断熱等級4・5・6・7の違いやおすすめの等級、省エネと快適性について徹底解説
家づくりの基本
2024/07/26
2024/07/26
近年、住宅の省エネ性能や快適性向上の観点から、断熱性能が注目されています。断熱等級は、住宅の断熱性能を評価する指標の一つですが、最新の基準では等級4から7まで設定されています。本記事では、各断熱等級の違いや、高断熱住宅を建てる際の注意点について詳しく解説します。
断熱等級の概要と最新の断熱等級
断熱等級とは?
断熱等級は、住宅の断熱性能を評価する指標の一つです。この等級は、住宅の外皮(壁、屋根、床、窓などの外気に接する部分)の断熱性能を数値化したものです。数字が大きいほど断熱性能が高いことを示します。
2022年10月の住宅性能表示制度の改正により、断熱等級の体系が大きく変更されました。以前は等級1から等級4までの4段階でしたが、最新の基準では等級4から等級7までの4段階となっています。
各等級の概要は以下の通りです。
・等級4:平成28年省エネ基準相当(従来の最高等級)
・等級5:等級4より約20%性能向上(ZEH基準相当)
・等級6:等級4より約30%性能向上
・等級7:等級4より約40%性能向上(パッシブハウス相当)
UA値・ηAC値とは?
断熱等級を決定する主な指標として、UA値とηAC値があります。
UA値(外皮平均熱貫流率)
・単位:W/(㎡・K)
・意味:住宅全体の熱の逃げやすさを表す指標
・特徴:値が小さいほど断熱性能が高い
ηAC値(冷房期の平均日射熱取得率)
・単位:なし(0〜1の値)
・意味:夏季に住宅内に入ってくる日射の量を表す指標
・特徴:値が小さいほど夏の暑さを防ぎやすい
これらの値は、地域ごとに基準が設定されており、断熱等級はこれらの値が基準を満たしているかどうかで決定されます。
省エネ等級との違いについて
断熱等級と省エネ等級は、しばしば混同されますが、評価の対象が異なります。
・断熱等級:建物の外皮性能のみを評価
・省エネ等級:断熱性能に加えて、設備機器(暖冷房、給湯、換気、照明)の性能も含めた総合的な省エネ性能を評価
つまり、断熱等級は住宅の「器」としての性能を評価するのに対し、省エネ等級はその「器」と「中身」の両方を評価すると言えます。
最新の省エネ基準では、省エネ等級も1から5まで設定されており、断熱等級とは別の基準で評価されています。ただし、高い断熱等級を達成することは、高い省エネ等級を得るための重要な要素の一つとなります。
断熱等級の向上は、住宅の基本性能を高める重要な要素です。高い断熱性能は、快適性の向上、省エネ効果、結露防止など、多くのメリットをもたらします。ただし、断熱性能を高めるだけでなく、適切な換気計画や日射制御など、総合的な住宅設計が重要であることを忘れてはいけません。
断熱等級を一覧で紹介! 断熱等級による違いは?
