容積率の緩和条件や緩和措置の適用箇所について徹底解説
家づくりの基本
2024/08/20
2024/08/20
マイホームの建築や不動産投資を考える際、避けては通れないのが建築基準法で定められた容積率の規制です。しかし、一定の条件を満たせば容積率が緩和される特例もあります。今回は、容積率の基本的な概念から緩和措置まで、わかりやすく解説していきます。前面道路の幅員など、知っておきたいポイントもご紹介しますので、ぜひ参考にしてください。
目次
容積率とは
容積率とは、敷地面積に対する延床面積の割合
容積率は、敷地面積に対する建物の延べ床面積の割合を示す数値です。例えば、100㎡の敷地に容積率200%が適用される場合、最大で200㎡の延べ床面積の建物を建てることができます。この規制は、都市の秩序ある発展と良好な住環境の維持を目的としています。
容積率の規定は用途地域ごとに決まる
指定容積率
容積率は、その土地が属する用途地域ごとに指定されています。例えば、第一種低層住居専用地域では80%や100%、商業地域では400%や500%といった具合です。これを指定容積率と呼びます。
前面道路の幅員によって容積率の上限が決まる
しかし、実際に適用される容積率は、指定容積率だけでなく、前面道路の幅員によっても制限されます。具体的には、前面道路の幅員に0.4を乗じた数値が容積率の上限となります。例えば、前面道路が6mの場合、6×0.4=2.4となり、240%が上限となります。
容積率の規定は用途地域ごとに決まる
容積率の規定は、都市計画法に基づいて定められた用途地域ごとに決まります。これは、それぞれの地域の特性や目的に応じて、適切な建物の密度を維持するためです。ここでは、用途地域ごとの容積率について詳しく見ていきましょう。
住居系用途地域の容積率
住居系の用途地域では、良好な住環境を維持するために比較的低い容積率が設定されています。
・第一種低層住居専用地域:80%~100%
・第二種低層住居専用地域:100%~200%
・第一種中高層住居専用地域:100%~300%
・第二種中高層住居専用地域:200%~400%
・第一種住居地域:200%~400%
・第二種住居地域:200%~400%
・準住居地域:200%~400%
商業系用途地域の容積率
商業系の用途地域では、経済活動の活性化を図るため、高い容積率が設定されています。
・近隣商業地域:200%~400%
・商業地域:400%~1300%
工業系用途地域の容積率
工業系の用途地域では、生産活動に必要な建物規模を確保しつつ、周辺環境との調和も考慮した容積率が設定されています。
・準工業地域:200%~400%
・工業地域:200%~400%
・工業専用地域:200%~400%
指定容積率と実際の適用容積率
ただし、これらの数値は「指定容積率」と呼ばれるもので、実際に適用される容積率は、前面道路の幅員によってさらに制限される場合があります。例えば、前面道路の幅員が12m未満の場合、幅員(m)×0.4が適用容積率の上限となります。
地方自治体による独自の規制
また、各地方自治体が独自に条例を定め、より厳しい容積率制限を設けている場合もあります。これは、その地域の特性や課題に応じて、きめ細かな都市計画を行うためです。
特別用途地区での容積率
さらに、特別用途地区が指定されている場合は、その目的に応じて容積率が緩和または強化されることがあります。例えば、文教地区では教育施設の建設を促進するために容積率が緩和されたり、住宅地区では良好な居住環境を保つために容積率が強化されたりする場合があります。
このように、容積率の規定は用途地域ごとに細かく設定されており、それぞれの地域の特性や目的に合わせた都市計画を可能にしています。建築計画を立てる際は、該当地域の用途地域と指定容積率を確認し、さらに前面道路の幅員や地方自治体の独自規制なども考慮に入れる必要があります。専門家や行政に相談しながら、適切な建築計画を立てることが重要です。
容積率緩和の特例1 特定道路から一定範囲内の土地
容積率緩和の特例1は、特定道路から一定範囲内にある土地に適用される緩和措置です。この特例は、都市の効率的な土地利用を促進し、良好な市街地環境の形成を図ることを目的としています。詳細を見ていきましょう。
特例の適用条件
この特例が適用されるのは、以下の条件を満たす土地です。
1. 前面道路の幅員が6m以上12m未満であること
2. 特定道路(幅員12m以上の道路)から70m以内にあること
容積率の計算方法
この特例が適用される場合、容積率は次の2つの計算方法のうち、大きい方の数値が採用されます。
1. 前面道路の幅員(m)× 0.6
2. 特定道路の幅員(m)× 0.4
