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新耐震基準のポイントや旧耐震基準との違い、最新の耐震対策まで徹底解説

家づくりの基本

2024/08/16

2024/08/16

記事監修者

1級ファイナンシャル・プランニング技能士 / 渡辺 知光

新耐震基準のポイントや旧耐震基準との違い、最新の耐震対策まで徹底解説

地震大国日本では、住宅の耐震性能が非常に重要です。1981年に導入された新耐震基準は、それまでの旧耐震基準と比べて大幅に強化されました。この記事では、新耐震基準の概要や旧耐震基準との違い、さらに現行の耐震基準について詳しく解説します。また、より安全な家づくりのためのポイントもご紹介します。

耐震基準とは? 耐震等級とは違うの?

耐震基準と耐震等級は、どちらも建物の地震に対する強さを示す指標ですが、その目的や適用される範囲が異なります。それぞれの特徴を詳しく見ていきましょう。

耐震基準の詳細

耐震基準は、建築基準法によって定められた、すべての建築物が満たすべき最低限の基準です。この基準の主な目的は、大地震が発生した際に建物の倒壊を防ぎ、人命を守ることです。

耐震基準では、以下のような要求が定められています。

1. 中規模の地震(震度5強程度)に対しては、建物に損傷が生じないこと

2. 大規模の地震(震度6強〜7程度)に対しては、建物に多少の損傷が生じても倒壊しないこと

3. 地震力に対する必要な強度を確保するための構造計算方法

4. 耐力壁の配置や接合部の強度に関する規定

これらの基準を満たすことで、最低限の安全性が確保されると考えられています。

耐震等級の詳細

一方、耐震等級は住宅性能表示制度の一部として定められた、より高度な耐震性能を評価するための指標です。耐震等級は1〜3までの3段階があり、数字が大きいほど耐震性能が高いことを示します。

各等級の概要は以下の通りです。

・耐震等級1:建築基準法で定められた耐震基準の1.0倍の強度

・耐震等級2:建築基準法で定められた耐震基準の1.25倍の強度

・耐震等級3:建築基準法で定められた耐震基準の1.5倍の強度

耐震等級は、建物の構造躯体の倒壊等防止と損傷防止の両面から評価されます。つまり、大地震に対してどれだけ倒壊しにくいか、そして中小規模の地震に対してどれだけ損傷しにくいかを総合的に判断します。

耐震基準と耐震等級の違い

耐震基準と耐震等級の主な違いは以下の通りです。

1. 適用範囲:耐震基準はすべての建築物に適用されますが、耐震等級は主に住宅に適用されます。

2. 義務か任意か:耐震基準を満たすことは法律で義務付けられていますが、耐震等級の取得は任意です。

3. 性能の程度:耐震基準は最低限の安全性を確保するためのものですが、耐震等級はそれ以上の高い耐震性能を評価します。

4. 評価方法:耐震基準は主に構造計算によって判断されますが、耐震等級は構造計算に加えて、実際の施工状況なども含めて総合的に評価されます。

5. 表示方法:耐震基準は満たすか満たさないかの二択ですが、耐震等級は1〜3の段階で表示されます。

耐震基準を満たすことは建物の安全性を確保する上で最低限必要なことですが、より安全な住まいを求める場合は、耐震等級2以上を目指すことがおすすめです。ただし、耐震等級が高いほど建築コストも上がる傾向にあるため、予算と相談しながら最適な選択をすることが大切です。

新耐震基準のポイント

1981年に導入された新耐震基準は、それまでの旧耐震基準と比べて大幅に強化されました。新耐震基準の主なポイントを詳しく見ていきましょう。

想定する地震の規模の拡大

新耐震基準では、より大きな地震に耐えられるよう設計されています。具体的には、震度6強から7程度の大地震(地表面で350〜500ガル程度の揺れ)でも倒壊しないことを目標としています。これは旧耐震基準が想定していた震度5程度と比べて、大幅に強化されたポイントです。

