の状況などを総合的に考慮して判断されます。そのため、日照権を主張する際は、客観的なデータ(日影図など)や具体的な被害の内容を明確にすることが重要です。また、問題解決には、当事者間の話し合いや専門家の介入が有効な場合が多いことを覚えておきましょう。

日照権でトラブルになった場合は?

日照権をめぐるトラブルは、近隣関係を悪化させる可能性があり、解決に時間とコストがかかることも少なくありません。トラブルに直面した場合、以下のような対応が考えられます。

日照権に関する相談窓口

日照権のトラブルに直面した場合、以下の相談窓口を活用することができます。

1. 自治体の建築指導課: 建築基準法や条例に基づく日影規制などの法的な側面について相談できます。また、必要に応じて現地調査や指導を行うこともあります。

2. 市民相談窓口: 多くの自治体では、一般的な市民相談の一環として日照権問題にも対応しています。専門家への橋渡しをしてくれる場合もあります。

3. 弁護士: 法的な観点から問題を分析し、解決策を提案してくれます。必要に応じて調停や訴訟の代理人となることもできます。

4. 建築士: 技術的な観点から日影の影響を分析し、改善案を提案することができます。

5. 不動産鑑定士: 日照阻害による資産価値の低下などを客観的に評価することができます。

6. 裁判外紛争解決手続(ADR)機関: 中立的な第三者が介入し、話し合いによる解決を支援します。建築紛争専門のADR機関もあります。

日照権のトラブル例

日照権をめぐるトラブルには、様々なケースがあります。以下に代表的な例を挙げます。

1. 隣家の増築や建て替えによる日照阻害: 例:2階建てだった隣家が3階建てに建て替えられ、自宅の日当たりが悪くなった。 対応:建築計画の段階で事前協議を行い、セットバックや階数の調整を要請することが考えられます。

2. マンション建設による周辺一戸建ての日照阻害: 例:隣接地に高層マンションが建設され、複数の一戸建て住宅の日照が失われた。 対応:住民が団結して建設業者と交渉し、建物の高さや配置の変更、あるいは補償金の支払いを求めることがあります。

3. 公共施設や大型商業施設の建設による日照阻害: 例:近隣に大型ショッピングモールが建設され、広範囲の住宅の日照環境が変化した。 対応:自治体を交えた協議会を設置し、総合的な環境影響評価を求めることがあります。

4. 樹木の成長による日照阻害: 例:隣家の庭木が大きく育ち、自宅の窓を覆うようになった。 対応:隣人との話し合いを通じて、剪定や一部伐採を依頼することが考えられます。

5. 太陽光発電パネルへの日照阻害: 例:隣接地の建物増築により、自宅の屋根に設置した太陽光パネルの発電効率が著しく低下した。 対応:発電量の減少による経済的損失を算定し、補償を求めることがあります。

これらのトラブルに対処する際の一般的な流れは以下の通りです。

1. 問題の把握と証拠収集: 日照阻害の状況を写真や動画で記録し、日影図を作成するなど、客観的なデータを集めます。

2. 相手方との直接交渉: 問題点を整理し、相手方に丁寧に説明して、解決策を提案します。

3. 専門家への相談: 直接交渉で解決しない場合、前述の相談窓口を活用します。

4. 調停や斡旋の利用: 第三者の介入による解決を図ります。

5. 訴訟: 他の方法で解決できない場合の最終手段です。

日照権トラブルの解決には、法的な知識だけでなく、技術的な理解や交渉力も必要となります。また、近隣関係を考慮しながら冷静に対応することが重要です。早期の段階で専門家に相談し、適切なアドバイスを受けることで、より円滑な解決につながる可能性が高まります。

最後に、日照権トラブルは予防が最も効果的です。新築や増改築を計画する際は、周辺環境への影響を十分に考慮し、近隣住民とのコミュニケーションを大切にすることが、トラブルを未然に防ぐ鍵となります。

日照権が認められた判例と、認められなかった判例は?

日照権に関する裁判では、個々の事例の具体的な状況に基づいて判断が下されます。ここでは、日照権が認められた判例と認められなかった判例について、詳しく解説します。

日照権が認められた判例とポイント

日影規制のない立地でも受忍限度を超えると認定

東京高裁平成元年3月15日判決

事案の概要: 東京都内の商業地域で、日影規制の適用がない地域において、マンション建設による日照阻害が問題となりました。

判決のポイント

1. 日影規制の適用がない地域であっても、日照阻害が社会通念上の受忍限度を超える場合、違法となる可能性があることを示しました。

2. 本件では、冬至日の日照時間が約2時間まで減少したことが、受忍限度を超えると判断されました。

3. 裁判所は、地域性や土地利用の変遷、被害の程度、加害建物の用途等を総合的に考慮して判断を下しました。

この判例の意義: 法規制の有無にかかわらず、実質的な被害の程度が重要であることを示しました。また、日照権の保護が都市部においても考慮されるべきことを明確にしました。

