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旧耐震の中古マンションでのリスクや住む場合のマンションの選び方

家づくりの基本

2025/01/06

2025/01/06

記事監修者

1級ファイナンシャル・プランニング技能士 / 渡辺 知光

旧耐震の中古マンションでのリスクや住む場合のマンションの選び方

1981年(昭和56年)以前に建てられた旧耐震基準の中古マンションは、価格が比較的安価で広さもある一方で、耐震性能に不安があります。本記事では、旧耐震マンションのリスクや注意点、選び方のポイントについて詳しく解説します。

「新耐震」と「旧耐震」について

1981年(昭和56年)6月の建築基準法改正により、建築物の耐震基準は大きく変更されました。この改正を境に、それ以前の基準で建てられた建物を「旧耐震」、それ以降の基準で建てられた建物を「新耐震」と呼んでいます。

旧耐震基準の特徴

1981年以前の旧耐震基準では、建物に対して中規模地震(震度5程度)に対する損傷防止と、大規模地震(震度6程度)に対する倒壊防止という2段階の基準が設けられていました。しかし、1978年の宮城県沖地震での建物被害を受けて、この基準では不十分であることが明らかになりました。

新耐震基準の特徴

新耐震基準では、建物の耐震性能が大幅に引き上げられ、以下の2つの基準を満たすことが求められるようになりました。

1. 中規模地震(震度5程度)に対して、建物に損傷が生じないこと

2. 大規模地震(震度6強から7程度)に対して、建物が倒壊・崩壊せず、人命に危害が及ばないこと

新旧基準の主な違い

1. 必要耐力の基準:新耐震では、建物に必要な耐力が旧耐震の約1.5倍から2倍に引き上げられました。

2. 設計方法:新耐震では、建物の変形量を考慮した設計が導入され、より実際の地震時の挙動に近い検討が可能になりました。

3. 構造計算:新耐震では、より詳細な構造計算が必要となり、特に高層建築物に対する要求が厳格化されました。

新耐震基準の検証実績

1995年の阪神・淡路大震災や2011年の東日本大震災などの大地震において、新耐震基準で建てられた建物の多くは倒壊を免れました。一方、旧耐震基準の建物では大きな被害が発生したケースが多く見られ、新耐震基準の有効性が実証されています。

現在の課題

現在も日本全国には旧耐震基準で建てられた建物が多数存在しています。特に、分譲マンションでは、区分所有者全員の合意が必要となる耐震改修が進みにくい状況があり、これが大きな社会問題となっています。

専門家による見解

建築の専門家からは、旧耐震基準の建物であっても、定期的な点検や適切な補強工事により、一定の耐震性能を確保できるとの見解が示されています。ただし、建物の状態は個々に異なるため、専門家による個別の耐震診断が推奨されています。

「旧耐震」の中古マンションでのリスク・注意点

旧耐震基準の中古マンションを検討する際には、様々なリスクや注意点があります。これらを理解することは、購入や居住の判断において非常に重要です。以下、主要なリスクと注意点について詳しく解説します。

