建設住宅性能評価書のメリットや検査内容、費用について解説
家づくりの基本
2024/12/25
2024/12/25
住宅の購入や建築を検討される方にとって、住宅性能評価書は住まいの品質を客観的に判断するための重要な指標となります。本記事では、評価書の基本的な内容から取得までの流れ、メリット・デメリット、費用まで詳しく解説いたします。
住宅性能評価書とは
住宅性能評価書は、2000年に施行された住宅の品質確保の促進等に関する法律(品確法)に基づき、国土交通大臣の指定を受けた第三者機関が住宅の性能を客観的に評価する制度です。設計段階、建設段階、あるいは既存住宅において、住宅の品質を公平な立場から評価し、書面として発行されます。
評価書の種類について
住宅性能評価書には、主に3種類の評価書があります。設計段階で発行される「設計住宅性能評価書」、建設段階で発行される「建設住宅性能評価書」、そして既存住宅の性能を評価する「既存住宅性能評価書」です。
設計住宅性能評価書
設計段階で住宅の性能を評価するもので、図面や計算書などをもとに、構造的な安全性や省エネルギー性能などを評価します。この評価書は、建設住宅性能評価を受けるための前提条件となります。
建設住宅性能評価書
実際の建設工事において、設計図書通りに施工されているかを確認し、完成時の住宅の性能を評価するものです。基礎工事、躯体工事、完成時などの各段階で現場検査が行われます。
既存住宅性能評価書
すでに建てられている住宅の現状の性能を評価するもので、売買時や改修時などに活用されます。劣化状況や性能の維持状況などが重点的に評価されます。
評価項目について
住宅性能評価書では、以下の10分野について評価が行われます。
1. 構造の安定に関すること
2. 火災時の安全に関すること
3. 劣化の軽減に関すること
4. 維持管理・更新への配慮に関すること
5. 温熱環境に関すること
6. 空気環境に関すること
7. 光・視環境に関すること
8. 音環境に関すること
9. 高齢者等への配慮に関すること
10. 防犯に関すること
評価の等級について
各評価項目は、性能の水準に応じて等級で表示されます。一般的に等級1が最も基準が低く、等級4が最も高い基準となります。ただし、項目によっては等級の数が異なる場合もあります。
住宅性能評価書の特徴
住宅性能評価書の大きな特徴は、評価内容が国によって定められた共通の基準に基づいているという点です。そのため、異なるハウスメーカーや工務店の住宅であっても、客観的な比較が可能となります。また、評価書の内容について紛争が生じた場合には、指定住宅紛争処理機関による迅速な処理を受けることができます。
これらの評価結果は、住宅の購入や建築を検討する際の重要な判断材料となるだけでなく、住宅ローンの金利優遇や住宅保証制度の利用条件としても活用されています。
住宅性能評価書を取得するメリット・デメリット
住宅性能評価書の取得は任意ですが、住まいの品質を客観的に評価できる重要な指標となります。ここでは、評価書取得のメリットとデメリットについて詳しく解説していきます。
メリット
住宅性能評価書の取得には、以下のような多くのメリットがあります。
第三者機関による客観的な評価
国土交通大臣の指定を受けた第三者機関が評価を行うため、中立的な立場から住宅の品質が保証されます。これにより、ハウスメーカーや工務店の説明だけでなく、客観的な評価基準に基づいて住宅の性能を判断することができます。
住宅ローンの優遇
多くの金融機関では、住宅性能評価書を取得している物件に対して、住宅ローンの金利優遇を実施しています。長期的に見ると、支払利息の大幅な削減につながる可能性があります。
保険料の割引
火災保険やその他の住宅関連保険において、住宅性能評価書を取得している場合、保険料が割引される場合があります。特に耐震等級が高い場合、地震保険料の割引が適用されることがあります。
トラブル時の対応
住宅性能評価書を取得していると、万が一トラブルが発生した場合、指定住宅紛争処理機関による迅速な処理を受けることができます。これにより、紛争解決までの時間と費用を抑えることが可能です。
資産価値の維持
将来的な売却や賃貸を考える場合、住宅性能評価書があることで建物の品質が証明され、資産価値の維持につながります。特に中古住宅市場では、評価書の存在が物件の信頼性を高める要因となります。
デメリット
一方で、以下のようなデメリットもあります。
費用負担
評価書の取得には一定の費用が必要です。新築住宅の場合、設計評価と建設評価を合わせて25万円程度、既存住宅の場合は20万円程度の費用がかかります。住宅の規模や評価機関によって金額は変動します。
工期への影響
新築住宅の場合、建設住宅性能評価のために複数回の現場検査が必要となります。そのため、検査のタイミングに合わせて工事を進める必要があり、通常よりも工期が延びる可能性があります。
