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住宅の買い替えに使える、譲渡損失の繰越控除について解説

家づくりの基本

2024/12/25

2024/12/25

記事監修者

1級ファイナンシャル・プランニング技能士 / 渡辺 知光

住宅の買い替えに使える、譲渡損失の繰越控除について解説

住宅を買い替える際に知っておきたい、譲渡損失の繰越控除制度。この制度を活用することで、売却時の損失を最大5年間にわたって繰り越すことができ、税負担を軽減することが可能です。本記事では、この制度の仕組みや適用条件について詳しく解説していきます。

譲渡損失の繰越控除とは

譲渡損失の繰越控除は、個人が所有する居住用財産(マイホーム)を売却した際に損失が発生した場合に、その損失額を最大5年間にわたって所得から控除できる税制優遇制度です。

制度の基本的な仕組み

居住用財産の売却価格が取得価額を下回った場合、その差額を「譲渡損失」として認定し、給与所得などの他の所得と相殺することができます。これにより、その年の所得税・住民税の負担を軽減することが可能となります。この制度は、不動産市況の変動による個人の損失を税制面でサポートする重要な役割を果たしています。

適用要件の詳細

本制度の適用を受けるためには、いくつかの重要な要件を満たす必要があります。まず、売却する住宅については、本人が実際に居住していたことが条件となります。具体的には、売却時まで引き続き所有し、売却した年の前年、または前々年から売却時まで居住していた住宅であることが求められます。また、譲渡契約締結の前後1年以内に新たな住宅を取得し、居住を開始することも要件となっています。さらに、譲渡した年の前年以前から所有する住宅については、譲渡した年の1月1日時点で所有期間が5年を超えていないことが条件です。

控除額の具体的な計算方法

譲渡損失額の計算は、取得価額に譲渡費用を加え、そこから譲渡収入金額を差し引くことで求められます。取得価額には、住宅の購入時の本体価格だけでなく、仲介手数料や登記費用、不動産取得税なども含まれます。同様に、譲渡費用としては、売却時の仲介手数料、広告費、測量費などが計上できます。これらの費用を正確に計算することで、適切な控除額を算出することができます。

手続きと必要書類

確定申告時には、適切な手続きと必要書類の提出が求められます。具体的には、確定申告書と譲渡所得の内訳書が基本となり、これに売買契約書の写しや登記事項証明書、住民票の写し、源泉徴収票、さらに新居の取得を証明する書類を添付する必要があります。これらの書類は、制度の適用要件を満たしていることを証明する重要な役割を果たします。

制度利用における注意点

本制度を利用する際には、いくつかの重要な注意点があります。譲渡した住宅に住宅ローンの残債がある場合は、その残債を売却代金で完済する必要があります。また、親族間での売買は、原則として本制度の対象外となることにも注意が必要です。確定申告は定められた期限内に行うことが求められ、複数の居住用財産を売却した場合には、それぞれについて適切に損益を計算する必要があります。

制度活用のメリット

本制度の活用により、住宅売却時の損失を複数年にわたって税負担の軽減に活用できるという大きなメリットがあります。特筆すべきは、新居購入時の住宅ローン控除との併用が可能である点です。これにより、所得税および住民税の両面での負担軽減が実現でき、不動産市況の変動による損失を税制面で効果的にカバーすることが可能となります。

繰越控除と住宅ローン控除との併用も可能

住宅の譲渡損失の繰越控除と住宅ローン控除は、条件を満たせば同時に適用することが可能です。この併用により、住宅の買い替えに伴う税負担を大きく軽減することができます。

併用が可能となる条件

住宅の譲渡損失の繰越控除と住宅ローン控除を併用するためには、まず両制度それぞれの要件を満たす必要があります。新しく購入した住宅について住宅ローンを組み、その返済が開始されていること、また譲渡損失が発生した従前の住宅について、適正な価格での売買が行われたことが前提となります。なお、新居の住宅ローンについては、民間金融機関や住宅金融支援機構などの公的機関からの借入れが対象となります。

住宅ローン控除の適用要件

住宅ローン控除を受けるためには、年末時点での住宅ローン残高に応じて一定割合を所得から控除することができます。控除を受けるための住宅は、床面積が50平方メートル以上であること、所得要件として合計所得金額が3000万円以下であることなどの条件があります。また、入居後6ヶ月以内に確定申告を行う必要があり、最大13年間にわたって控除を受けることが可能です。

併用による税負担軽減効果

両制度を併用することで、より大きな税負担軽減効果が期待できます。譲渡損失の繰越控除では、売却時の損失を最大5年間にわたって所得から控除できます。これに加えて、新居の住宅ローン控除により、毎年の住宅ローン残高に応じた控除も受けられます。例えば、3000万円の住宅ローンを組んだ場合、年間最大40万円の所得税額から控除を受けることができ、さらに住民税からも一定額が控除されます。

確定申告の手続き

両制度の併用にあたっては、確定申告時に適切な手続きが必要です。譲渡損失の繰越控除については、不動産の売買契約書や登記簿謄本、住民票などの提出が必要となります。一方、住宅ローン控除については、住宅取得時の契約書、借入金の年末残高証明書、登記事項証明書などの提出が求められます。これらの書類を漏れなく準備し、期限内に申告を行うことが重要です。

併用時の注意点

両制度の併用に際しては、いくつかの重要な注意点があります。まず、譲渡損失の繰越控除は損失が発生した年から順次控除していく必要があり、控除の順序を任意に選択することはできません。また、住宅ローン控除については、入居年やローンの借入時期によって控除率や控除期間が異なる場合があります。さらに、確定申告の際は、両制度の申告漏れがないよう、十分な確認が必要です。

