用途地域の調べ方や13種類の特徴、建築制限について解説
家づくりの基本
2025/01/07
2025/01/07
都市計画において重要な役割を果たす用途地域について、その基本的な概念から具体的な調べ方まで、初心者にもわかりやすく解説します。不動産取引や建築計画の際に必要不可欠な知識として、13種類の用途地域の特徴や建築制限についても詳しく説明していきます。
用途地域とは
用途地域とは、都市計画法第8条および建築基準法第48条に基づいて定められる土地利用の計画的なルールです。都市の秩序ある発展と、良好な住環境の保護を目的とした制度です。
用途地域の目的と意義
用途地域制度は、無秩序な都市開発を防ぎ、地域ごとに適切な土地利用を実現するために設けられています。住宅、商店、工場などの建築物を適切に配置することで、住環境の保護、商業の利便性確保、工業の効率的な生産活動の実現を図ります。
用途地域で定められる主な規制内容
用途地域では主に以下の4つの要素が規制されています。これらの規制により、地域の特性に応じた建築物の制限が行われています。
1.建築物の用途制限
その地域で建てることができる建物の種類が定められています。例えば、住居専用地域では住宅が中心で、大規模な店舗や工場は建てられません。一方、商業地域では様々な商業施設の建築が可能です。
2.建ぺい率の制限
建ぺい率とは、敷地面積に対する建築面積の割合の上限を定めたものです。地域によって30%から80%の範囲で設定されており、ゆとりある市街地の形成に寄与しています。
3.容積率の制限
容積率は、敷地面積に対する延べ床面積の割合の上限を定めたものです。50%から1300%の範囲で設定され、建物の密度をコントロールする役割を果たしています。
4.高さ制限
建築物の高さの最高限度が定められており、特に住居系地域では、日照や通風、景観への配慮から、厳しい制限が設けられています。
用途地域と他の都市計画との関係
用途地域は、都市計画の根幹をなす制度ですが、これだけでなく、以下のような他の規制や計画と組み合わせて運用されています。
・特別用途地区:用途地域の規制を強化または緩和する制度
・高度地区:建築物の高さの最高限度または最低限度を定める地区
・防火地域・準防火地域:市街地における火災の危険を防除する地域
・景観地区:良好な景観の形成を図る地区
用途地域の重要性
用途地域制度は以下の3つの観点から、現代の都市計画において重要な役割を果たしています。
1. 生活環境の保護:住宅地における静けさや日照を確保し、快適な生活環境を守ります。
2. 経済活動の活性化:商業・工業活動に適した環境を整備し、効率的な経済活動を支援します。
3. 持続可能な都市づくり:計画的な土地利用により、環境負荷の少ない持続可能な都市の実現に貢献します。
用途地域の種類
用途地域は、住居系、商業系、工業系の3つに大きく分類され、合計13種類が定められています。それぞれの地域特性や目的に応じて、適切な土地利用を実現するための規制が設けられています。
住居系用途地域(8種類)
第一種低層住居専用地域 閑静な住宅地を守るための地域です。主に低層住宅(2階建てまで)に限定され、小規模な店舗や事務所は原則として建築できません。建ぺい率30~60%、容積率50~150%と、最も厳しい建築制限が課されています。
第二種低層住居専用地域 第一種と同様に低層住宅地を主体としますが、小規模な店舗や事務所の建築が可能です。建ぺい率・容積率は第一種と同様です。
第一種中高層住居専用地域 中高層住宅(主にマンション)に適した環境を守る地域です。病院、大学などの公共施設の建築も可能です。建ぺい率30~60%、容積率100~300%となっています。
第二種中高層住居専用地域 第一種に比べて、事務所やより大きな店舗の建築が認められています。建ぺい率・容積率は第一種と同様です。
第一種住居地域 住居の環境を守るための地域ですが、小規模な店舗や事務所の建築も可能です。建ぺい率60%、容積率200~300%となっています。
第二種住居地域 主に住居の環境を守るための地域ですが、車庫や小規模な工場なども建築可能です。建ぺい率60%、容積率200~300%です。