ただし、これらの数値が指定容積率を超える場合は、指定容積率が上限となります。
具体例で理解する
例えば、次のような条件の土地があるとします。
・指定容積率:300%
・前面道路の幅員:8m
・特定道路の幅員:16m
・特定道路までの距離:50m
この場合、容積率は以下のように計算されます。
1. 前面道路による計算:8m × 0.6 = 480%
2. 特定道路による計算:16m × 0.4 = 640%
この場合、640%が大きい数値となりますが、指定容積率300%を超えているため、実際の適用容積率は300%となります。
特例の意義
この特例には、以下のような意義があります。
1. 幹線道路沿いの土地利用の効率化
2. 都市の高度利用の促進
3. 道路整備と連動した市街地開発の誘導
留意点
この特例を適用する際は、以下の点に注意が必要です。
1. 特定道路の定義は自治体によって異なる場合がある
2. 70mの距離は、敷地の一部でも含まれていれば適用可能
3. 角地の場合、有利な方の道路幅員を選択できる
他の緩和措置との併用
この特例は、他の容積率緩和措置(例:総合設計制度、都市再生特別地区など)と併用することも可能です。ただし、併用する場合は複雑な計算が必要となるため、専門家に相談することをおすすめします。
容積率緩和の特例1は、都市計画の観点から重要な役割を果たしています。特定道路周辺の土地の有効活用を促進し、都市の発展に寄与する一方で、良好な市街地環境を維持するバランスを取っています。この特例を活用することで、より効率的な建築計画を立てることが可能になりますが、適用にあたっては地域の条例や規制を十分に確認し、必要に応じて行政や専門家に相談することが重要です。
容積率の緩和の特例2 駐車場や地下室
容積率の緩和の特例2は、駐車場や地下室などの特定の用途に使用される床面積を、容積率の計算から一部控除することで実質的な容積率を緩和する措置です。この特例により、より効率的な土地利用が可能になり、建物の機能性を高めることができます。詳しく見ていきましょう。
駐車場に関する緩和措置
駐車場に関する緩和措置は、自動車の利用を促進しつつ、十分な駐車スペースを確保することを目的としています。
自走式駐車場の場合
自走式駐車場(車で直接駐車する形式の駐車場)の床面積については、その1/5を容積率の計算から控除することができます。例えば、100㎡の自走式駐車場がある場合、20㎡分を容積率の計算から除外できます。
機械式駐車場の場合
機械式駐車場の場合、駐車スペース(車室)の床面積は全て容積率の計算から除外されます。ただし、管理室やエレベーターホールなどの共用部分は除外されません。
地下室に関する緩和措置
地下室に関する緩和措置は、地下空間の有効活用を促進し、地上部分の容積率に余裕を持たせることを目的としています。
地下室の床面積控除
地下室の床面積については、その2/3を容積率の計算から控除することができます。例えば、300㎡の地下室がある場合、200㎡分を容積率の計算から除外できます。
地下室の定義
ここでいう地下室とは、床が地盤面下にあり、天井が地盤面上1mを超えない部分を指します。一部でも1mを超える場合は、その部分は地上階として扱われます。
その他の容積率に算入されない部分
駐車場や地下室以外にも、以下のような部分は容積率の計算に算入されません。
・ピロティ(建物の1階部分の柱だけで囲まれた空間)
・高さ1.4m未満のロフト ・吹き抜け部分 ・バルコニーや軒下など、壁や柱のない部分
・エレベーターの昇降路の部分 ・階段室(共同住宅の場合、一定の条件下で)
・防災備蓄倉庫(一定の条件下で)
緩和措置の活用例
これらの緩和措置を活用することで、例えば以下のような建築計画が可能になります。
1. 十分な駐車スペースを確保しつつ、地上階の居住空間を広く取る
2. 地下室を設けることで、地上階の容積に余裕を持たせる
3. 機械式駐車場を採用し、限られた敷地で多くの駐車台数を確保する
留意点
これらの緩和措置を適用する際は、以下の点に注意が必要です。
1. 地域や自治体によって、緩和措置の適用条件が異なる場合がある
2. 建築基準法以外の法令(例:消防法)による制限がある場合がある
3. 緩和措置の適用には、建築確認申請時に明確な記載が必要
容積率の緩和の特例2は、建物の機能性と快適性を高めながら、効率的な土地利用を可能にする重要な措置です。これらの特例を上手に活用することで、限られた敷地でも十分な駐車スペースや収納スペースを確保しつつ、快適な居住空間や業務空間を創出することができます。ただし、適用にあたっては複雑な計算や手続きが必要となる場合もあるため、建築士や行政の建築指導課などの専門家に相談しながら進めることが重要です。
