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急傾斜地崩壊危険区域に家を建てる場合の注意点について解説

家づくりの基本

2025/01/06

2025/01/06

記事監修者

1級ファイナンシャル・プランニング技能士 / 渡辺 知光

急傾斜地崩壊危険区域に家を建てる場合の注意点について解説

近年、都市部での土地不足や価格高騰により、急傾斜地に家を建てることを検討される方が増えています。本記事では、急傾斜地崩壊危険区域での家屋建築に関する重要な注意点や法規制について、わかりやすく解説します。

急傾斜地崩壊危険区域とは

急傾斜地崩壊危険区域は、「急傾斜地の崩壊による災害の防止に関する法律」(急傾斜地法)に基づいて、都道府県知事が指定する区域です。この法律は1969年に制定され、がけ崩れ災害から住民の生命を守ることを目的としています。

指定の基準

急傾斜地崩壊危険区域として指定されるためには、以下の3つの要件を全て満たす必要があります。

1. 傾斜度が30度以上の急傾斜地であること

2. 急傾斜地の高さが5メートル以上であること

3. 急傾斜地の崩壊により危害が生じるおそれのある人家が5戸以上あること、または5戸未満であっても、官公署、学校、病院、旅館等の公共的建築物に危害が生じるおそれのある土地であること

区域の範囲

急傾斜地崩壊危険区域には、以下の範囲が含まれます。

1. 急傾斜地の上端から水平距離が10メートル以内の範囲

2. 急傾斜地の下端から水平距離が急傾斜地の高さの2倍(最大50メートル)以内の範囲

区域指定による規制内容

急傾斜地崩壊危険区域に指定されると、以下のような行為が制限されます。

1. 水を放流し、または停滞させる行為

2. ため池、用水路その他の急傾斜地崩壊防止施設以外の施設の設置または改造

3. のり切り、切土、掘削または盛土

4. 立木竹の伐採

5. 木竹の滑下または地引による搬出

6. 土石の採取または集積

7. その他急傾斜地の崩壊を助長し、または誘発するおそれのある行為

区域指定のメリット

急傾斜地崩壊危険区域に指定されることで、以下のような対策や支援を受けることができます。

1. 都道府県による急傾斜地崩壊防止工事の実施

2. 防止工事に要する費用の一部補助

3. 定期的な点検や維持管理の実施

4. 災害時の警戒避難体制の整備

土地所有者の義務

急傾斜地の所有者、管理者、占有者には以下の義務が課せられます。

1. 急傾斜地の崩壊を防止するために必要な措置を講ずる努力義務

2. 急傾斜地崩壊防止工事以外の行為を行う際の都道府県知事の許可取得

3. 土地の適切な維持管理

4. 定期的な点検への協力

急傾斜地崩壊危険区域に住む場合の注意点

急傾斜地崩壊危険区域に住む場合、安全で快適な生活を送るために考慮すべき重要な注意点が多くあります。これらの注意点は、建築前の準備段階から実際の居住時まで、様々な場面で意識する必要があります。

建築前の注意点

建築を検討する際には、まず都道府県知事の許可を得る必要があります。この許可申請には通常1~2ヶ月程度の期間を要するため、余裕を持った計画が必要です。また、通常の建築より詳細な地盤調査が必須となり、その費用は一般的な調査の2~3倍になることもあります。建物の高さや構造、配置などにも様々な制限が設けられているため、これらの制限を事前に確認することが重要です。さらに、擁壁工事や排水設備の設置など、追加で必要となる工事についても把握し、予算計画に組み込む必要があります。

建築時の注意点

建築工事を行う際には、通常より強固な基礎工事が求められます。地盤の状況によっては杭打ち工事も必要となる場合があります。また、雨水や生活排水を適切に処理するため、十分な能力を持つ排水設備の設置が不可欠です。法面の保護のために適切な強度と構造を持つ擁壁を設置することも重要です。工事期間中は特に土砂崩れのリスクが高まるため、安全管理を徹底する必要があります。

居住時の注意点

実際に居住を始めてからは、定期的な点検が重要になります。擁壁やのり面の状態、排水設備の機能について、継続的な確認が必要です。特に擁壁のひび割れや膨らみ、排水溝の詰まりや破損、地面の変形や亀裂などには注意を払う必要があります。

大雨時には特別な注意が必要となります。気象情報を定期的に確認し、避難経路と避難場所を事前に確認しておくことが重要です。危険を感じた場合には、速やかに避難することを躊躇してはいけません。

土地利用について

区域内での土地利用には様々な制限があります。土地の形質変更や木の伐採には許可が必要となり、建物の増改築にも一定の制限が設けられています。さらに、庭づくりにおいても、植栽や花壇の設置が土地の安定性に影響を与える可能性があるため、慎重な計画が必要です。