準住居地域 道路の沿道において、自動車関連施設等と住宅が共存している地域です。建ぺい率60%、容積率200~300%です。
田園住居地域 農業と調和した低層住宅に係る良好な住居の環境を保護するための地域です。建ぺい率60%、容積率200%となっています。
商業系用途地域(2種類)
近隣商業地域 近隣の住宅地の住民のための店舗、事務所等の利便性を確保する地域です。建ぺい率80%、容積率200~300%と、比較的緩やかな制限となっています。
商業地域 銀行、大規模店舗、事務所など商業等の業務の利便性を確保する地域です。建ぺい率80%、容積率400~1300%と、最も制限が緩やかです。
工業系用途地域(3種類)
準工業地域 主に軽工業の工場やサービス施設等が立地する地域です。住宅や店舗も建てることができます。建ぺい率60%、容積率200~300%です。
工業地域 主に工場等が立地する地域です。どんな工場でも建てられますが、住宅や店舗の建築は制限されます。建ぺい率60%、容積率200%です。
工業専用地域 工場のための地域です。住宅、店舗、学校、病院など工場以外の建築物は原則として建てられません。建ぺい率60%、容積率200%となっています。
用途地域選定の基準
用途地域の指定には、以下の要素が考慮されます。
1. 地域の現状と将来の見通し
2. 道路、公園などの都市基盤施設の整備状況
3. 周辺地域との関係性
4. 地域の防災性・安全性
5. 自然環境との調和
用途地域全13種類の特徴と建築制限
各用途地域における建築制限は、建物の用途、規模、構造などについて詳細に定められています。以下、13種類の用途地域それぞれについて、主な建築制限と特徴を解説します。
住居系用途地域の建築制限
1.第一種低層住居専用地域
建ぺい率:30~60%
容積率:50~150%
高さ制限:10m or 12m
主な建築可能建物:
・一戸建て住宅
・小規模な兼用住宅(延べ面積の1/2以下かつ50㎡以下)
・幼稚園、小学校
建築不可建物:
・店舗、事務所
・マンション
・ホテル、旅館
2.第二種低層住居専用地域
建ぺい率:30~60%
容積率:50~150%
高さ制限:10m or 12m
主な建築可能建物:
・第一種の建築可能建物
・小規模な店舗、事務所(150㎡以下)
・診療所
建築不可建物:
・マンション
・大規模な店舗
・ホテル、旅館
3.第一種中高層住居専用地域
建ぺい率:30~60%
容積率:100~300%
主な建築可能建物:
・中高層住宅
・病院
・大学、専修学校
・500㎡以下の店舗、事務所
建築不可建物:
・大規模な店舗
・工場
・ホテル、旅館
4.第二種中高層住居専用地域
建ぺい率:30~60%
容積率:100~300%
主な建築可能建物:
・第一種中高層の建築可能建物
・1,500㎡以下の店舗、事務所
・ホテル、旅館
建築不可建物:
・大規模な工場
・倉庫業倉庫
5.第一種住居地域
建ぺい率:60%
容積率:200~300%
主な建築可能建物:
・住宅全般
・3,000㎡以下の店舗、事務所
・ホテル、旅館
建築不可建物:
・大規模な工場
・倉庫業倉庫
・キャバレー、パチンコ店
6.第二種住居地域
建ぺい率:60%
容積率:200~300%
主な建築可能建物:
・第一種住居の建築可能建物
・10,000㎡以下の店舗、事務所
・カラオケボックス
建築不可建物:
・大規模な工場
・危険性の大きい工場
7.準住居地域
建ぺい率:60%
容積率:200~300%
主な建築可能建物:
・第二種住居の建築可能建物
・自動車修理工場
・小規模な工場
建築不可建物:
・危険性の大きい工場
・大規模な工場
8.田園住居地域
建ぺい率:60%
容積率:200%
主な建築可能建物:
・一戸建て住宅
・農産物直売所
・農業用施設
建築不可建物:
・大規模な店舗
・工場
・マンション
商業系用途地域の建築制限
9.近隣商業地域
建ぺい率:80%
容積率:200~300%
主な建築可能建物:
・店舗、事務所
・住宅 ・ホテル、旅館
建築不可建物:
・危険性の大きい工場
・大規模な倉庫
10.商業地域
建ぺい率:80%
容積率:400~1300%
主な建築可能建物:
