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定期借地権の概要や定期借地物件を購入するメリット・デメリット

家づくりの基本

2024/12/17

2024/12/17

記事監修者

1級ファイナンシャル・プランニング技能士 / 渡辺 知光

定期借地権の概要や定期借地物件を購入するメリット・デメリット

マイホーム購入を検討する中で、定期借地権付きの物件に出会うことがあります。通常の土地購入と比べて価格が安く魅力的に感じる一方で、期限が来たら更地にして返却しなければならないなど、気になる点も多いのではないでしょうか。そこで今回は、定期借地権の基礎知識から、メリット・デメリット、向いている人の特徴までご紹介します。

定期借地権とは

定期借地権とは、一定期間だけ土地を借りることができる権利のことを指します。土地所有者(地主)との契約に基づき、決められた期間だけ土地を使用できる制度です。1992年の借地借家法の改正により導入され、一般定期借地権、建物譲渡特約付借地権、事業用借地権の3種類があります。

定期借地権の3つの種類

一般定期借地権は、契約期間が50年以上と定められており、住宅用地として最も一般的に使用されています。契約期間満了時には更地にして返還する必要があります。

建物譲渡特約付借地権は、30年以上の契約期間で、期間満了時に地主に建物を譲渡することを特約として定めるものです。

事業用借地権は、もっぱら事業の用に供する建物の所有を目的とし、契約期間は10年以上50年未満となっています。

定期借地権の基本的な仕組み

定期借地権では、毎月の地代を支払う必要があります。地代は通常、近隣の相場や公示地価などを基準に決定され、3年ごとに見直されることが一般的です。

契約期間中は安定的に土地を使用することができますが、期間満了後の更新は一切認められません。そのため、期間満了時には必ず建物を取り壊して更地にし、土地を返還しなければなりません。

通常の借地権との違い

従来の借地権(普通借地権)では、借地人に更新請求権が認められており、特段の事情がない限り地主は更新を拒否できませんでした。一方、定期借地権では契約期間満了後の更新は一切できず、必ず土地を返還する必要があります。

契約期間満了時の取り扱い

契約期間が満了すると、借地人は自己負担で建物を取り壊し、更地の状態で土地を返還する必要があります。ただし、地主との合意があれば、建物を買い取ってもらうことも可能です。

定期借地権設定の手続き

定期借地権を設定する際は、公正証書による契約を行うことが一般的です。契約に先立ち、地主は借地人に対して、契約の更新がなく、期間満了時には土地を更地にして返還しなければならない旨を、書面で説明する必要があります。

地代の決定と改定

地代は、土地の相続税路線価や固定資産税評価額などを基準に、年額で土地価格の1〜2%程度に設定されることが多いです。また、経済情勢の変動に応じて、一定期間ごとに地代の改定を行うことができます。

ただし、地代の改定については、あらかじめ契約書に定められた条件に従って行われ、著しい経済事情の変動がない限り、大幅な改定は認められません。

譲渡・転貸に関する制限

定期借地権は、原則として地主の承諾があれば第三者に譲渡することができます。ただし、譲渡する際は残存期間が短くなるほど価値が下がるため、売却が難しくなる可能性があります。

税金面での取り扱い

定期借地権付きの土地については、固定資産税は地主に課税されます。一方、建物については所有者である借地人に課税されます。また、契約時に権利金を支払った場合、この権利金は借地権の取得費用として必要経費に算入することができます。

定期借地権付き物件のメリット・デメリット

定期借地権付き物件は、購入検討時に様々な観点からメリット・デメリットを比較検討する必要があります。初期費用を抑えられる反面、将来的な資産価値の目減りなど、慎重に検討すべき要素も多くあります。

メリット

初期費用を大幅に抑えられることが最大のメリットです。土地を購入する必要がないため、一般的な物件と比べて購入価格を3割から5割程度抑えることができます。その結果、住宅ローンの借入額も少なくて済み、月々の返済負担も軽減されます。

良好な立地に住むことができるのも大きな特徴です。一般的な物件では予算的に難しい駅近や都心部でも、定期借地権付き物件であれば手が届く可能性があります。

固定資産税についても、建物分のみの支払いとなるため、土地・建物を所有する場合と比べて大幅に負担が少なくなります。これは、毎年の維持費を抑える効果があります。

相続対策としても活用でき、相続税評価額を低く抑えることができます。土地を所有していないため、相続財産が少なくなり、相続税の負担を軽減できます。

デメリット

最大のデメリットは、契約期間満了時に建物を取り壊して更地にする必要があることです。取り壊し費用は所有者負担となり、建物の規模にもよりますが、一般的に数百万円程度の費用が必要になります。

