建設住宅性能評価書の概要や新築・中古住宅別の検査項目、費用を解説
家づくりの基本
2024/11/29
2024/11/29
住宅の性能を客観的に評価する建設住宅性能評価書。マイホームを建てる際、このような評価書の取得を検討される方も多いのではないでしょうか。本記事では、建設住宅性能評価書の概要から取得のメリット、検査項目、費用についてまで詳しく解説していきます。
住宅性能評価書とは
住宅性能評価書は、2000年に施行された住宅の品質確保の促進等に関する法律(品確法)に基づき、第三者機関である指定住宅性能評価機関が住宅の性能を客観的に評価し、証明する公的な書類です。
住宅性能評価書の種類
住宅性能評価書には、大きく分けて「設計住宅性能評価書」と「建設住宅性能評価書」の2種類があります。設計住宅性能評価書は設計図書の段階で評価を行い、建設住宅性能評価書は実際の建物の施工段階で評価を行います。
設計住宅性能評価書とは
設計住宅性能評価書は、建築前の設計図書の審査により発行される評価書です。建築基準法の構造計算適合性判定と同時に申請することで、手続きの簡素化や費用の節約も可能です。
建設住宅性能評価書とは
建設住宅性能評価書は、実際の施工段階で検査を行い、設計図書通りに建設されているかを確認する評価書です。基礎工事、躯体工事、完了時の最低3回の現場検査が必要となります。
住宅性能評価書の役割
住宅性能評価書は、住宅の基本的な性能を客観的な基準で評価することで、住宅の品質を見える化する役割を果たします。これにより、建築会社と施主の間で住宅の性能について共通の認識を持つことができ、トラブルの防止にもつながります。
評価機関について
住宅性能評価を行うことができるのは、国土交通大臣の指定を受けた第三者機関である指定住宅性能評価機関のみです。全国に複数の評価機関があり、建築主は自由に評価機関を選ぶことができます。
性能評価書の有効期間
住宅性能評価書には法律上の有効期限は定められていません。ただし、建物は経年により性能が変化することから、中古住宅として売却する際などには、現況の性能評価を受けることが推奨されます。
住宅性能評価と住宅性能表示制度
住宅性能評価は、住宅性能表示制度の一環として実施されています。この制度により、住宅の性能が共通の物差しで評価され、住宅の品質が比較しやすくなっています。表示される性能については、必要な項目のみを選んで評価を受けることも可能です。
性能評価書の信頼性
住宅性能評価書は、国が認めた第三者機関による客観的な評価であり、高い信頼性を有しています。また、評価書に記載された性能に関して紛争が生じた場合は、指定住宅紛争処理機関による迅速な処理を受けることができます。
性能評価書と保証
住宅性能評価書を取得することで、住宅の品質について客観的な保証が得られます。特に構造耐力や防火性能などの重要な性能については、評価書があることで将来的なトラブルの際の証明書類としても活用できます。
住宅性能評価書を取得するメリット・デメリット
住宅性能評価書の取得は任意ですが、取得することで様々なメリットを得られる一方で、いくつかのデメリットもあります。ここでは、それぞれについて詳しく見ていきましょう。
住宅性能評価書取得の主なメリット
第三者機関による客観的な評価により、住宅の品質が保証されることは大きなメリットです。具体的には、施工品質の確保や将来的な資産価値の維持につながります。また、万が一のトラブル時には、評価書が重要な証明書類となります。
トラブル防止・解決のメリット
建設会社との間でトラブルが発生した際、性能評価書があることで話し合いがスムーズに進みやすくなります。また、指定住宅紛争処理機関による迅速な処理を受けられることも、大きな安心材料となります。
住宅ローンにおけるメリット
住宅性能評価書を取得することで、多くの金融機関で住宅ローンの金利優遇を受けることができます。長期優良住宅の認定を受ける際にも、性能評価書の取得が有利に働く場合があります。
保険料におけるメリット
火災保険料が割引になる場合があります。特に耐火性能や耐震性能が高く評価された住宅では、保険料の優遇を受けられる可能性が高くなります。
維持管理におけるメリット
住宅の性能が明確に記録されることで、将来のリフォームや修繕の際の参考資料として活用できます。また、住宅履歴情報としても重要な役割を果たします。
売却時のメリット
将来、住宅を売却する際に、性能評価書があることで建物の品質を客観的に証明できます。これにより、購入検討者への説明がスムーズになり、売却がしやすくなる可能性があります。
住宅性能評価書取得の主なデメリット
一方で、住宅性能評価書の取得には以下のようなデメリットも存在します。これらを踏まえた上で、取得の判断をする必要があります。
費用面のデメリット
評価書の取得には一定の費用がかかります。一般的な戸建て住宅の場合、設計評価と建設評価を合わせて15万円から25万円程度の費用が必要となります。
工期への影響
評価機関による検査が必要なため、通常の建築工程に比べて工期が延びる可能性があります。特に、検査の日程調整や手続きに時間がかかることがあります。