容積率の緩和措置の適用箇所と延床面積に含まれないもの
容積率の計算において、一部の建築物の部分は延べ床面積に算入されないか、または一定の割合で控除されます。これらの緩和措置は、建物の機能性を向上させつつ、効率的な土地利用を促進することを目的としています。ここでは、具体的にどのような部分が緩和措置の対象となるのか、詳しく見ていきましょう。
延べ床面積に算入されない部分
以下の部分は、原則として延べ床面積に算入されません。
1. ピロティ
建物の1階部分で柱だけで囲まれた、壁のない空間をピロティと呼びます。このスペースは通常、駐車場や歩行者空間として利用されます。ピロティは建築物の床面積には含まれますが、容積率の計算上は延べ床面積に算入されません。
2. バルコニー
バルコニーは、建築基準法施行令で定められた範囲内(奥行2m以下で、かつ床面積の合計が当該建築物の延べ面積の1/10以内)であれば、延べ床面積に算入されません。
3. 軒下・庇
建物の外壁から突き出した屋根の部分(軒)や、雨よけなどの目的で設置される庇は、通常延べ床面積に算入されません。
4. 吹き抜け
階段室やエントランスホールなどに設けられる吹き抜け部分は、延べ床面積に算入されません。これにより、開放的で明るい空間を設計しやすくなります。
5. 高さ1.4m未満のロフト
天井高が1.4m未満のロフトスペースは、延べ床面積に算入されません。これにより、収納スペースなどを効率的に確保することができます。
一部控除される部分
以下の部分は、一定の割合で延べ床面積から控除されます。
1. 自走式駐車場
自走式の駐車場や駐輪場の床面積は、その1/5を延べ床面積から控除することができます。これにより、十分な駐車スペースを確保しつつ、建物の他の部分のスペースを有効活用できます。
2. 地下室
地下室の床面積は、その2/3を延べ床面積から控除することができます。これは、地下空間の有効活用を促進し、地上部分の容積率に余裕を持たせるための措置です。
その他の特殊な例
1. 共同住宅の共用廊下・階段
共同住宅の共用廊下や階段室は、一定の条件を満たせば延べ床面積に算入されない場合があります。これは、良質な共同住宅の供給を促進するための措置です。
2. 防災備蓄倉庫
災害時の備蓄品を保管するための倉庫(防災備蓄倉庫)は、一定の条件下で延べ床面積に算入されません。これは、建物の防災機能の向上を図るための措置です。
3. 自動車車庫等に通ずる階段
自動車車庫や自転車駐車場に通ずる階段の部分は、その用途に供する部分の床面積の合計の1/4を限度として、延べ床面積に算入しないことができます。
留意点
これらの緩和措置を適用する際は、以下の点に注意が必要です。
1. 地域や自治体によって、緩和措置の適用条件が異なる場合があります。
2. 緩和措置の適用には、建築確認申請時に明確な記載が必要です。
3. 建築基準法以外の法令(例:消防法)による制限がある場合があります。
4. 一部の緩和措置は、建物の用途や規模によって適用できない場合があります。
これらの容積率緩和措置を適切に活用することで、限られた敷地でも機能的で快適な建物を設計することが可能になります。ただし、適用条件や計算方法が複雑な場合もあるため、具体的な計画を立てる際は、建築士や行政の建築指導課などの専門家に相談することをおすすめします。緩和措置を上手に活用することで、より効率的で魅力的な建築計画を実現できるでしょう。
よくある質問(Q&A)
容積率に関しては、多くの方々が疑問や質問を持っています。ここでは、よくある質問とその回答をQ&A形式で詳しく解説していきます。
Q1: 容積率を超えて建築することはできますか?
A1: 原則として、法定の容積率を超えて建築することはできません。しかし、以下のような特別な制度や条件下では、容積率の緩和や割増が認められる場合があります。
1. 総合設計制度:公開空地を設けるなど、良好な市街地環境の形成に寄与する建築計画に対して容積率の割増が認められます。
2. 特定街区制度:都市の機能更新や優れた都市空間の形成を図るため、一定の区域内で容積率制限などの緩和が認められます。
3. 都市再生特別地区:都市再生緊急整備地域内において、都市の再生に貢献し、土地の合理的かつ健全な高度利用を図る建築計画に対して容積率の緩和が認められます。
4. 特定用途誘導地区:特定の用途の建築物の誘導を図るため、容積率制限の緩和が認められる場合があります。
これらの制度を活用する場合、通常は行政との協議や審査が必要となります。また、周辺環境への影響や公共貢献度などが評価されます。
Q2: 容積率と建蔽率の違いは何ですか?