冬至期以外で高速道路が住宅の日照権を侵害

最高裁昭和56年12月16日判決

事案の概要: 高速道路の高架橋建設により、近隣住宅の日照が阻害された事例です。

判決のポイント

1. 冬至期以外の時期(2月9日から11月11日)でも、日照時間が著しく減少したことが認められました。

2. 高架道路による日照阻害が、平均的な生活利益を犠牲にする程度のものであると判断されました。

3. 公共性の高い事業であっても、個人の生活利益を不当に侵害してはならないという原則が示されました。

この判例の意義: 日照権が冬至期だけでなく、年間を通じて考慮されるべきことを示しました。また、公共事業と個人の権利のバランスについて重要な指針を提供しました。

日照権が認められなかった判例とポイント

夏至を基準とすると受忍限度を逸脱していたが、被害を認められなかった判例

東京地裁平成5年3月22日判決

事案の概要: マンション建設による日照阻害が問題となり、夏至を基準とした場合の日照被害が主張されました。

判決のポイント

1. 夏至を基準にすると日照阻害が受忍限度を超えていましたが、冬至を基準にすると受忍限度内でした。

2. 裁判所は、冬至を基準とする従来の判断基準を重視し、日照権侵害を認めませんでした。

3. 夏季の日照阻害については、生活上の不便はあるものの、健康被害等の重大な損害には当たらないと判断されました。

この判例の意義: 日照権の判断基準として冬至が重視されることを再確認しました。また、季節による日照の違いが法的判断に与える影響について示唆を与えました。

日照被害のある部屋がほとんど使用されていなかったため、被害を認められなかった判例

東京地裁昭和61年3月10日判決

事案の概要: マンション建設により隣接する住宅の一部屋の日照が阻害された事例です。

判決のポイント

1. 日照被害を受けた部屋がほとんど使用されていなかったことが重視されました。

2. 実際の生活への影響が小さいと判断され、日照権侵害が認められませんでした。

3. 裁判所は、形式的な日照時間の減少だけでなく、実質的な生活利益の侵害の有無を重視しました。

この判例の意義: 日照権の判断には実際の生活への影響が考慮されることを示しました。また、単なる物理的な日照時間の減少だけでなく、その影響の実質的な評価が重要であることを明確にしました。

これらの判例から、日照権の判断には以下の要素が重要であることがわかります。

1. 日照阻害の程度(特に冬至を基準とした評価)

2. 地域性や周辺の土地利用状況

3. 実際の生活への影響

4. 建物の用途や公共性

5. 代替措置の可能性

6. 当事者間の利害調整の努力

日照権に関する裁判では、これらの要素を総合的に考慮して判断が下されます。そのため、類似の事案であっても、具体的な状況によって結果が異なる可能性があります。日照権問題に直面した際は、これらの判例を参考にしつつ、専門家に相談することで適切な対応を取ることができるでしょう。

日照権でトラブルを防ぐポイント

日照権トラブルを未然に防ぐことは、良好な近隣関係を維持し、快適な住環境を確保する上で非常に重要です。以下に、トラブルを防ぐための具体的なポイントを詳しく解説します。