手続きの手間
評価書取得のための書類作成や申請手続きには、一定の手間と時間がかかります。また、複数回の現場検査への立ち会いなども必要となります。
設計・施工の制約
性能評価基準を満たすために、設計や施工方法に制約が生じる場合があります。これにより、当初の計画を変更する必要が出てくる可能性もあります。
メリット・デメリットの総合判断
住宅性能評価書の取得を検討する際は、これらのメリット・デメリットを総合的に判断することが重要です。特に、建築予算や工期、将来の売却予定の有無などを考慮して、取得の是非を決めることをお勧めします。
新築住宅の住宅性能評価の検査項目
新築住宅の性能評価では、10分野にわたる項目について評価が行われます。各項目は等級で評価され、数値が大きいほど性能が高いことを示します。
構造の安定に関すること
地震や台風などの自然災害に対する住宅の強さを評価します。具体的には、耐震等級(構造躯体の倒壊等防止)、耐震等級(構造躯体の損傷防止)、耐風等級(構造躯体)、耐積雪等級(構造躯体)、地盤又は杭の許容支持力等及びその設定方法を確認します。
火災時の安全に関すること
火災に対する安全性を評価します。具体的な項目として、感知警報装置設置等級(自住戸火災時)、感知警報装置設置等級(他住戸等火災時)、避難安全対策(他住戸等火災時・共用廊下)、脱出対策(火災時)、耐火等級(延焼のおそれのある部分(開口部)、耐火等級(延焼のおそれのある部分(開口部以外))を確認します。
劣化の軽減に関すること
建物の耐久性を評価します。劣化対策等級(構造躯体等)として、構造躯体や基礎などの耐久性を確認します。木造住宅の場合は、土台や柱の防腐・防蟻処理なども評価対象となります。
維持管理・更新への配慮に関すること
設備配管の点検や修理のしやすさを評価します。維持管理対策等級(専用配管)、維持管理対策等級(共用配管)、更新対策(共用排水管)として、配管の清掃や補修のしやすさを確認します。
温熱環境に関すること
断熱性能や省エネ性能を評価します。断熱等性能等級、一次エネルギー消費量等級として、断熱材の施工状況や省エネ設備の導入状況を確認します。
空気環境に関すること
室内の空気環境を評価します。ホルムアルデヒド対策(内装及び天井裏等)、換気対策として、建材から放散される化学物質への対策や換気設備の性能を確認します。
光・視環境に関すること
採光や窓の位置などを評価します。単純開口率(外壁開口部)、方位別開口比として、自然光の取り入れやすさを確認します。
音環境に関すること
遮音性能を評価します。重量床衝撃音対策、軽量床衝撃音対策、透過損失等級(界壁)、透過損失等級(外壁開口部)として、上下階や隣接住戸との音の伝わりにくさを確認します。
高齢者等への配慮に関すること
バリアフリー性能を評価します。高齢者等配慮対策等級(専用部分)、高齢者等配慮対策等級(共用部分)として、段差の有無や手すりの設置状況を確認します。
防犯に関すること
防犯性能を評価します。開口部の侵入防止対策として、窓や玄関ドアの防犯性能を確認します。
現場検査のポイント
設計評価後の建設住宅性能評価では、最低3回の現場検査が行われます。基礎配筋工事の完了時、躯体工事の完了時、建築工事の完了時に検査が実施され、設計図書通りに施工されているかを確認します。
評価基準の選択
全ての項目を評価する必要はなく、建築主が必要と考える項目のみを選んで評価を受けることができます。ただし、構造の安定に関する項目など、基本的な性能については評価を受けることが推奨されます。
中古住宅の住宅性能評価の検査項目
中古住宅の性能評価は、新築時の性能評価項目に加えて、経年による劣化状況や維持管理状況なども重要な評価ポイントとなります。以下、具体的な検査項目について説明していきます。
現況検査により確認する基本項目
中古住宅の性能評価では、まず建物の現況を詳しく調査します。特に構造躯体や雨漏りの有無、設備の動作状況など、住宅の基本的な性能に関わる部分を重点的に確認します。
構造耐力に関する検査
建物の構造安全性を評価します。具体的には、基礎のひび割れや不同沈下、柱や梁の劣化状況、筋かいの設置状況などを確認します。特に木造住宅の場合は、シロアリ被害や腐朽の有無についても詳しく調査します。
雨漏り・水漏れの検査
屋根や外壁の状態を確認し、雨漏りの形跡がないかを調べます。また、浴室やキッチンなどの水回り設備からの漏水の有無も重要な確認項目となります。天井や壁のシミ、膨らみなども入念にチェックします。
設備の劣化状況検査
給排水設備、電気設備、空調設備など、各種設備の経年劣化状況を確認します。配管の腐食や電気配線の劣化、設備機器の動作状況なども重要な評価項目となります。
断熱性能の検査
断熱材の施工状況や劣化状況を確認します。また、サッシや窓ガラスの性能、結露の発生状況なども確認し、住宅の断熱性能を総合的に評価します。
省エネルギー性能の検査
住宅の省エネルギー性能を評価します。断熱材の種類や施工状況、開口部の仕様、設備機器の省エネ性能などを確認し、一次エネルギー消費量を算出します。
維持管理状況の確認