・ほぼすべての用途
建築不可建物:
・危険性の大きい工場
工業系用途地域の建築制限
11.準工業地域
建ぺい率:60%
容積率:200~300%
主な建築可能建物:
・工場
・事務所、店舗
・住宅
建築不可建物:
・危険性の大きい工場
12.工業地域
建ぺい率:60%
容積率:200%
主な建築可能建物:
・ほとんどの工場
・事務所
・倉庫
建築不可建物:
・学校
・病院
・新規の住宅
13.工業専用地域
建ぺい率:60%
容積率:200%
主な建築可能建物:
・工場
・倉庫
・事務所(工場付属)
建築不可建物:
・住宅
・店舗 ・
学校、病院
その他の重要な建築制限
1. 防火制限
・防火地域、準防火地域における建築物の構造制限
・延焼防止のための壁面後退
2. 日影規制
・中高層建築物による日照阻害の防止
・地域ごとの規制時間と測定位置
3. 斜線制限
・道路斜線、隣地斜線、北側斜線による高さ制限
・天空率による緩和措置
4. 最低敷地面積
・住居系地域における良好な住環境確保のための規制
用途地域の調べ方
用途地域を調べる方法は、大きくオンラインと対面での確認方法に分かれています。それぞれの特徴を活かして、目的に応じた最適な確認方法を選択することが重要です。
オンラインでの確認方法
近年、インターネットを利用した用途地域の確認方法が一般的になってきています。多くの自治体が独自の地理情報システム(GIS)を提供しており、ウェブブラウザ上で地図を操作しながら、該当地域の用途地域を確認することができます。これらのシステムでは、用途地域だけでなく、建ぺい率や容積率などの都市計画に関する情報も併せて確認することが可能です。
また、国土交通省が運営する「国土数値情報ダウンロードサービス」では、全国の用途地域データを入手することができます。このデータは定期的に更新され、信頼性の高い情報源として知られています。不動産情報サイトでも物件情報と共に用途地域が表示されることが多いですが、これらは参考情報として捉え、正式な確認は他の方法と組み合わせることが推奨されます。
対面での確認方法
市区町村の都市計画課での確認は、最も確実な方法の一つです。都市計画図の閲覧が可能で、専門の職員に直接相談することもできます。特に建築確認申請などで必要となる証明書の発行も、ここで行うことができます。物件の住所や地番がわかれば、正確な用途地域を確認することが可能です。
不動産取引の際には、不動産業者を通じて確認することも一般的です。重要事項説明書には用途地域が記載されており、周辺環境や具体的な規制についても詳しい情報を得ることができます。また、法務局では登記簿謄本や公図で地番を確認し、都市計画図と照合することで、正確な用途地域を特定することができます。
確認時の注意点
用途地域の確認を行う際は、いくつかの重要な点に注意を払う必要があります。まず、用途地域は都市計画の変更により変更される可能性があるため、常に最新の情報を確認することが重要です。また、用途地域以外にも地区計画や建築協定、高度地区、防火地域などの規制が存在する場合があり、これらを総合的に確認する必要があります。
特に用途地域の境界部分に位置する土地の場合は、複数の用途地域が重なる可能性があるため、より慎重な確認が必要となります。建築確認申請などの公的な手続きが必要な場合は、必ず公的な証明書を取得することが推奨されます。
調査のタイミング
用途地域の確認は、土地や建物の購入を検討する際はもちろん、建築や改築の計画時、事業用途での使用を検討する際、賃貸借契約を締結する前、不動産投資を検討する際など、様々なタイミングで必要となります。特に重要な意思決定を行う前には、必ず用途地域を確認し、計画している用途が実現可能かどうかを確認することが重要です。
なお、これらの調査方法は一般的なものであり、実際の確認方法は自治体によって異なる場合があります。不明な点がある場合は、該当する自治体の都市計画課に問い合わせるか、建築士などの専門家に相談することをお勧めします。
用途地域に関するよくある質問(Q&A)
用途地域について、一般的によく寄せられる質問とその回答をまとめました。
基本的な質問
Q:用途地域の確認はどこでできますか?