1. 建築計画の段階で、周辺環境を十分に調査し、日影図を作成して影響を予測する

詳細

– 専門家(建築士など)に依頼し、正確な日影図を作成します。

– 冬至日だけでなく、春分・秋分、夏至など複数の時期の日影を確認します。

– 周辺建物の高さや配置を考慮し、立体的な日影シミュレーションを行うことも効果的です。

– 日影規制の対象外の地域でも、自主的に日影図を作成し、影響を把握しましょう。

2. 建築基準法の日影規制や北側斜線制限を遵守する

詳細

– 地域ごとの日影規制や北側斜線制限を確認し、確実に遵守します。

– 規制の適用除外となる場合でも、可能な限り規制に準じた計画を心がけます。

– 自治体によっては、条例で独自の日照基準を設けている場合があるので、確認が必要です。

– 法規制を最低限の基準と捉え、可能であればより厳しい基準で計画することで、トラブルのリスクを減らせます。

3. 建築計画を近隣住民に事前に説明し、理解を得る努力をする

詳細

– 建築確認申請の前に、近隣説明会を開催します。

– 日影図や完成予想図を用いて、わかりやすく丁寧に説明します。

– 質問や懸念事項に対して、誠実に対応し、可能な範囲で計画に反映させます。

– 説明会の内容や合意事項を文書化し、記録を残します。

– 工事中も定期的に情報を共有し、コミュニケーションを維持します。

4. 必要に応じて、建物の高さや配置を調整する

詳細

– 近隣への影響が大きい場合、建物の高さを抑える、または階数を減らすことを検討します。

– セットバック(建物を敷地境界線から後退させること)を行い、日影の影響を軽減します。

– 建物の形状を工夫し、日影の影響を最小限に抑えるデザインを採用します。

– 屋上や上層階の形状を変更し、日影の範囲を調整することも検討します。

5. 専門家(建築士や弁護士)に相談し、適切なアドバイスを受ける

詳細

– 建築士には技術的な観点から、日照問題の解決策を提案してもらいます。

– 弁護士には法的リスクの評価や、近隣との交渉方法についてアドバイスを求めます。

– 必要に応じて、不動産鑑定士に日照阻害による資産価値への影響を評価してもらいます。

– 専門家の意見を総合的に判断し、最適な解決策を見出します。

6. 日照権に配慮した設計(例:セットバック、階段状の設計など)を検討する

詳細

– 建物の上層階をセットバックさせ、階段状の形状にすることで、日影の影響を軽減します。

– 屋上や壁面の緑化を行い、圧迫感を軽減します。

– 反射板や光ダクトなどの技術を活用し、隣地への日照を確保する工夫をします。

– 窓の位置や大きさを工夫し、プライバシーにも配慮した設計を行います。

7. 近隣との良好な関係を維持し、問題が生じた際には誠実に対応する

詳細

– 日常的に近隣とのコミュニケーションを大切にし、良好な関係を構築します。

– 問題が生じた場合は、速やかに対応し、誠意を持って話し合います。

– 必要に応じて、第三者(自治体の相談窓口など)の介入を求め、公平な立場からの助言を得ます。

– 解決策を提案する際は、相手の立場に立って考え、Win-Winの関係を目指します。

8. 日照権以外の環境要因も考慮する

詳細

– 風害や電波障害、景観など、日照以外の環境要因も総合的に検討します。

– 環境アセスメントを実施し、建物が周辺環境に与える影響を多角的に評価します。

– 地域の特性(歴史的景観や自然環境など)に配慮した計画を立てます。

9. 補償や代替措置の検討

詳細

– 日照阻害が避けられない場合、金銭的補償や代替措置を検討します。

– 例えば、日照が阻害される住宅の断熱改修や暖房設備の更新を支援するなどの対策が考えられます。

– ただし、補償については慎重に検討し、前例や法的根拠を確認した上で判断します。

10. 工事中の配慮

詳細

– 工事による一時的な日照阻害(足場や仮設構造物による)にも配慮します。

– 工事スケジュールを近隣と共有し、特に冬季の日照への影響を最小限に抑える工夫をします。

– 工事中の騒音や振動なども含めて、総合的に近隣への配慮を行います。

これらのポイントを押さえることで、日照権トラブルのリスクを大幅に軽減することができます。重要なのは、法令遵守はもちろんのこと、近隣との良好なコミュニケーションを維持し、互いの立場を尊重しながら解決策を見出す姿勢です。トラブルの予防は、結果的に時間とコストの節約につながり、快適な住環境の実現に寄与します。

よくある質問(Q&A)

日照権に関して、多くの人が疑問に思う点について、Q&A形式で詳しく解説します。

Q1: 日照権は法律で定められているのですか?

A1: 日照権は法律で明確に定義されているわけではありません。しかし、判例法理により権利として認められています。建築基準法の日影規制などが間接的に日照権を保護しています。具体的には、以下の点が重要です。

– 憲法第25条(生存権)と第13条(幸福追求権)が日照権の根拠とされています。

– 建築基準法の日影規制や北側斜線制限が、実質的に日照権を保護する役割を果たしています。

– 民法上の不法行為や相隣関係の規定も、日照権保護の根拠となることがあります。

– 裁判所の判断により、日照権の具体的な内容が形成されてきました。

Q2: マンションの上階に引っ越してきた人から日照権を主張されました。どうすればいいですか?

A2: マンションの場合、建設時に日影規制などの法的基準を満たしているはずです。しかし、話し合いで解決することが望ましいでしょう。以下の対応を検討してください。

1. まず、相手の主張をよく聞き、具体的にどのような影響があるのか確認します。

2. マンションの管理組合に相談し、過去の類似事例や対応方針を確認します。

3. 建設時の日影図や法規制の遵守状況を確認し、客観的な事実を把握します。

4. 必要に応じて、専門家(弁護士や建築士)に相談し、法的・技術的な観点からアドバイスを受けます。

5. 話し合いの場を設け、互いの立場を理解し合いながら、可能な対応策を検討します。

6. 完全な解決が難しい場合でも、カーテンの工夫や室内照明の改善など、生活面での対策を提案することも考えられます。

Q3: 隣家の木が大きくなって日当たりが悪くなりました。伐採を要求できますか?