過去の修繕履歴や定期点検の実施状況を確認します。メンテナンス記録や修繕工事の内容、使用された材料なども重要な確認項目となります。
バリアフリー性能の検査
床の段差や手すりの設置状況、廊下や出入口の幅員など、バリアフリーに関する性能を確認します。また、既存の改修工事の内容についても確認を行います。
耐震性能の検査
建築年代による耐震基準への適合状況や、耐震補強工事の有無を確認します。必要に応じて、耐震診断や補強工事の提案も行われます。
劣化事象の具体的確認項目
基礎のひび割れ、外壁の剥離、木部の腐朽、雨漏りの痕跡など、具体的な劣化事象について詳細に確認します。これらの劣化状況は、写真やスケッチなどで記録されます。
検査結果の評価方法
各検査項目について、劣化や不具合の程度を評価し、必要な改修工事の提案も行います。評価結果は、図面や写真を用いて分かりやすく表示されます。
補修必要箇所の指摘
検査の結果、補修が必要と判断された箇所については、その内容と緊急性について具体的に指摘します。また、概算の補修費用についても参考情報として提供されます。
住宅履歴情報の重要性
過去の修繕履歴や点検記録など、住宅の履歴情報は評価の重要な資料となります。これらの情報は、将来の維持管理計画を立てる際にも活用されます。
評価書の活用方法
取得した性能評価書は、売買取引における重要な資料となるほか、リフォーム工事の計画を立てる際の基礎資料としても活用できます。また、住宅ローンの借り入れ時に優遇を受けられる場合もあります。
住宅性能評価書取得の検査費用
住宅性能評価書の取得費用は、住宅の規模や評価項目の数、評価機関によって異なります。ここでは、具体的な費用の目安や影響する要因について詳しく見ていきましょう。
新築住宅の評価費用の目安
一般的な戸建て住宅(延床面積200㎡以下)の場合、設計住宅性能評価と建設住宅性能評価を合わせて、15万円から25万円程度が目安となります。内訳としては、設計住宅性能評価が5万円から8万円程度、建設住宅性能評価が10万円から17万円程度です。
中古住宅の評価費用の目安
中古住宅の性能評価費用は、一般的な戸建て住宅で10万円から20万円程度となります。ただし、築年数や住宅の状態によって、追加の調査が必要となる場合は費用が増加する可能性があります。
費用に影響する要因
住宅性能評価の費用は、以下のような要因によって変動します。住宅の延床面積、評価項目の数、建物の構造種別(木造・鉄骨造・RC造など)、地域による料金差、評価機関による料金差などが主な要因となります。
延床面積による費用の違い
一般的に、延床面積が大きくなるほど評価費用も高くなります。例えば、200㎡を超える住宅では、基本料金に加えて面積に応じた追加料金が発生することが一般的です。
評価項目数による費用の違い
性能評価は必要な項目のみを選択することが可能です。評価項目が増えるほど費用も上昇する傾向にありますが、基本料金に含まれる項目も多いため、項目数の増加が必ずしも費用の大幅な増加にはつながりません。
構造種別による費用の違い
木造住宅に比べて、鉄骨造やRC造の住宅は一般的に評価費用が高くなります。これは、構造計算書の確認など、より詳細な審査が必要となるためです。
地域による費用の違い
評価機関によって料金設定は異なり、また同じ評価機関でも地域によって料金が異なる場合があります。都市部では地方に比べて若干割高になる傾向があります。
追加費用が発生するケース
再検査が必要となった場合や、検査日程の変更が生じた場合には追加費用が発生することがあります。また、遠隔地での検査の場合は、交通費などの実費が別途必要となる場合もあります。
費用の支払い方法
一般的に、設計住宅性能評価と建設住宅性能評価それぞれの申請時に費用を支払います。支払方法は評価機関によって異なりますが、通常は銀行振込や現金払いに対応しています。
費用の軽減策
複数の評価機関に見積もりを依頼して比較検討することで、費用を抑えることができる場合があります。また、建築確認申請と同時に申請することで、手数料が割引になる場合もあります。
補助金制度の活用
地域や時期によっては、住宅性能評価書の取得に対する補助金制度が利用できる場合があります。自治体の住宅関連の補助金情報を確認することをお勧めします。
費用対効果の検討
住宅性能評価書の取得費用は決して安くはありませんが、住宅ローンの金利優遇や将来の売却時の価値維持など、長期的なメリットを考慮して判断することが重要です。
見積もり取得のポイント
評価機関に見積もりを依頼する際は、延床面積や構造、評価を希望する項目などを明確にし、できるだけ詳細な見積もりを取得することをお勧めします。また、複数の評価機関から見積もりを取得して比較検討することも有効です。
住宅性能評価書に関するよくある質問について、詳しく解説させていただきます。
よくある質問(Q&A)
住宅性能評価書について、施主様からよく寄せられる質問とその回答をまとめました。住宅性能評価書の取得を検討される際の参考にしていただければ幸いです。
評価書の取得について
Q:住宅性能評価書は必ず取得しなければならないのでしょうか?