将来的な税務計画

両制度を最大限活用するためには、長期的な視点での税務計画が重要です。譲渡損失の繰越期間と住宅ローン控除の適用期間を考慮しながら、毎年の所得状況に応じて適切な控除額を設定することで、効果的な税負担の軽減が可能となります。特に、所得の変動が予想される場合は、税理士などの専門家に相談しながら、最適な控除方法を検討することをお勧めします。

よくある質問(Q&A)

住宅の譲渡損失の繰越控除について、多くの方から寄せられる質問とその回答をまとめました。実務的な観点から重要な内容を中心に解説いたします。

制度の基本的な適用について

譲渡損失の繰越控除制度の適用期間についてよく質問が寄せられます。本制度は譲渡した年を含めて最大6年間(譲渡した年と繰越5年間)適用することができます。例えば、2024年に住宅を譲渡した場合、2029年まで控除を受けることが可能です。控除額の上限は各年の所得金額となりますが、控除しきれなかった金額は翌年に繰り越すことができます。

対象となる物件について

マンションなどの区分所有建物も対象になるかという質問もよくいただきます。一戸建て住宅に限らず、マンションや区分所有建物も対象となります。ただし、いずれの場合も自己の居住用として使用していたことが条件となります。また、住宅の一部を事務所や店舗として使用していた場合、居住用部分についてのみ制度の適用が可能です。この場合、床面積などによって居住用部分の割合を算出する必要があります。

住宅ローンが残っている場合

住宅ローンの残債がある物件の売却に関する質問も多く寄せられます。住宅ローンの残債がある物件でも本制度の対象となりますが、売却代金でローンを完済することが条件となります。完済できない場合でも、別の資金で返済することで制度を利用することは可能です。また、住宅ローンの繰上返済手数料は、譲渡費用として計上することができます。

新居の購入に関する条件

新しい住宅の購入時期について、具体的な期限を知りたいという質問が多くあります。譲渡契約を締結した日の前後1年以内に新たな住宅を取得し、実際に居住を開始する必要があります。この「取得」には、建売住宅や中古住宅の購入だけでなく、注文住宅の場合は建築完了時点も含まれます。また、マンションの場合は引渡しを受けた時点が取得時期となります。

確定申告の手続きについて

確定申告の具体的な手続き方法についても質問が多く寄せられます。確定申告は住宅を譲渡した年の翌年の確定申告期間内(通常2月16日から3月15日まで)に行う必要があります。この際、売買契約書の写しや住民票の写し、登記事項証明書など必要書類の準備が重要です。また、e-Taxを利用した電子申告も可能ですが、添付書類の提出方法については事前に確認が必要です。

特殊なケースへの対応

災害や転勤による住宅の売却についても多くの質問があります。災害により住宅が滅失し、その後の譲渡により損失が発生した場合でも、一定の条件のもとで本制度を利用できます。また、転勤による住宅の売却についても、要件を満たせば制度の対象となります。ただし、一時的な転勤で将来的に戻る予定がある場合は、その間の住宅の賃貸は制度利用の妨げとはなりません。

所得制限について

所得制限に関する質問も寄せられます。本制度には所得の上限制限はありませんが、各年の控除額は、その年の合計所得金額が上限となります。また、新たに購入する住宅について住宅ローン控除を併用する場合は、住宅ローン控除の所得要件(合計所得金額3000万円以下)を満たす必要があります。

相続した住宅の取り扱い

相続により取得した住宅の売却に関する質問もあります。相続により取得した住宅を売却する場合でも、相続後に居住用として使用し、要件を満たせば本制度を利用することができます。ただし、相続開始から譲渡までの期間や居住期間などについて、一定の要件を満たす必要があります。

まとめ

譲渡損失の繰越控除は、住宅の買い替え時における有効な税制優遇制度です。最大5年間の繰越が可能で、住宅ローン控除との併用もできることから、計画的な活用により大きな節税効果が期待できます。ただし、適用にはいくつかの要件があるため、専門家に相談しながら進めることをお勧めします。制度を正しく理解し、適切に活用することで、スムーズな住宅の買い替えを実現しましょう。

なお、当社が提供している「housemarriage」では、住宅コンシェルジュが理想の家づくりのサポートとして、住まいを探す上で重要なハウスメーカーや工務店の営業担当者とのマッチングサポートをさせていただきます。住宅購入の資金計画の相談・作成や、相性良く親身になってくれる「営業担当者」をご紹介します。家づくりに関して少しでも不安を感じるようであれば、お問い合わせください。

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記事監修者

1級ファイナンシャル・プランニング技能士 / 渡辺 知光

大学卒業後、積水化学工業に入社し住宅「セキスイハイム」を販売。3年8カ月千葉県内で営業に従事し、営業表彰を6期連続受賞。
途中、母の急死に直面し、自分の将来について悩み始める。結果、大学のゼミで学んだ「保険」事業に実際に携わりたいと思いFP資格を取得して日本生命に転職。4年間営業に従事したが、顧客に対して提供出来る商品がなく退職を決意。FP兼保険代理店を開業する。

収入も顧客もゼロからのスタート。しかも独立直前に結婚し住宅購入した為、返済不安に陥り貯蓄が日々減っていく恐怖を覚える。

人生で初めて家計の見直しを行い、根本的な改善により失敗と不安を減らすコツを発見。自分の経験を生かしお客様が同じ道を歩まないよう伝えるべく「マイホーム検討者向けFP」として活動中。

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    :有限会社ティーエムライフデザイン総合研究所

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    :渡辺知光

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