第二種低層住居専用地域の基礎知識 〜建築制限や住宅プラン例について解説~
家づくりの基本
2024/07/25
2024/07/25
第二種低層住居専用地域は、都市計画法に基づいて定められた用途地域の一つです。この地域は、主に低層住宅の良好な環境を保護しつつ、小規模な店舗や事務所などの立地も許容する地域として設定されています。本記事では、第二種低層住居専用地域の特徴、建築可能な建物、建蔽率や容積率、その他の規制について詳しく解説します。土地の購入や建築を検討している方にとって、重要な情報となるでしょう。
目次
第二種低層住居専用地域の特徴は?
第二種低層住居専用地域は、主に低層の住宅や小規模な店舗、事務所などによって構成される地域です。この地域の主な特徴は以下の通りです。
・低層住宅を中心とした閑静な住宅地
・小規模な店舗や事務所の立地が可能
・建物の高さ制限がある(通常10mまたは12m)
・3階建て以上の中高層建築物の建設は制限される
第二種低層住居専用地域で建設可能な建物と建設不可な建物の代表例
建設可能な建物
・住宅(戸建て、長屋、共同住宅)
・小規模な店舗(床面積150㎡以下)
・小規模な事務所(床面積150㎡以下)
・幼稚園、小学校、中学校、高等学校
・図書館、公民館などの公共施設
・診療所
・巡査派出所、公衆電話所
・老人ホーム、保育所、身体障害者福祉ホームなどの福祉施設
・一定規模以下の農林漁業用建築物
建設不可な建物
・大規模な店舗(床面積150㎡超)
・大規模な事務所(床面積150㎡超)
・ホテルや旅館
・劇場、映画館、演芸場
・カラオケボックス、ボーリング場などの娯楽施設
・工場(一部の小規模なものを除く)
・倉庫業を営む倉庫
・自動車教習所
・麻雀屋、パチンコ屋などの風俗営業施設
・大学、専修学校、各種学校
・病院
・ガソリンスタンド
・自動車修理工場
・3階建て以上の中高層建築物(高さ制限を超えるもの)
これらの制限は一般的なものですが、具体的な規制は地域によって異なる場合があります。建築計画を立てる際は、必ず該当地域の詳細な規制を確認することが重要です。
第二種低層住居専用地域のメリット・デメリット
第二種低層住居専用地域には、住環境の保護と生活利便性の両立を図る上で、様々なメリットとデメリットがあります。以下に詳しく解説します。
メリット
1. 良好な住環境
・騒音や交通量が少なく、静かで落ち着いた生活が送れる。
・中高層建築物の建設が制限されるため、圧迫感の少ない街並みが形成される。
・緑地や庭のある住宅が多く、自然と調和した環境で暮らせる。
2. 日照・通風の確保
・建物の高さ制限により、十分な日照や通風が確保されやすい。
・北側斜線制限があるため、冬場でも日当たりが確保されやすい。
・省エネルギーの観点からも優れた環境と言える。
3. 生活利便性
・小規模な店舗や事務所(150㎡以下)の立地が可能なため、日常生活に必要な施設がある程度整っている。
・コンビニエンスストアや小規模な医院など、生活に密着したサービスを身近に利用できる。
4. 子育て環境
・交通量が少なく、安全な環境が維持されるため、子育て世帯に適している。
・公園や緑地が多く、子どもの遊び場が確保されやすい。
・幼稚園や小学校の立地が可能なため、教育施設へのアクセスが良好。
5. 資産価値の安定
・良好な住環境が保たれるため、不動産としての資産価値が比較的安定している。
・将来的な環境の大きな変化が少ないため、長期的な住宅計画を立てやすい。
デメリット
1. 建築の制限
・高さ制限や用途制限により、土地の有効活用が難しい場合がある。
・3階建て以上の建物が建てられないため、敷地を最大限に活用できない可能性がある。
・建蔽率や容積率が低く設定されているため、広い土地が必要となる。
2. 地価の高さ
・良好な住環境が評価され、地価が高くなる傾向がある。 ・初期投資が大きくなるため、住宅取得のハードルが高くなる可能性がある。
3. 大規模商業施設の不足:
・大型スーパーやショッピングモールなどの立地が制限される。
・日用品以外の買い物や娯楽施設の利用には、他の地域に出かける必要がある場合が多い。
4. 交通の利便性
・駅や主要道路から離れている場合が多く、公共交通機関の利用が不便な可能性がある。
・自動車依存度が高くなる傾向がある。
5. 開発の制限
・大規模な開発や再開発が制限されるため、地域の大きな変化や発展が見込みにくい。
・新しい産業や雇用の創出が難しい場合がある。
6. 多様性の不足
・住宅以外の用途が限られるため、地域の多様性や活気が乏しくなる可能性がある。
・若年層の流出や高齢化が進みやすい傾向がある。
これらのメリットとデメリットを十分に理解した上で、自身のライフスタイルや将来計画に合わせて住居選択を行うことが重要です。また、具体的な制限や規制は地域によって異なる場合があるため、実際に検討する際は該当地域の詳細な情報を確認することをおすすめします。
第二種低層住居専用地域の建物の建蔽率(建ぺい率)と容積率について
第二種低層住居専用地域の建蔽率と容積率は以下の通りです。
・建蔽率:40%、50%、60%のいずれか
・容積率:80%、100%、150%、200%のいずれか
具体的な数値は地域によって異なるため、該当地域の都市計画で確認する必要があります。
第二種低層住居専用地域の建物に関する規制・制限は?