災害への備え

災害への備えとして、家族で避難のタイミングや経路を事前に確認し、具体的な避難計画を立てておくことが重要です。懐中電灯や携帯ラジオ、非常食などの防災用品を準備することも忘れてはいけません。また、近隣住民との協力体制を築き、互いに声を掛け合える関係を作っておくことで、緊急時の対応がより確実なものとなります。

保険の検討

万が一の事態に備え、適切な保険への加入を検討することも重要です。地震による土砂災害もカバーできる地震保険や、土砂災害特約が付帯された火災保険など、その物件に適した保険を選択することで、経済的なリスクを軽減することができます。保険の選択にあたっては、補償内容を十分に確認し、必要に応じて専門家に相談することをお勧めします。

よくある質問(Q&A)

急傾斜地崩壊危険区域に関して、多くの方から寄せられる質問とその回答をまとめました。土地の購入や建築を検討されている方、すでに居住されている方に役立つ情報を掲載しています。

土地購入・建築前の疑問

Q:急傾斜地崩壊危険区域かどうかの確認方法を教えてください。

A:お住まいの市区町村の都市計画課や建築指導課で確認することができます。多くの自治体では、ウェブサイト上でハザードマップを公開しており、そこでも確認可能です。また、不動産購入時には重要事項説明書に記載されているため、そちらでも確認できます。

Q:この区域内で住宅ローンは組めますか?

A:住宅ローンを組むことは可能です。ただし、金融機関によっては審査基準が厳しくなったり、追加の書類提出を求められたりする場合があります。また、必要な防災工事費用も含めた融資額の検討が必要です。

Q:建築にかかる追加費用の目安を教えてください。

A:地盤状況や斜面の状態により大きく異なりますが、一般的な住宅建築と比べて、擁壁工事や排水設備の設置などで20~30%程度の追加費用が必要になることが多いです。詳細な地盤調査の結果に基づいて、具体的な費用を算出する必要があります。

建築・改修に関する疑問

Q:既存の建物の建て替えは可能ですか?

A:建て替えは可能です。ただし、都道府県知事の許可が必要となり、現行の法規制に適合した設計・工事が求められます。既存建物と同じ規模・構造であっても、新たな基準に従う必要があります。

Q:増築や改築の制限について教えてください。

A:増築や改築も可能ですが、都道府県知事の許可が必要です。建物の規模や構造により制限が設けられており、斜面の安定性に影響を与えない範囲での工事が求められます。事前に行政に相談することをお勧めします。

日常生活に関する疑問

Q:庭の手入れや植栽は自由にできますか?

A:土地の形質を変更する行為は制限されています。植木の植え替えなど、軽微な作業は可能ですが、大規模な植栽や地面を掘り起こす作業には許可が必要です。特に、斜面の安定性に影響を与える可能性のある作業は慎重に検討する必要があります。

Q:大雨の際の避難の目安を教えてください。

A:気象庁から土砂災害警戒情報が発表された場合や、市区町村から避難勧告が出された場合は、速やかに避難してください。また、普段から雨量計や気象情報に注意を払い、異常を感じた場合は自主的な判断で早めに避難することが重要です。

行政支援に関する疑問

Q:擁壁の補修や防災工事に対する補助金はありますか?

A:自治体によって支援制度が異なりますが、多くの場合、一定の条件を満たせば工事費用の一部補助を受けることができます。また、災害防止工事を行う場合、固定資産税の減免措置を受けられる場合もあります。具体的な支援内容は、お住まいの自治体にお問い合わせください。

Q:定期点検は誰が行うのですか?

A:基本的に土地所有者が日常的な点検を行う必要があります。ただし、行政による定期的な巡視も実施されており、危険な状況が確認された場合は、改善指導が行われます。また、専門家による点検を依頼することもお勧めです。

まとめ

急傾斜地崩壊危険区域での建築には、安全性の確保と法規制への対応が不可欠です。建築を検討する際は、必ず事前に行政や専門家に相談し、必要な対策と費用を十分に検討することが重要です。また、災害時の避難計画も含めて、長期的な視点での安全対策を考える必要があります。

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記事監修者

1級ファイナンシャル・プランニング技能士 / 渡辺 知光

大学卒業後、積水化学工業に入社し住宅「セキスイハイム」を販売。3年8カ月千葉県内で営業に従事し、営業表彰を6期連続受賞。
途中、母の急死に直面し、自分の将来について悩み始める。結果、大学のゼミで学んだ「保険」事業に実際に携わりたいと思いFP資格を取得して日本生命に転職。4年間営業に従事したが、顧客に対して提供出来る商品がなく退職を決意。FP兼保険代理店を開業する。

収入も顧客もゼロからのスタート。しかも独立直前に結婚し住宅購入した為、返済不安に陥り貯蓄が日々減っていく恐怖を覚える。

人生で初めて家計の見直しを行い、根本的な改善により失敗と不安を減らすコツを発見。自分の経験を生かしお客様が同じ道を歩まないよう伝えるべく「マイホーム検討者向けFP」として活動中。

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    :有限会社ティーエムライフデザイン総合研究所

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    :渡辺知光

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