手続きの手間
評価書取得のためには、多くの書類準備や手続きが必要となります。また、現場検査の日程調整なども必要となり、建築計画全体の調整が複雑になる場合があります。
評価基準の制限
評価基準が細かく定められているため、デザイン性や独創性を重視した住宅では、高い評価を得られない場合があります。また、新しい建築工法や材料を採用する際に制限を受ける可能性があります。
住宅性能評価書の取得には、費用や手間などのデメリットはありますが、長期的な視点で見ると、住宅の品質保証や資産価値の維持など、多くのメリットがあります。特に、住宅ローンの優遇や保険料の割引といった経済的なメリットは、評価書取得の費用を相殺できる可能性があります。
評価書取得の判断には、建築予定の住宅の特性や将来的な利用計画、予算などを総合的に考慮することが重要です。また、施工業者や住宅メーカーと十分に相談し、評価書取得のタイミングや必要性について検討することをおすすめします。
新築住宅の住宅性能評価の検査内容
新築住宅の住宅性能評価は、「設計住宅性能評価」と「建設住宅性能評価」の2段階で実施されます。ここでは、それぞれの評価段階における検査内容について詳しく解説していきます。
設計住宅性能評価の検査内容
設計住宅性能評価では、建築前の設計図書をもとに、以下の項目について検査が行われます。
構造の安定性に関する検査
地震や台風などの災害に対する耐力を評価します。具体的には、耐震等級、耐風等級、耐積雪等級などが確認されます。特に耐震等級は、地震保険料率の割引にも関係する重要な項目となります。
火災時の安全性に関する検査
火災に対する安全性を評価します。具体的には、感知警報装置の設置状況、避難経路の確保、延焼のしにくさなどが検査されます。また、主要構造部の防火性能も重要な評価項目となります。
劣化対策に関する検査
建物の長期的な耐久性を評価します。構造躯体の劣化対策として、木材の防腐・防蟻処理、鉄筋のかぶり厚さ、コンクリートの水セメント比などが確認されます。
建設住宅性能評価の検査内容
建設住宅性能評価では、実際の施工段階で複数回の現場検査が行われます。主な検査のタイミングと内容は以下の通りです。
基礎配筋工事の検査
基礎工事の配筋状態を確認します。具体的には、配筋間隔、かぶり厚さ、鉄筋の径や本数などが設計図書通りであるかを検査します。基礎は建物を支える重要な部分であるため、特に入念な確認が行われます。
躯体工事の検査
建物の構造躯体の施工状況を確認します。木造住宅の場合は、軸組工法やツーバイフォー工法などの工法に応じた検査が行われます。鉄筋コンクリート造の場合は、配筋状態やコンクリートの打設状況などが確認されます。
下地工事の検査
断熱材や防水シートの施工状況、設備配管の位置などを確認します。これらは完成後に確認が難しい部分であるため、施工段階での確認が重要となります。
完了検査
建物が完成した時点で、設備機器の設置状況や内装仕上げ、バリアフリー対応などを含む総合的な検査が行われます。また、設計住宅性能評価で定められた性能が実現されているかも確認されます。
その他の重要な評価項目
上記の主要な検査項目に加えて、以下のような項目も評価されます。
1. 温熱環境:断熱性能、気密性能
2. 空気環境:換気性能、内装材からの化学物質の放散
3. 光・視環境:採光性、遮光性
4. 音環境:遮音性能、透過損失
5. 高齢者等への配慮:段差の有無、手すりの設置状況
6. 防犯性:開口部の防犯性能
検査における注意点
検査の各段階において、施工業者は必要な書類や写真などの証明資料を用意する必要があります。また、検査日程は事前に評価機関と調整を行い、工程に支障が出ないよう計画的に進めることが重要です。
特に重要な検査ポイントでは、施工後に確認が困難な部分も多いため、タイミングを逃さず適切に検査を受けることが求められます。
中古住宅の住宅性能評価の検査内容
中古住宅の住宅性能評価は、既存住宅の現状を客観的に評価するものです。新築時とは異なり、経年による劣化や修繕履歴なども含めた総合的な評価が行われます。
現況検査の内容
中古住宅の性能評価では、まず建物の現況調査が実施されます。具体的には以下のような項目について、詳細な検査が行われます。
構造耐力に関する検査
建物の構造的な安全性を確認します。基礎のひび割れ、柱や梁の変形、床の傾きなどを詳細に調査します。必要に応じて、非破壊検査機器を使用した調査も行われます。
雨漏り・水漏れの検査
屋根、外壁、開口部周りなどの劣化状況を確認し、雨漏りの有無や可能性を評価します。また、浴室やキッチンなどの水回り設備の状態も詳しく調査されます。
設備の検査
給排水設備、電気設備、ガス設備などの機能性と安全性を確認します。配管の腐食状況や電気系統の安全性、設備の経年劣化の程度なども評価の対象となります。
書類調査の内容
図面等の確認