A:法律による取得義務はありません。ただし、住宅ローンの金利優遇を受けたい場合や、将来的な売却を考えている場合は、取得をお勧めします。
Q:評価書の取得にはどのくらいの期間がかかりますか?
A:設計住宅性能評価は通常2週間程度、建設住宅性能評価は着工から完成までの期間中に実施されます。ただし、評価機関の混雑状況により期間が変動する場合があります。
評価の内容について
Q:評価項目は全て必要なのでしょうか?
A:必要な項目のみを選択して評価を受けることができます。ただし、構造の安定性など、基本的な性能項目については評価を受けることをお勧めします。
Q:評価が低い項目があった場合はどうなりますか?
A:評価結果を踏まえて、設計変更や施工方法の見直しを検討することができます。ただし、建築基準法の最低基準は満たしている必要があります。
費用について
Q:住宅性能評価書の費用は住宅ローンの対象となりますか?
A:多くの金融機関で、住宅ローンの諸費用として借入対象となります。詳細は各金融機関にご確認ください。
Q:評価費用の支払いはいつ行うのでしょうか?
A:通常、設計住宅性能評価と建設住宅性能評価それぞれの申請時に支払いを行います。支払方法は評価機関によって異なります。
検査について
Q:現場検査は何回行われますか?
A:建設住宅性能評価では最低3回(基礎配筋工事の完了時、躯体工事の完了時、建築工事の完了時)の検査が行われます。
Q:検査日に立ち会う必要はありますか?
A:施主様の立ち会いは必須ではありませんが、可能であれば立ち会うことをお勧めします。建設会社の担当者は必ず立ち会います。
評価書の有効期限について
Q:住宅性能評価書の有効期限はありますか?
A:法律上の有効期限はありませんが、建物の状態は経年により変化するため、中古住宅として売却する際には再評価を検討することをお勧めします。
Q:リフォーム後に再評価は必要ですか?
A:大規模なリフォームを行った場合は、新しい性能を証明するために再評価を受けることをお勧めします。特に売却を考えている場合は有効です。
トラブル対応について
Q:評価書に記載された性能と実際の性能が異なる場合はどうすればよいですか?
A:指定住宅紛争処理機関に相談することができます。評価書があることで、トラブル解決がスムーズに進むことが期待できます。
Q:評価機関の選び方に注意点はありますか?
A:国土交通大臣の指定を受けた機関であることを確認し、可能であれば複数の機関から見積もりを取得して比較検討することをお勧めします。
その他の質問
Q:中古住宅を購入する際、過去の評価書はどのような価値がありますか?
A:建物の履歴を知る重要な資料となりますが、現在の状態を正確に把握するためには、新たに性能評価を受けることをお勧めします。
Q:評価書は売却時にどのように活用できますか?
A:建物の品質を客観的に証明する資料として活用でき、購入検討者への説明がスムーズになります。また、査定額にプラスの影響を与える可能性もあります。
まとめ
建設住宅性能評価書は、住宅の品質を客観的に証明する重要な書類です。取得には一定の費用がかかりますが、将来的なトラブル防止や資産価値の維持という観点から、十分な価値があるといえるでしょう。ただし、取得を検討する際は、自身のニーズや予算と照らし合わせて、慎重に判断することが大切です。
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