第二種低層住居専用地域では、以下のような規制・制限があります。
・高さ制限:10mまたは12m(地域によって異なる)
・北側斜線制限:北側隣地境界線から一定の角度で引いた斜線以下に建物の高さを抑える
・日影規制:隣接する土地に落とす影の時間を制限
・外壁後退:建物の外壁を敷地境界線から一定距離後退させる必要がある場合がある
・敷地面積の最低限度:地域によって定められている場合がある
第二種低層住居専用地域に適している住居例
第二種低層住居専用地域の特性を活かした、適している住居例をいくつか詳しく紹介します。
庭付き一戸建て住宅
特徴
・2階建てまでの低層住宅
・広めの敷地に余裕のある庭を配置
・自然と調和したデザイン
具体例
・1階にLDK、水回り、和室を配置し、2階に寝室や子供部屋を設ける
・庭には家庭菜園スペースや子どもの遊び場を確保
・太陽光パネルや雨水利用システムなど、環境に配慮した設備を導入
二世帯住宅
特徴
・親世帯と子世帯が同じ敷地内で暮らす
・プライバシーを確保しつつ、世代間の交流も可能な設計
・将来的な介護にも対応しやすい構造
具体例
・1階を親世帯、2階を子世帯が使用する完全分離型
・共有のリビングや庭を中心に、それぞれの世帯の居住スペースを配置する部分共有型
・玄関やキッチンは別々に設け、必要に応じて行き来できる動線を確保
小規模店舗併用住宅
特徴
・1階の一部に150㎡以下の小規模店舗や事務所を併設
・住宅部分と店舗部分の動線を適切に分離
・周辺の住環境に配慮したデザイン
具体例
・1階前面に小さなカフェや雑貨店を配置し、奥や2階を住居として使用
・建築家や弁護士などの事務所兼用住宅
・趣味の教室(料理、音楽、絵画など)を開けるスペースを確保した住宅
コテージ風戸建て住宅
特徴
・自然素材を多用した温かみのあるデザイン
・勾配屋根や出窓など、特徴的な外観
・周囲の緑や景観と調和した佇まい
具体例
・木材を多用した外観と内装
・暖炉やウッドデッキを設置し、自然を感じられる空間づくり
・吹き抜けのあるリビングで開放感を演出
環境配慮型住宅
特徴
・高い省エネ性能と再生可能エネルギーの活用
・自然の光や風を最大限に利用する設計
・長寿命化を考慮した構造と材料選び
具体例
・パッシブデザインを採用し、自然の力を活かした空調システム
・高性能断熱材と複層ガラスを使用した高気密
・高断熱住宅
・屋上緑化や雨水利用システムを取り入れたエコ住宅
小規模な共同住宅
特徴
・2階建てまでの低層アパートやタウンハウス
・各戸に専用庭やバルコニーを確保
・共用スペースを活用したコミュニティ形成
具体例
・4〜6世帯程度の小規模アパート
・各戸が独立したエントランスを持つメゾネットタイプの住宅
・中庭を囲むように住戸を配置し、居住者同士の交流を促す設計
バリアフリー設計の平屋住宅
特徴
・高齢者や障害者にも住みやすいユニバーサルデザイン
・将来的な介護にも対応できる間取り
・段差のない動線と十分な開口部の確保
具体例
・玄関から居室、水回りまですべて段差のないフラットな設計
・車いすでも使いやすい広めの廊下と開口部
・緊急時に備えた通報システムや手すりの設置
これらの住居例は、第二種低層住居専用地域の特性である低層住宅中心の閑静な環境と、小規模な店舗や事務所の許容を考慮しています。実際の計画では、具体的な敷地条件や地域の規制、個々のライフスタイルに合わせて設計を行うことが重要です。また、周辺環境との調和や将来的な変化にも配慮した柔軟な設計を心がけることで、長期的に快適な住まいを実現できるでしょう。
よくある質問(Q&A)
第二種低層住居専用地域に関して、多くの人が抱く疑問についてQ&A形式で詳しく解説します。
Q1: 第二種低層住居専用地域で3階建ての住宅は建てられますか?