2段階の地震力に対する設計

新耐震基準では、以下の2段階の地震力に対する設計が求められるようになりました。

・中程度の地震(震度5強程度):建物に損傷が生じないこと

・大規模の地震(震度6強〜7程度):建物に多少の損傷が生じても倒壊しないこと

これにより、日常的に発生する可能性がある地震から、まれに発生する大地震まで、幅広い規模の地震に対応できるようになりました。

構造計算方法の変更

新耐震基準では、より精密な構造計算方法が導入されました。主な変更点は以下の通りです。

・静的設計法に加えて、動的設計法も導入された

・層間変形角(各階の変形量)の制限が設けられた

・偏心率(建物の重心と剛心のずれ)の制限が設けられた

これらの変更により、地震時の建物の挙動をより正確に予測し、適切な設計ができるようになりました。

耐力壁の配置バランスの重視

新耐震基準では、建物の四隅にバランスよく耐力壁を配置することが求められるようになりました。これにより、地震の力をより均等に受け止め、建物全体の変形を抑えることができるようになりました。

基礎構造の強化

新耐震基準では、建物の基礎構造についても強化が図られました。具体的には、以下のような変更が加えられました。

・鉄筋コンクリート造の基礎が標準となった

・地盤の状況に応じて、適切な基礎形式を選択することが求められるようになった

・基礎と上部構造の接合部の強化が図られた

接合部の強化

新耐震基準では、建物の各部材(柱、梁、壁など)の接合部の強化が図られました。具体的には、以下のような変更が加えられました。

・金物による接合が標準となった

・接合部に使用する金物の種類や本数が細かく規定された

・接合部の設計方法が詳細化された

品質管理の強化

新耐震基準では、設計段階だけでなく、施工段階での品質管理も強化されました。具体的には、以下のような変更が加えられました。

・中間検査制度の導入

・構造計算書の第三者チェックの義務化(一定規模以上の建築物)

・施工管理体制の強化

これらの変更により、設計通りの耐震性能が確実に確保されるようになりました。

新耐震基準の導入により、日本の建築物の耐震性能は大きく向上しました。しかし、これはあくまでも最低限の基準であり、より高い安全性を求める場合は、さらなる対策を講じることが重要です。耐震等級の取得や、より厳しい自主基準の採用など、各自のニーズに応じた対策を検討することをおすすめします。

耐震性に不安のない家を建てるためにできること

耐震性の高い家を建てるためには、法律で定められた基準を満たすだけでなく、さらに一歩進んだ対策を講じることが重要です。以下に、耐震性を高めるためのポイントを詳しく解説します。

地震に強い土地を選ぶ

耐震性の高い家づくりは、まず土地選びから始まります。以下のポイントに注意しましょう。

1. 地盤の固さ:岩盤や砂利層など、硬い地盤を選ぶ

2. 液状化リスク:液状化の可能性が低い場所を選ぶ

3. 地形:崖や急斜面に近い場所は避ける

4. 過去の被害状況:過去の地震での被害が少ない地域を選ぶ

もし、やむを得ず地盤の良くない土地を選ぶ場合は、地盤改良を行うことも検討しましょう。地盤改良の方法には、杭打ち、柱状改良、表層改良などがあります。

建物の重量を軽くする

建物が軽いほど、地震時に受ける力は小さくなります。重量を軽減するための方法として、以下のようなものがあります。

1. 軽量な屋根材を使用する(例:軽量瓦、金属屋根)