A:用途地域は主に以下の方法で確認できます。各市区町村の都市計画課での直接確認、自治体が提供する地理情報システム(GIS)でのオンライン確認、不動産業者への照会などが一般的です。特に正確な情報が必要な場合は、都市計画課で証明書を取得することをお勧めします。
Q:用途地域は変更されることがありますか?
A:はい、変更されることがあります。都市の発展や地域の特性の変化に応じて、定期的に見直しが行われます。変更する場合は、都市計画法に基づく手続きが必要で、住民への説明会や公聴会なども開催されます。特に長期的な土地活用を考える場合は、将来的な用途地域の変更可能性も考慮に入れる必要があります。
建築・開発に関する質問
Q:用途地域の規制に例外はありますか?
A:はい、一定の条件下で例外が認められることがあります。建築基準法第48条ただし書きによる許可や特例制度があり、公益上やむを得ない場合などに、規制が緩和されることがあります。ただし、これには厳格な審査と手続きが必要です。
Q:複数の用途地域にまたがる土地の場合はどうなりますか?
A:敷地が複数の用途地域にまたがる場合、原則として過半の属する用途地域の規制が適用されます。ただし、建築物の配置や用途によっては、それぞれの用途地域の規制に従う必要がある場合もあります。具体的な計画がある場合は、事前に建築指導課などに相談することをお勧めします。
土地利用に関する質問
Q:住居地域で店舗は開業できますか?
A:用途地域の種類と店舗の規模によって異なります。第一種低層住居専用地域では極めて制限が厳しく、小規模な兼用住宅程度しか認められません。一方、第一種住居地域では3,000㎡までの店舗が可能です。具体的な開業計画がある場合は、事前に自治体に相談することが重要です。
Q:建ぺい率・容積率の緩和は可能ですか?
A:一定の条件下で緩和が可能です。角地や防火地域内の耐火建築物、また敷地内に公開空地を設ける場合などに、緩和措置が適用されることがあります。ただし、緩和には明確な基準があり、審査が必要です。
不動産取引に関する質問
Q:購入予定の土地の用途地域が変更予定の場合、どうすべきですか?
A:用途地域の変更は土地の価値や利用可能性に大きく影響するため、変更の内容や時期について自治体に詳しく確認することが重要です。また、売買契約時には、この事実を考慮した条件を設定することも検討すべきです。
Q:違反建築物がある土地を購入する際の注意点は?
A:用途地域の規制に違反している建築物がある場合、将来的な是正命令や建て替え時の制限など、様々なリスクが考えられます。購入前に違反の内容を詳しく確認し、是正にかかる費用や時間も考慮に入れる必要があります。
将来の計画に関する質問
Q:用途地域の規制は永続的なものですか?
A:用途地域の規制は都市計画の一部として定められており、社会情勢や地域の発展に応じて変更される可能性があります。ただし、変更には法定の手続きが必要で、突然大きく変更されることは稀です。
Q:建築計画が用途地域の規制に適合するか不安です。どうすれば良いですか?
A:建築計画の初期段階で、建築士や不動産の専門家に相談することをお勧めします。また、自治体の建築指導課での事前相談制度を利用することで、計画の実現可能性や必要な手続きについて、具体的なアドバイスを得ることができます。
まとめ
用途地域制度は、計画的な街づくりを実現するための重要な仕組みです。土地の購入や建築計画を検討する際は、必ず用途地域を確認し、その制限を理解しておくことが重要です。各地域の特性を活かしながら、住環境と利便性のバランスのとれた都市発展を目指す制度として、今後も重要な役割を果たしていくでしょう。
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