A3: 樹木による日照阻害も日照権の問題となり得ますが、まずは隣家と話し合うことが大切です。以下の点を考慮してください。

1. 隣家に状況を説明し、樹木の剪定や一部伐採の可能性について相談します。

2. 話し合いの際は、日照阻害の具体的な影響(例:室温の低下、電気代の増加など)を説明します。

3. 樹木には環境保全や景観形成の機能もあるため、完全な伐採ではなく、部分的な剪定で解決できないか検討します。

4. 隣家との関係悪化を避けるため、強引な要求は避け、互いの立場を尊重しながら解決策を探ります。

5. 話し合いで解決しない場合は、自治体の相談窓口や専門家(弁護士など)に相談することを検討します。

6. 最終的に法的手段を取る場合、樹木の成長過程や地域の慣習なども考慮されることを理解しておきましょう。

Q4: 日照権の基準となる日照時間はどのくらいですか?

A4: 日照権に関する明確な法的基準はありませんが、一般的に以下のような目安が考えられています。

– 住宅地では、冬至日に4時間以上の日照が望ましいとされています。

– 中高層の建築物に対しては、建築基準法の日影規制により、地域ごとに2〜5時間の日照が確保されるよう規制されています。

– ただし、具体的な基準は地域や状況によって異なり、都市部ではより短い時間でも受忍限度内とされることがあります。

– 裁判例では、日照時間だけでなく、地域性、土地利用の経緯、被害の程度などを総合的に考慮して判断されます。

Q5: 日照権は売買できますか?

A5: 日照権そのものを直接売買することはできません。しかし、日照権に関連して以下のような対応が行われることがあります。

1. 日影補償:建築主が隣地所有者に対して、日照阻害の代償として金銭を支払うことがあります。

2. 日影権の設定:将来的な建築の制限を約束する代わりに対価を受け取る契約を結ぶことがあります。

3. 地役権の設定:特定の土地の利用を制限する権利(例:建物の高さ制限)を設定し、対価を支払うことがあります。

4. これらの取り決めは、当事者間の合意に基づくものであり、法的な拘束力を持たせるためには、適切な書類と登録が必要です。

Q6: 太陽光パネルへの日照阻害も日照権の対象になりますか?

A6: 太陽光パネルへの日照阻害も、日照権の問題として扱われる可能性があります。ただし、以下の点に注意が必要です。

1. 太陽光パネル専用の明確な法的基準はまだ確立されていません。

2. 従来の日照権の考え方を応用しつつ、個別のケースごとに判断されることになります。

3. 発電効率の低下による経済的損失が主な争点となる可能性があります。

4. 裁判例はまだ少ないですが、今後増加する可能性があります。

5. 太陽光パネルの設置時には、将来の周辺環境の変化も考慮して計画することが重要です。

6. トラブルを防ぐためには、設置前に近隣との協議や、自治体への相談を行うことが望ましいでしょう。

これらの質問と回答は、日照権に関する一般的な理解を深めるのに役立ちます。ただし、具体的なケースでは状況が異なる場合があるため、必要に応じて専門家に相談することをおすすめします。

まとめ

日照権は、快適な生活を送る上で重要な権利ですが、法律で明確に定義されているわけではありません。しかし、建築基準法の日影規制や北側斜線制限などの規制により、間接的に保護されています。日照権トラブルを防ぐためには、建築計画の段階から周辺環境に配慮し、近隣住民とのコミュニケーションを大切にすることが重要です。また、トラブルが発生した場合は、専門家や行政の相談窓口を活用し、適切な対応を心がけましょう。日照権への理解を深め、互いの権利を尊重し合うことで、より良い住環境を築くことができるはずです。

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記事監修者

1級ファイナンシャル・プランニング技能士 / 渡辺 知光

大学卒業後、積水化学工業に入社し住宅「セキスイハイム」を販売。3年8カ月千葉県内で営業に従事し、営業表彰を6期連続受賞。
途中、母の急死に直面し、自分の将来について悩み始める。結果、大学のゼミで学んだ「保険」事業に実際に携わりたいと思いFP資格を取得して日本生命に転職。4年間営業に従事したが、顧客に対して提供出来る商品がなく退職を決意。FP兼保険代理店を開業する。

収入も顧客もゼロからのスタート。しかも独立直前に結婚し住宅購入した為、返済不安に陥り貯蓄が日々減っていく恐怖を覚える。

人生で初めて家計の見直しを行い、根本的な改善により失敗と不安を減らすコツを発見。自分の経験を生かしお客様が同じ道を歩まないよう伝えるべく「マイホーム検討者向けFP」として活動中。

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    :有限会社ティーエムライフデザイン総合研究所

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    :渡辺知光

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    所在地

    :〒104-0045 東京都中央区築地2-15-15 セントラル東銀座1002

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