構造上のリスク

旧耐震マンションの最も重要な課題は、構造面での耐震性能です。具体的には以下のようなリスクが存在します。

1. 大地震時の倒壊リスク:現行の耐震基準を満たしていない可能性が高く、大地震時に深刻な損傷や最悪の場合は倒壊の危険性があります。

2. 構造躯体の経年劣化:建設から40年以上が経過している建物も多く、コンクリートの中性化や鉄筋の腐食といった構造躯体の劣化が進行している可能性があります。

3. 耐震補強の困難さ:既存の建物構造上、十分な耐震補強が技術的に難しい、あるいは費用対効果が低いケースがあります。

経済的リスク

1. 資産価値の低下:築年数の経過とともに資産価値が低下し続け、将来的な売却時に大きな損失を被る可能性があります。

2. 高額な修繕費用:老朽化に伴う大規模修繕や設備更新に多額の費用が必要となり、修繕積立金の値上げや追加の費用負担が発生する可能性が高くなっています。

3. 耐震改修費用:耐震改修を実施する場合、一戸あたり数百万円規模の費用負担が必要となることがあります。

金融面でのリスク

1. 住宅ローンの制限:金融機関によっては築年数や耐震性能を理由に、融資を制限したり、金利が上乗せされたりする場合があります。

2. 火災保険の制約:築年数が古いことにより、火災保険の保険料が割高になったり、加入できる保険の種類が制限される可能性があります。

居住性に関する注意点

1. 設備の老朽化:配管、電気設備、エレベーターなどの設備が旧式で、故障や不具合のリスクが高くなっています。

2. 間取りの制約:当時の生活様式に合わせて設計されているため、現代の生活スタイルには適さない場合があります。

3. 断熱性能の不足:断熱基準が現在より緩かったため、冷暖房効率が悪く、結露などの問題が発生しやすい傾向があります。

管理面での注意点

1. 管理組合の高齢化:居住者の高齢化により、管理組合の運営が難しくなっているケースが多く見られます。

2. 合意形成の困難さ:大規模修繕や建替えの検討時に、区分所有者間での合意形成が困難になりやすい傾向があります。

3. 空室率の上昇:築年数の経過とともに空室が増加し、管理組合の運営に支障をきたす可能性があります。

将来的なリスク

1. 建替えの困難さ:敷地や法規制の制約により、建替えが技術的または経済的に困難なケースが多くあります。

2. 維持管理費用の増加:建物の老朽化が進むにつれ、修繕や管理にかかる費用が増加していく傾向があります。

3. 居住者の減少:若い世代の入居が減少し、コミュニティの維持が困難になる可能性があります。

マンションの耐震改修工事の実施状況

旧耐震基準のマンションにおける耐震改修工事の実施状況は、様々な課題により進捗が遅れているのが現状です。以下、詳細な状況と課題について解説します。

耐震改修の現状

国土交通省の調査によると、旧耐震基準の分譲マンションの耐震化率は約75%程度にとどまっています。特に、高経年マンションほど耐震改修工事の実施率が低い傾向にあります。

耐震診断の実施状況

耐震診断の実施率は約30%程度で、その中でも耐震性が不足していると判定されたマンションの多くが、改修工事までは進んでいない状況です。耐震診断自体の実施を見送っているマンションも依然として多く存在しています。

耐震改修工事が進まない主な理由

1. 費用面での課題:一戸あたり数百万円規模の費用負担が必要となり、区分所有者の合意形成が困難です。

2. 合意形成の難しさ:区分所有者全員の同意が必要なケースも多く、高齢化や賃貸化により合意形成が一層困難になっています。

3. 工事の複雑さ:居住しながらの工事となるため、工期が長期化し、生活への影響が大きくなります。

4. 情報不足:耐震改修の必要性や補助制度についての理解が不足している場合があります。

耐震改修工事の種類と特徴

1. 枠付き鉄骨ブレース工法:外壁に補強用の鉄骨を設置する一般的な工法です。

2. 耐震壁増設工法:既存の壁を補強または新設する工法です。

3. 免震レトロフィット工法:建物を持ち上げて免震装置を設置する工法です。

4. 柱補強工法:既存の柱を補強材で覆う工法です。

支援制度の活用状況

1. 耐震診断補助:自治体により診断費用の50~100%が補助されるケースがあります。

2. 耐震改修補助:工事費用の一部(通常23%程度まで)が補助される制度があります。

3. 税制優遇:耐震改修工事を実施した場合の固定資産税の減額措置があります。

今後の課題と展望

1. 管理組合の取り組み強化:長期修繕計画への組み込みと資金計画の見直しが必要です。

2. 情報提供の充実:耐震改修の必要性や具体的な方法についての周知が重要です。

3. 支援制度の拡充:より手厚い補助金制度や融資制度の整備が求められています。

4. 技術開発:より低コストで効果的な耐震改修工法の開発が進められています。

改修事例の特徴

1. 成功事例の特徴:早期からの計画的な取り組み、十分な合意形成期間の確保、適切な情報提供が挙げられます。

2. 工事期間:一般的に6ヶ月から1年程度かかることが多く、規模や工法により変動します。

3. 費用感:一般的な規模のマンションで、総額1億円以上かかるケースも多く見られます。

旧耐震の中古マンションに住む場合の選び方のポイント

旧耐震の中古マンションを選ぶ際には、安全性、経済性、居住性など、多角的な視点からの検討が必要です。物件選びにおける重要なポイントについて、詳しく解説していきます。