資産価値が年々下がっていく点も重要な問題です。一般的な不動産は土地の価値が下支えとなりますが、定期借地権付き物件は建物価値のみが評価対象となります。そのため、経年とともに価値が大きく減少していきます。

毎月の地代支払いが必要な点も見逃せません。地代は月々の固定費として家計を圧迫する要因となります。また、3年ごとに見直されることが多く、将来的な負担増加のリスクも考慮する必要があります。

経済的な影響の詳細

住宅ローンについては、一般的な物件と比べて金利が若干高めに設定されることがあります。これは、金融機関が定期借地権付き物件を担保として評価する際、リスクを考慮するためです。

売却時の制限も考慮が必要です。残存期間が短くなるほど売却価格は下がり、買い手も限定されます。特に残り期間が20年を切ると、住宅ローンの融資が受けにくくなるため、売却がさらに困難になります。

契約面での制約

契約期間中の解約は原則としてできません。ライフスタイルの変化や転勤などで引っ越しが必要になった場合でも、簡単には契約を終了できない点に注意が必要です。

建物の増改築についても、地主の承諾が必要となる場合が多く、自由度が制限される可能性があります。将来的な住まいの変更計画がある場合は、事前に制約条件を確認しておく必要があります。

維持管理面での考慮点

建物の維持管理については、一般の物件と同様に所有者の責任で行う必要があります。ただし、大規模な修繕や設備の更新を検討する際は、契約残存期間との兼ね合いを考慮する必要があります。

また、地代の値上げに備えて、ある程度の資金的な余裕を持っておくことも重要です。経済情勢の変化により地代が上昇した場合、家計への影響を最小限に抑えられるよう、計画的な資金管理が求められます。

定期借地権付き物件に向いている人の特徴

定期借地権付き物件は、すべての人に適しているわけではありません。ライフプランや経済状況によって、向き不向きが分かれます。ここでは、どのような方に向いているのか、具体的に見ていきましょう。

予算を抑えて良好な立地に住みたい人

初期費用を抑えられることから、限られた予算で駅近や都心部など、良好な立地に住むことを優先したい方に向いています。土地代が不要なため、同じ予算でも立地条件の良い物件を選ぶことができます。

住宅の資産価値にこだわらない人

将来的な資産形成よりも、快適な住環境を重視する方に適しています。建物を資産として捉えるのではなく、生活を楽しむための道具として考えられる方であれば、定期借地権付き物件のデメリットを受け入れやすいでしょう。

一定期間後の住み替えを考えている人

子育て期間中だけ広い家に住みたい、リタイア後は別の場所に移住したいなど、将来的な住み替えをあらかじめ計画している方にも向いています。契約期間に合わせてライフプランを立てることができます。

相続対策を考えている人

相続税の負担を軽減したい方にとって、有効な選択肢となります。土地を所有しないため、相続財産の評価額を抑えることができます。特に都心部など地価の高い地域では、相続対策として検討する価値があります。

向いていない人の特徴

一方で、次のような方には定期借地権付き物件はお勧めできません。資産として次世代に残したい方、長期的な資産形成を目指す方、将来的な売却を考えている方、地代の支払いに不安がある方などです。

年齢による適性

年齢も重要な判断材料となります。若い世代の場合、契約期間満了時の年齢を考慮する必要があります。一方、高齢の方の場合、契約期間が自身の想定居住期間をカバーできるかどうかを検討することが重要です。

収入面での考慮点

安定した収入がある方が向いています。毎月の地代支払いが必要なため、固定費として家計に組み込める余裕が必要です。また、地代の値上げにも対応できる経済的な余裕がある方が望ましいといえます。

家族構成による適性

単身者や子育て世帯など、家族構成によっても向き不向きが分かれます。特に子育て世帯の場合、教育費との兼ね合いで初期費用を抑えられるメリットは大きいものの、契約期間と子どもの独立時期なども考慮する必要があります。

職業による適性

転勤の可能性が低く、長期的に同じ地域に住み続けられる方に向いています。一方、転勤の可能性が高い職業の方は、賃貸住宅の方が柔軟な対応が可能かもしれません。

ライフプランとの整合性

定期借地権付き物件を検討する際は、自身のライフプランと契約期間との整合性を十分に確認することが重要です。将来の生活設計や家族の変化なども含めて、総合的に判断する必要があります。

よくある質問

定期借地権付き物件については、様々な疑問や不安を持たれる方が多いです。ここでは、特に問い合わせの多い質問についてお答えします。

契約や権利に関する質問

Q:契約期間満了前に売却することはできますか?