A2: 容積率と建蔽率は、どちらも建築物の規模を制限する指標ですが、以下のように異なる側面を規制しています。
容積率
・建物の延べ床面積の敷地面積に対する割合を示します。
・建物の総量(ボリューム)を規制します。
・垂直方向の制限に関わります。
建蔽率
・建築面積(建物の水平投影面積)の敷地面積に対する割合を示します。
・敷地に対する建物の占有度を規制します。
・水平方向の制限に関わります。
例えば、敷地面積100㎡、建蔽率60%、容積率200%の場合、
・1階の最大床面積は60㎡(100㎡×60%)
・延べ床面積の最大は200㎡(100㎡×200%) となり、3階建て以上の建物が可能となります。
Q3: 容積率の緩和を受けるには、どうすればいいですか?
A3: 容積率の緩和を受けるには、以下のような手順が一般的です。
1. 対象となる緩和制度の確認: 自治体の都市計画課や建築指導課に問い合わせ、該当地域で適用可能な緩和制度を確認します。
2. 計画の策定: 緩和制度の要件を満たす建築計画を策定します。この際、建築士や不動産の専門家のアドバイスを受けることが有効です。
3. 事前相談: 計画の概要を行政に説明し、実現可能性や必要な手続きについて相談します。
4. 申請書類の作成と提出: 必要な図面や計算書などの書類を作成し、申請を行います。
5. 審査と許可: 行政による審査を経て、要件を満たしていれば緩和が認められます。
6. 建築確認申請: 緩和が認められた内容で建築確認申請を行います。
緩和制度によっては、公聴会の開催や都市計画審議会の審議が必要な場合もあります。また、周辺住民への説明や同意を求められることもあるため、時間的余裕を持って進めることが重要です。
Q4: 容積率の計算方法を教えてください。
A4: 容積率の基本的な計算方法は以下の通りです。
容積率(%)= (延べ床面積 ÷ 敷地面積) × 100
ただし、実際の計算では以下の点に注意が必要です。
1. 延べ床面積の算定: バルコニーや地下室など、一部または全部が延べ床面積に算入されない部分があります。
2. 前面道路幅員による制限: 前面道路の幅員が12m未満の場合、幅員×0.4の数値が容積率の上限となる場合があります。
3. 角地等の緩和: 角地や二方道路に接する敷地では、容積率が緩和される場合があります。
4. 用途地域による制限: 敷地が複数の用途地域にまたがる場合、面積按分で計算します。
具体的な計算方法は複雑で、建築計画の内容や地域の規制によって異なる場合があるため、専門家や行政に相談することをおすすめします。
Q5: 容積率を最大限に活用するコツはありますか?
A5: 容積率を最大限に活用するためのコツとしては、以下のようなものがあります。
1. 緩和制度の活用: 総合設計制度や特定街区制度など、各種の緩和制度を検討します。
2. 地下室や駐車場の効果的な配置: 地下室や駐車場は容積率の計算上有利に扱われるため、これらを効果的に配置します。
3. バルコニーや吹き抜けの活用: 延べ床面積に算入されないバルコニーや吹き抜けを上手に設計に取り入れます。
4. 前面道路の幅員の確認: 前面道路の幅員が容積率に影響する場合があるため、有利な側の道路を前面道路として設定します。
5. 角地等の特例の活用: 角地や二方道路に接する敷地では、容積率の割増が受けられる場合があります。
6. 用途別の床面積配分の最適化: 用途によって容積率の計算方法が異なる場合があるため、最も有利な配分を検討します。
ただし、容積率を最大限に活用することが必ずしも最適な建築計画につながるとは限りません。周辺環境との調和や建物の機能性、経済性なども考慮しながら、総合的に判断することが重要です。
まとめ
容積率は、建物の規模を決める重要な要素ですが、様々な緩和措置や特例が存在します。前面道路の幅員や特定道路からの距離、駐車場や地下室の設置など、条件によっては思いのほか大きな建物を建てられる可能性があります。ただし、これらの規定は複雑で、地域によっても異なる場合があるため、具体的な計画を立てる際は、必ず専門家や行政に相談することをおすすめします。土地の特性を理解し、緩和措置を上手に活用することで、より快適で効率的な建物設計が可能になるでしょう。
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