構造・建物の状態確認

建物の基本性能を確認することが最も重要な要素となります。まず確認すべきは耐震診断の実施状況とその結果です。耐震診断でのIs値(構造耐震指標)は0.6以上あることが望ましく、これを下回る場合は注意が必要です。建物の構造形式も重要な判断材料となり、特に壁式構造は比較的耐震性が高いとされています。また、過去の修繕履歴を確認し、大規模修繕が適切な時期に実施されているかを確認することも重要です。コンクリートの中性化調査結果からは、建物の今後の劣化リスクを判断することができます。

管理状況の確認

管理組合の運営状況は、建物の将来性を大きく左右する要素です。理事会の開催頻度や総会の議事録内容から、管理組合の活動状況を把握することができます。修繕積立金については、その積立額の適切性や今後の値上げ予定の有無を確認する必要があります。また、マンション全体の空室率と賃貸化率も重要な指標となります。過度な賃貸化は管理に支障をきたす可能性があるためです。長期修繕計画の内容からは、将来の修繕計画と費用の見通しを立てることができます。

立地条件の評価

将来的な資産価値に影響する立地条件の評価も重要です。地盤の状況については、液状化の危険性や地歴、ハザードマップなどを確認します。交通利便性として、駅からの距離やバス路線の有無を確認し、生活利便施設についてはスーパー、病院、学校などへのアクセスを評価します。また、周辺の再開発計画の有無は、エリアの将来性を判断する重要な材料となります。

設備の状態確認

日常生活に直結する設備の状況確認も欠かせません。特に重要なのは配管の更新状況で、給排水管の取り替え履歴を詳しく確認する必要があります。エレベーターの運行状況や、電気容量が現代の生活に対応できているかどうかも重要なポイントです。また、スプリンクラーや非常用発電機といった防災設備の有無も確認が必要です。

経済性の検討

将来的な費用負担を含めた経済評価も慎重に行う必要があります。購入価格については、同エリアの新耐震物件との比較を行い、その適正性を判断します。管理費や修繕積立金の水準は、将来の値上げリスクを考慮に入れて評価します。また、今後予定されている修繕工事の内容と費用について、少なくとも10年程度の見通しを立てることが重要です。住宅ローンについては、金融機関の融資姿勢を事前に確認しておくことをお勧めします。

専門家への相談

物件選びにおいては、各分野の専門家への相談が推奨されます。建築士には建物の構造や劣化状況の評価を依頼し、マンション管理士には管理状況の評価を求めます。不動産鑑定士からは価格の適正性について意見を求め、必要に応じて弁護士に法的リスクの確認を依頼することも検討します。これらの専門家の意見を総合的に判断することで、より安全な物件選びが可能となります。

居住者コミュニティの確認

マンションでの生活の質を左右する重要な要素として、居住者コミュニティの状況があります。居住者の年齢構成や若い世代の入居状況、自治会活動などのコミュニティ活動の有無を確認します。また、過去の住民間のトラブル履歴や、防災訓練の実施状況なども、コミュニティの質を判断する上で重要な情報となります。

以上のような多角的な視点からの検討を行うことで、旧耐震マンションであっても、より安全で快適な住まいを選択することが可能となります。ただし、これらの確認事項は一般的な指針であり、実際の物件選びにおいては、個々の状況や優先順位に応じて、さらに詳細な検討が必要となる場合もあります。

よくある質問(Q&A)

旧耐震マンションについて、購入検討者や所有者からよく寄せられる質問とその回答をまとめました。

耐震性に関する質問

Q: 旧耐震マンションは必ず危険なのでしょうか?

A: すべての旧耐震マンションが危険というわけではありません。定期的なメンテナンスや適切な補強工事が実施されているマンションであれば、一定の安全性は確保されています。ただし、耐震診断を実施し、必要に応じて補強工事を検討することが推奨されます。建物の状態は個別に異なるため、専門家による調査・診断が重要です。

Q: 耐震診断の結果、どの程度の数値なら安全といえますか?

A: 一般的に、Is値(構造耐震指標)が0.6以上あれば、現行の耐震基準を満たしているとされます。ただし、これは最低限の基準であり、より高い値であることが望ましいとされています。また、建物の形状や立地条件によっても必要な耐震性能は異なってきます。

費用に関する質問

Q: 耐震改修工事の費用はどのくらいかかりますか?