2. 外壁に軽量サイディングを使用する

3. 内装材に軽量な素材を選ぶ

4. 2階の床に軽量鉄骨を使用する

5. 不要な間仕切り壁を減らす

ただし、重量を軽くしすぎると風に対する抵抗力が弱くなる可能性があるため、バランスを考慮することが重要です。

耐力壁を増やしたり接合部を強化したりする

建物の強度を高めるための具体的な方法として、以下のようなものがあります。

1. 耐力壁の量を増やす:法律で定められた最低限の量よりも多くの耐力壁を設置する

2. 耐力壁をバランスよく配置する:建物の四隅にバランスよく耐力壁を配置する

3. 接合部の金物を増やす:柱と土台、柱と梁などの接合部に使用する金物の数を増やす

4. 高強度の接合金物を使用する:通常の金物よりも強度の高い特殊な金物を使用する

5. 構造用合板を使用する:壁や床に構造用合板を使用し、剛性を高める

これらの対策を講じることで、建物全体の強度と粘り強さを向上させることができます。

2階リビングを検討する

2階リビングには、以下のような耐震上のメリットがあります。

1. 1階の壁量を増やせる:1階にリビングを設けるよりも多くの壁を設置できる

2. 重心が下がる:重い家具や設備を1階に集中させることができる

3. 万が一の際の避難がしやすい:2階から屋外に避難する選択肢が増える

ただし、2階の方が揺れは大きくなるため、家具の固定などの対策は忘れずに行いましょう。

検査の回数を増やす

法定の検査に加えて、自主的に検査回数を増やすことで、より確実に品質を確保することができます。

1. 地盤調査:建築前に詳細な地盤調査を行う

2. 基礎工事の検査:コンクリート打設前後に検査を行う

3. 構造躯体の検査:各階の躯体完成時に検査を行う

4. 完成前の総合検査:仕上げ前に構造全体の検査を行う

5. 定期的な点検:完成後も定期的に建物の状態をチェックする

その他の対策

1. 制震装置や免震装置の導入:大規模な地震の揺れを軽減する装置を導入する

2. 耐震等級3を目指す:住宅性能表示制度における最高ランクの耐震性能を目指す

3. 長期優良住宅の認定を受ける:高い耐震性能を含む総合的な品質基準を満たす

4. 耐震シミュレーションの実施:コンピューター上で地震時の建物の挙動をシミュレーションする

5. 家具の固定や配置の工夫:家具の転倒防止や配置を工夫し、室内の安全性を高める

これらの対策を組み合わせることで、より耐震性の高い家を実現することができます。ただし、すべての対策を講じると建築コストが大幅に上昇する可能性があるため、予算と相談しながら優先順位をつけて対策を選択することが重要です。また、これらの対策を実施する際は、必ず専門家に相談し、適切なアドバイスを受けながら進めていくことをおすすめします。

よくある質問(Q&A)

新耐震基準や耐震性能に関して、多くの方が疑問を抱えています。ここでは、よくある質問とその回答を詳しく解説します。

Q1: 新耐震基準以前の建物は危険なのでしょうか?

A1: 必ずしも危険というわけではありませんが、耐震性能が不十分である可能性が高いです。1981年以前の建物は、以下の理由から注意が必要です。

・想定する地震の規模が小さい

・構造計算の方法が古い

・使用されている部材や接合方法が現在の基準を満たしていない可能性がある

ただし、適切に維持管理されている建物や、耐震改修を行った建物であれば、十分な耐震性能を有している可能性もあります。心配な場合は、専門家による耐震診断を受けることをおすすめします。

Q2: 新耐震基準を満たしていれば、絶対に安全なのでしょうか?

A2: 新耐震基準は最低限の安全性を確保するための基準であり、絶対的な安全を保証するものではありません。以下の点に注意が必要です。

・想定を超える巨大地震が発生する可能性がある

・建物の形状や地盤条件によっては、基準を満たしていても十分でない場合がある

・経年劣化により耐震性能が低下している可能性がある

より高い安全性を求める場合は、耐震等級2以上を目指すことや、制震・免震構造の採用を検討することをおすすめします。

Q3: リフォームの際に耐震性能を上げることはできますか?