設計図書や工事記録などの書類を確認し、建物の基本情報や仕様を確認します。新築時の住宅性能評価書がある場合は、その内容も参考にされます。
修繕履歴の確認
過去の修繕や改修工事の記録を確認し、メンテナンス状況を評価します。定期的な点検や適切な補修が行われているかどうかも重要な判断材料となります。
性能項目ごとの評価内容
構造の安定性
地震に対する強さ、風圧力に対する強さ、積雪荷重に対する強さなどを評価します。特に耐震性能については、現行の耐震基準との比較も行われます。
劣化対策
構造体や主要な部材の劣化状況を確認します。木造住宅の場合は、腐朽や蟻害の有無なども重点的に調査されます。
温熱環境
断熱性能や気密性能を評価します。開口部の性能や断熱材の状態、結露の発生状況なども確認されます。
維持管理・更新
配管やダクトの点検のしやすさ、設備の更新のしやすさなどを評価します。将来的なメンテナンスや改修の容易さも重要な評価項目となります。
評価における注意点
中古住宅の性能評価では、目視できない部分の性能評価には限界があります。そのため、評価書には「評価されていない」「評価対象外」という項目が含まれる場合があります。
評価結果の活用
中古住宅の性能評価結果は、売買時の価格設定や改修計画の立案、住宅ローンの審査などに活用されます。また、保険料の割引や税制優遇を受けられる場合もあります。
評価のタイミング
中古住宅の売買時や大規模改修を検討する際に評価を受けることが一般的です。また、定期的に評価を受けることで、建物の経年変化を把握し、計画的なメンテナンスに活用することもできます。
特に中古住宅を購入する際は、この評価結果を参考に、必要な改修工事の範囲や概算費用を検討することができ、購入後のトラブルを未然に防ぐことができます。
住宅性能評価書取得のための検査費用
住宅性能評価書の取得費用は、住宅の規模や評価機関、地域によって異なります。ここでは、評価の種類別に一般的な費用の目安と、費用に影響を与える要因について詳しく解説していきます。
新築住宅の評価費用
設計住宅性能評価の費用
一般的な戸建て住宅(延床面積200㎡以下)の場合、設計住宅性能評価の費用は8万円から15万円程度となります。評価項目数や住宅の規模によって費用は変動します。
建設住宅性能評価の費用
建設住宅性能評価の費用は、一般的な戸建て住宅で15万円から20万円程度です。現場での検査回数や建物の構造種別によって費用が変わってきます。なお、設計住宅性能評価と建設住宅性能評価をセットで申請すると、割引が適用される評価機関もあります。
既存住宅の評価費用
中古住宅の性能評価費用は、一般的に20万円から30万円程度です。建物の規模や築年数、評価項目の数などによって費用は変動します。また、図面の有無や現地調査の難易度によっても費用が変わる場合があります。
費用に影響を与える要因
建物の規模による影響
延床面積が大きくなるほど、評価費用も高くなります。一般的に、200㎡を超える場合は追加料金が発生します。また、3階建て以上の場合も追加料金となることが多いです。
評価項目数による影響
評価を受ける項目数が多いほど費用は高くなります。必須項目以外の選択項目を追加する場合は、1項目につき数千円から数万円の追加費用が必要となります。
地域による影響
評価機関までの距離や地域の物価水準によって、費用が変動する場合があります。特に、遠隔地での検査の場合は、出張費用が別途必要となることがあります。
費用の節約ポイント
1. 複数の評価機関に見積もりを依頼し、費用を比較する
2. 設計評価と建設評価をセットで申請する
3. キャンペーン期間を利用する
4. 必要な評価項目を精査し、必須項目以外は厳選する
支払いのタイミング
一般的に、評価申請時に費用の支払いが必要となります。分割払いに対応している評価機関もありますが、その場合は別途手数料が発生する可能性があります。
費用対効果の考え方
住宅性能評価書の取得費用は決して安価ではありませんが、住宅ローンの金利優遇や保険料の割引など、長期的に見ると費用以上のメリットが得られる可能性があります。また、将来の売却時に資産価値の維持にも貢献することが期待できます。
見積もり取得時の注意点
評価機関に見積もりを依頼する際は、以下の点を必ず確認しましょう。
1. 評価項目の内容と数
2. 検査回数と検査項目
3. 追加費用の有無
4. キャンペーンや割引の適用条件
5. 支払い条件や返金規定
住宅性能評価書の取得は任意ですが、住宅の品質確保や将来的な資産価値の維持を考えると、検討する価値のある投資といえるでしょう。費用面で不安がある場合は、複数の評価機関に相談し、最適な選択肢を見つけることをおすすめします。
よくある質問(Q&A)
住宅性能評価書に関して、よく寄せられる質問とその回答をまとめました。検討段階で気になる疑問点の解消にお役立てください。
評価書の取得について
Q:住宅性能評価書は必ず取得しなければならないのですか?