A1: 基本的に難しいですが、条件によっては可能な場合があります。
・高さ制限(通常10mまたは12m)を超えないこと
・北側斜線制限を遵守すること
・日影規制に違反しないこと
・地域の条例で追加の制限がないこと
階段室や塔屋部分のみ3階建てにするなど、工夫次第で可能な場合もあります。詳細は必ず地域の建築指導課に確認してください。
Q2: 第二種低層住居専用地域での建蔽率や容積率の緩和措置はありますか?
A2: 一定の条件下で緩和措置が適用される場合があります。
・角地の場合、建蔽率が10%緩和されることがある
・前面道路の幅員が12m以上の場合、容積率が緩和されることがある
・地区計画によって、より詳細な規制や緩和措置が定められている場合がある
具体的な緩和措置の適用については、各自治体の建築指導課に確認する必要があります。
Q3: 第二種低層住居専用地域で太陽光パネルの設置は可能ですか?
A3: 基本的に可能です。
・建物の屋根や壁面に設置する場合、高さ制限に抵触しないよう注意が必要
・地上設置型の大規模なソーラーパネル設備の場合、別途規制がある可能性があるので、自治体に確認が必要
・反射光による周辺への影響を考慮する必要がある
・景観条例による制限がある場合もあるので確認が必要
Q4: 第二種低層住居専用地域で店舗を開業することはできますか?
A4: はい、可能です。ただし、以下の条件を満たす必要があります。
・店舗の床面積が150㎡以下であること
・住宅と店舗が一体となった建物であること(いわゆる店舗併用住宅)
・騒音や悪臭を発生させるような業種でないこと
例えば、小さなカフェ、雑貨店、美容室、小規模な事務所などが該当します。
Q5: 第二種低層住居専用地域でアパートやマンションは建てられますか?
A5: 小規模なものであれば可能です。
・2階建てまでの低層のアパートやマンションは建設可能
・高さ制限(通常10mまたは12m)を超えないこと
・建蔽率、容積率の制限を守ること
・日影規制や北側斜線制限などの他の規制も遵守すること
大規模なマンションや中高層のアパートは建設できません。
Q6: 第二種低層住居専用地域で事務所は開設できますか?
A6: 小規模な事務所であれば開設可能です。
・事務所の床面積が150㎡以下であること
・住宅と事務所が一体となった建物であること
・周辺の住環境に悪影響を及ぼさないこと
例えば、建築設計事務所、会計事務所、小規模なIT企業のオフィスなどが該当します。
これらの質問と回答は、第二種低層住居専用地域に関する一般的な疑問に対応しています。ただし、具体的な状況によっては異なる場合もあるため、実際の計画を立てる際には、必ず地域の都市計画課や建築指導課に確認することをおすすめします。また、法律や条例は改正される可能性があるため、最新の情報を入手することが重要です。
まとめ
第二種低層住居専用地域は、低層住宅の良好な環境を保護しつつ、小規模な店舗や事務所の立地も許容する地域です。この地域では、主に低層の住宅や小規模な店舗などが建設可能ですが、大規模な商業施設や中高層建築物は制限されています。建蔽率は40%〜60%、容積率は80%〜200%に設定されており、建物の高さ制限や北側斜線制限などの各種規制も適用されます。
土地の購入や建築を検討する際は、これらの規制を十分に理解し、専門家に相談しながら計画を進めることが重要です。第二種低層住居専用地域の特性を活かし、静かで落ち着いた住環境と生活利便性のバランスがとれた快適な空間を実現することが、この地域での理想的な暮らし方と言えるでしょう。
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