A3: はい、可能です。リフォームの際に耐震補強を行うことで、耐震性能を向上させることができます。主な方法として以下があります。

・耐力壁の増設:筋交いや構造用合板を使用して壁を補強する

・基礎の補強:鉄筋コンクリートで基礎を巻き立てる

・屋根の軽量化:重い瓦屋根を軽量な金属屋根に変更する

・接合部の補強:金物を使用して柱と梁の接合部を強化する

・制震装置の設置:建物に制震ダンパーなどを取り付ける

ただし、建物の状況によって最適な補強方法が異なるため、専門家に相談しながら計画を立てることが重要です。

Q4: 耐震等級はどのように決まるのでしょうか?

A4: 耐震等級は、以下の要素を総合的に評価して決定されます。

・構造躯体の倒壊等防止:大地震に対する耐力

・構造躯体の損傷防止:中小地震に対する損傷の程度

・基礎の構造方法

・床組等の仕様

具体的には、構造計算による数値的な評価と、現場での施工状況の確認を通じて総合的に判断されます。等級の取得には、指定確認検査機関による審査が必要です。

Q5: 制震構造と免震構造の違いは何ですか?

A5: 制震構造と免震構造は、どちらも建物の揺れを軽減する技術ですが、その方法が異なります。

制震構造

・建物内部に制震装置(ダンパーなど)を設置

・地震エネルギーを吸収し、建物の揺れを抑制

・比較的低コストで導入可能

免震構造

・建物と基礎の間に免震装置(積層ゴムなど)を設置

・地面の揺れが建物に伝わるのを遮断

・大地震時により高い効果が期待できる

・導入コストが比較的高い

どちらを選択するかは、建物の規模や用途、予算などを考慮して決定します。

Q6: 木造と鉄筋コンクリート造、どちらが耐震性に優れていますか?

A6: 一概にどちらが優れているとは言えません。それぞれに特徴があります。

木造

・軽量で粘り強い

・地震の揺れを吸収しやすい

・補修や改修が比較的容易

鉄筋コンクリート造

・高い強度と剛性を持つ

・火災に強い

・経年劣化が少ない

どちらの構造でも、適切な設計と施工が行われていれば十分な耐震性能を確保できます。選択する際は、建築地の条件や個人の好みなども考慮しましょう。

これらの質問と回答を参考に、耐震性能について理解を深めていただければ幸いです。ただし、個々の建物の状況は千差万別です。具体的な対策を検討する際は、必ず専門家に相談することをおすすめします。

まとめ

新耐震基準は、1981年の導入以来、日本の建物の耐震性能を大きく向上させてきました。さらに2000年には現行の耐震基準が導入され、より細かな規定が加わりました。しかし、これらの基準はあくまで最低限のものです。本当に安全な家づくりのためには、基準を上回る性能を目指すことが大切です。地盤の選択から構造の強化、さらには生活スタイルに合わせた間取りの工夫まで、総合的に考えることで、より安心できる住まいを実現できるでしょう。家づくりの際には、これらの点を十分に検討し、専門家とよく相談しながら進めていくことをおすすめします。

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1級ファイナンシャル・プランニング技能士 / 渡辺 知光

大学卒業後、積水化学工業に入社し住宅「セキスイハイム」を販売。3年8カ月千葉県内で営業に従事し、営業表彰を6期連続受賞。
途中、母の急死に直面し、自分の将来について悩み始める。結果、大学のゼミで学んだ「保険」事業に実際に携わりたいと思いFP資格を取得して日本生命に転職。4年間営業に従事したが、顧客に対して提供出来る商品がなく退職を決意。FP兼保険代理店を開業する。

収入も顧客もゼロからのスタート。しかも独立直前に結婚し住宅購入した為、返済不安に陥り貯蓄が日々減っていく恐怖を覚える。

人生で初めて家計の見直しを行い、根本的な改善により失敗と不安を減らすコツを発見。自分の経験を生かしお客様が同じ道を歩まないよう伝えるべく「マイホーム検討者向けFP」として活動中。

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    :有限会社ティーエムライフデザイン総合研究所

  • 代表者

    :渡辺知光

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