A: マンションの規模や工事内容により大きく異なりますが、一般的に一戸あたり数百万円程度の費用が必要となることが多いです。ただし、自治体による補助金制度や税制優遇措置を利用できる場合もあります。工事費用は管理組合で負担することになり、修繕積立金からの支出や一時金の徴収などが検討されます。

Q: 旧耐震マンションの維持費は新耐震のものと比べて高くなりますか?

A: 一般的に築年数が古いため、設備の修繕や更新の頻度が高くなり、維持費が増加する傾向にあります。特に、配管の更新や大規模修繕工事などで想定以上の費用が必要となるケースもあります。長期的な維持管理計画と費用の見通しを立てることが重要です。

売買・ローンに関する質問

Q: 旧耐震マンションでも住宅ローンは組めますか?

A: 金融機関によって審査基準は異なりますが、築年数や耐震性能によってローンが制限される、または金利が高くなる可能性があります。特に築40年以上の物件では、融資を受けづらい場合があります。事前に複数の金融機関に相談することをお勧めします。

Q: 将来、売却は可能でしょうか?

A: 売却は可能ですが、築年数の経過とともに売却価格は低下する傾向にあります。ただし、立地条件が良好で適切な維持管理が行われている物件であれば、一定の需要は見込めます。将来の売却を考える場合は、管理状態の維持と適切な修繕の実施が重要となります。

管理・修繕に関する質問

Q: 大規模修繕工事はどのくらいの頻度で必要ですか?

A: 一般的に12~15年周期で大規模修繕工事が必要とされています。ただし、旧耐震マンションの場合、建物の状態や劣化状況によってはより短い周期での工事が必要となる場合があります。長期修繕計画に基づいて、計画的に工事を実施することが重要です。

Q: 管理組合の高齢化が進んでいますが、問題はありますか?

A: 管理組合の高齢化は、意思決定の遅延や管理業務の担い手不足などの問題を引き起こす可能性があります。特に大規模修繕や耐震改修などの重要な判断が必要な場合、合意形成が困難になることがあります。若い世代の居住者の参加を促すなど、管理組合の活性化に向けた取り組みが重要です。

建替えに関する質問

Q: 建替えは可能ですか?費用はどのくらいかかりますか?

A: 建替えは法律上可能ですが、区分所有者の5分の4以上の合意が必要です。費用は立地や規模によって大きく異なりますが、一般的に新築マンションの購入費用と同程度かそれ以上の費用が必要となります。また、仮住まい費用なども考慮する必要があります。

Q: マンションの寿命はどのくらいですか?

A: 適切な維持管理が行われていれば、コンクリート造のマンションは物理的には70~100年程度の寿命があるとされています。ただし、設備の老朽化や生活様式の変化、経済的な要因などにより、実際の建替え時期はこれより早くなることが多いのが現状です。

まとめ

旧耐震マンションは、価格面での魅力がある一方で、耐震性能や将来的な資産価値など、慎重に検討すべき課題も多くあります。購入を検討する際は、建物の状態や管理状況を十分に確認し、専門家のアドバイスを受けることをお勧めします。また、将来的な修繕や改修の可能性も考慮に入れた資金計画を立てることが重要です。

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記事監修者

1級ファイナンシャル・プランニング技能士 / 渡辺 知光

大学卒業後、積水化学工業に入社し住宅「セキスイハイム」を販売。3年8カ月千葉県内で営業に従事し、営業表彰を6期連続受賞。
途中、母の急死に直面し、自分の将来について悩み始める。結果、大学のゼミで学んだ「保険」事業に実際に携わりたいと思いFP資格を取得して日本生命に転職。4年間営業に従事したが、顧客に対して提供出来る商品がなく退職を決意。FP兼保険代理店を開業する。

収入も顧客もゼロからのスタート。しかも独立直前に結婚し住宅購入した為、返済不安に陥り貯蓄が日々減っていく恐怖を覚える。

人生で初めて家計の見直しを行い、根本的な改善により失敗と不安を減らすコツを発見。自分の経験を生かしお客様が同じ道を歩まないよう伝えるべく「マイホーム検討者向けFP」として活動中。

運営会社情報

  • 会社名

    :有限会社ティーエムライフデザイン総合研究所

  • 代表者

    :渡辺知光

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