A:可能です。ただし、残存期間が短くなるほど売却価格は下がり、買い手も限定されます。特に残存期間が20年を切ると、住宅ローンが組みにくくなるため、売却がより困難になります。

Q:途中解約はできますか?

A:原則としてできません。ただし、地主との合意があれば可能な場合もあります。その場合でも、建物の取り壊しや原状回復費用は借地人の負担となります。

Q:契約期間満了後、建物はどうなりますか?

A:原則として、借地人の負担で建物を取り壊し、更地にして返還する必要があります。ただし、地主との合意があれば、建物を買い取ってもらうことも可能です。

費用に関する質問

Q:地代は将来的に上がりますか?

A:一般的に3年ごとに見直される場合が多く、経済情勢に応じて変動する可能性があります。ただし、契約書に定められた条件に従って改定されるため、急激な値上げは少ないです。

Q:建物の解体費用はどのくらいかかりますか?

A:建物の規模や構造によって異なりますが、一般的な戸建住宅で200万円から500万円程度が目安となります。マンションの場合は区分所有者で按分して負担することになります。

住宅ローンに関する質問

Q:定期借地権付き物件でも住宅ローンは組めますか?

A:組むことができます。ただし、一般の物件と比べて金利が若干高めに設定されることがあり、融資期間も残存借地期間を超えることはできません。

Q:頭金はどのくらい必要ですか?

A:金融機関によって異なりますが、一般的に購入価格の2割から3割程度の頭金が必要となります。土地代が不要なため、必要な頭金の絶対額は一般物件より少なくなります。

相続や転居に関する質問

Q:定期借地権は相続できますか?

A:相続することができます。ただし、相続人は地代支払いなどの義務も継承することになります。また、複数の相続人がいる場合は、権利関係を明確にしておく必要があります。

Q:転勤になった場合はどうすればよいですか?

A:賃貸に出すことも可能です。ただし、地主の承諾が必要な場合が多いため、事前に確認が必要です。売却も選択肢の一つですが、残存期間によっては売却が困難な場合もあります。

メンテナンスに関する質問

Q:リフォームや増改築はできますか?

A:基本的には可能ですが、地主の承諾が必要な場合があります。また、契約残存期間とのバランスを考慮して判断する必要があります。

Q:固定資産税はどうなりますか?

A:建物分のみ課税されます。土地分の固定資産税は地主負担となるため、一般の物件と比べて固定資産税の負担は少なくなります。

まとめ

定期借地権付き物件は、初期費用を抑えられる一方で、期間満了時の建物取り壊しや資産価値の目減りなど、検討すべき課題も多いといえます。ご自身のライフプランや経済状況を踏まえ、メリット・デメリットを十分に理解したうえで、購入を検討することが大切です。お悩みの方は、不動産の専門家に相談することをおすすめします。

なお、当社が提供している「housemarriage」では、住宅コンシェルジュが理想の家づくりのサポートとして、住まいを探す上で重要なハウスメーカーや工務店の営業担当者とのマッチングサポートをさせていただきます。住宅購入の資金計画の相談・作成や、相性良く親身になってくれる「営業担当者」をご紹介します。家づくりに関して少しでも不安を感じるようであれば、お問い合わせください。

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記事監修者

1級ファイナンシャル・プランニング技能士 / 渡辺 知光

大学卒業後、積水化学工業に入社し住宅「セキスイハイム」を販売。3年8カ月千葉県内で営業に従事し、営業表彰を6期連続受賞。
途中、母の急死に直面し、自分の将来について悩み始める。結果、大学のゼミで学んだ「保険」事業に実際に携わりたいと思いFP資格を取得して日本生命に転職。4年間営業に従事したが、顧客に対して提供出来る商品がなく退職を決意。FP兼保険代理店を開業する。

収入も顧客もゼロからのスタート。しかも独立直前に結婚し住宅購入した為、返済不安に陥り貯蓄が日々減っていく恐怖を覚える。

人生で初めて家計の見直しを行い、根本的な改善により失敗と不安を減らすコツを発見。自分の経験を生かしお客様が同じ道を歩まないよう伝えるべく「マイホーム検討者向けFP」として活動中。

運営会社情報

  • 会社名

    :有限会社ティーエムライフデザイン総合研究所

  • 代表者

    :渡辺知光

  • 本社
    所在地

    :〒104-0045 東京都中央区築地2-15-15 セントラル東銀座1002

  • アクセス

    :地下鉄日比谷線築地駅より徒歩3分

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