A:住宅性能評価書の取得は任意です。ただし、住宅ローンの金利優遇や住宅保証制度の利用には評価書が必要となる場合があります。また、将来の売却時に資産価値の維持につながる可能性もあります。
Q:評価書の取得にはどのくらいの期間がかかりますか?
A:新築住宅の場合、設計住宅性能評価で約2週間、建設住宅性能評価は建築工程に合わせて実施するため3〜4ヶ月程度かかります。中古住宅の場合は、書類確認から現地調査まで含めて1ヶ月程度が目安です。
評価内容について
Q:設計住宅性能評価と建設住宅性能評価の違いは何ですか?
A:設計住宅性能評価は建築前の図面段階での評価、建設住宅性能評価は実際の施工段階での評価です。新築住宅で性能評価書を取得する場合、通常はこの2段階の評価を受ける必要があります。
Q:評価書の有効期限はありますか?
A:新築住宅の性能評価書に有効期限はありませんが、中古住宅の場合は評価時点での性能を示すものとなります。そのため、中古住宅の評価書は取得時期が重要な意味を持ちます。
費用について
Q:評価費用の支払いはいつ必要ですか?
A:一般的に評価申請時に全額支払いが必要です。ただし、評価機関によっては分割払いに対応している場合もあります。その場合は別途手数料が発生する可能性があります。
Q:途中で評価をキャンセルした場合、費用は返金されますか?
A:評価の進捗状況によって異なりますが、一般的に着手前であれば全額返金、着手後は進捗に応じた返金となります。具体的な返金規定は評価機関によって異なるため、事前に確認することをおすすめします。
トラブル対応について
Q:評価書の内容に不満がある場合はどうすればよいですか?
A:まずは評価機関に相談することをおすすめします。それでも解決しない場合は、指定住宅紛争処理機関による調停制度を利用することができます。
Q:評価書を紛失した場合、再発行は可能ですか?
A:評価機関に申請することで再発行が可能です。ただし、再発行には手数料が必要となります。また、評価書の内容を証明する書類の提出を求められる場合があります。
その他
Q:評価機関はどのように選べばよいですか?
A:国土交通大臣の指定を受けた機関の中から選ぶことができます。費用、評価項目、対応の迅速さなどを比較検討することをおすすめします。また、実績のある評価機関を選ぶことで、より信頼性の高い評価を受けることができます。
Q:中古住宅購入時に評価書がない場合はどうすればよいですか?
A:売主に評価書の有無を確認し、ない場合は新たに取得することを検討します。ただし、取得費用の負担について、売主との協議が必要になる場合があります。
まとめ
住宅性能評価書は、住まいの品質を客観的に評価する重要な指標です。取得には一定の費用と時間がかかりますが、住宅の品質保証や将来的なトラブル防止の観点から、検討する価値のある制度といえるでしょう。評価書の取得を検討される際は、メリット・デメリットを十分に理解したうえで、専門家に相談することをおすすめします。
なお、当社が提供している「housemarriage」では、住宅コンシェルジュが理想の家づくりのサポートとして、住まいを探す上で重要なハウスメーカーや工務店の営業担当者とのマッチングサポートをさせていただきます。住宅購入の資金計画の相談・作成や、相性良く親身になってくれる「営業担当者」をご紹介します。家づくりに関して少しでも不安を感じるようであれば、お問い合わせください。
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