断熱等級4
断熱等級4は、2022年10月以前の最高等級で、平成28年省エネ基準相当の性能です。多くの新築住宅がこの水準を満たしています。一定レベルの快適性と省エネ性を実現。UA値の目安は0.87W/㎡K(東京などの6地域の場合)です。基本的な断熱性能を確保し、従来の住宅と比べて光熱費の削減が可能です。
断熱等級5
断熱等級5は、等級4よりも約20%断熱性能が向上しています。ZEH(ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス)の断熱基準に相当します。UA値の目安は0.60W/㎡K(6地域の場合)です。快適性が大幅に向上し、光熱費のさらなる削減が可能です。また、ZEH関連の補助金を受けられる可能性があります。
断熱等級6
断熱等級6は、等級4よりも約30%断熱性能が向上しています。北欧並みの高い断熱性能を持ち、UA値の目安は0.50W/㎡K(6地域の場合)です。冬季の暖房負荷が大幅に削減され、室内温度のムラが少なく、非常に快適です。結露のリスクがさらに低減されます。
断熱等級7
断熱等級7は、最高等級で等級4よりも約40%断熱性能が向上しています。パッシブハウスレベルの超高断熱住宅に相当し、UA値の目安は0.40W/㎡K(6地域の場合)です。極めて高い快適性と省エネ性を実現し、暖房設備をほとんど使わずに冬を過ごせる可能性があります。将来の省エネ基準強化にも十分対応できます。
断熱等級が上がるにつれて、室内温度の安定性向上、エネルギー消費量の減少、結露リスクの低下、ヒートショックリスクの低減、住宅の耐久性向上などが期待できます。ただし、断熱等級を上げるほど初期コストは上昇します。そのため、地域の気候条件、ライフスタイル、予算などを総合的に考慮して、最適な断熱等級を選択することが重要です。
断熱等級を高くするメリット
快適な室温を保ちやすくなる
高い断熱性能により、室内温度が安定し、冷暖房効率が向上します。冬は暖かく、夏は涼しい室内環境を維持しやすくなります。また、部屋ごとの温度差も小さくなり、家全体で均一な快適性を得られます。
ヒートショックリスクを低減する
部屋間の温度差が小さくなることで、ヒートショックのリスクが大幅に低減します。特に、浴室や脱衣所など温度変化の大きい場所での危険性が減少し、高齢者や体調の優れない方にとって安全な住環境を実現できます。
光熱費を抑えられる
冷暖房効率が向上するため、長期的には光熱費の削減につながります。高断熱住宅では、冷暖房の使用頻度や強度が下がり、年間のエネルギー消費量を20〜30%程度削減できるケースも多くあります。この削減効果は、エネルギー価格の上昇に対するリスクヘッジにもなります。
補助金、ローン金利やローン控除の優遇がある
高断熱住宅には、様々な経済的優遇措置が適用される可能性があります。例えば、ZEH(ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス)基準を満たす住宅では、国や地方自治体からの補助金を受けられる場合があります。また、一部の金融機関では、高断熱住宅向けの低金利住宅ローンを提供しています。さらに、長期優良住宅認定を受けることで、住宅ローン減税の優遇措置を受けられる可能性もあります。
その他のメリットとしては、結露の防止による建物の耐久性向上、外部騒音の低減、空気質の向上などが挙げられます。これらの複合的なメリットにより、高断熱住宅は長期的な視点で見ると、快適性、経済性、健康面で大きな利点をもたらします。
これから家を建てるときにおすすめの断熱等級は?
将来的な省エネ基準の強化を考慮すると、少なくとも断熱等級5(ZEH基準)以上を目指すことをおすすめします。以下に、具体的な理由と考慮すべきポイントを説明します。
1. 断熱等級5(ZEH基準相当)
– 現時点での高性能住宅の標準的な水準です。
– 快適性と省エネ性のバランスが良好です。
– ZEH関連の補助金を受けられる可能性があります。
– 将来の省エネ基準強化にもある程度対応できます。
2. 断熱等級6
– より高い快適性と省エネ性を実現できます。
– 北欧並みの高断熱性能で、厳しい寒さにも対応可能です。
– 将来の基準強化にも十分対応できる可能性が高いです。
3. 断熱等級7
– 最高レベルの快適性と省エネ性を実現します。
– パッシブハウス相当の性能で、極めて少ないエネルギーで生活できます。
– 将来の基準強化にも確実に対応できます。
選択の際は、以下の点を考慮することが重要です: – 地域の気候条件 – 生活スタイルや家族構成 – 予算と長期的な光熱費削減効果のバランス – 将来的な省エネ基準の動向
可能であれば、等級6や7も検討する価値があります。ただし、高断熱化に伴う初期コストの増加と、それによって得られる長期的なメリットのバランスを十分に検討する必要があります。最終的には、専門家のアドバイスを受けながら、自身の状況に最適な選択をすることが大切です。
よくある質問(Q&A)
Q1: 断熱等級を上げると、どのくらい光熱費が節約できますか?
A1: 断熱等級4から等級6に上げると、年間の冷暖房費が20〜30%程度削減できるケースが多いです。ただし、生活スタイルや地域によって異なります。例えば、4人家族で年間の冷暖房費が20万円の場合、4〜6万円程度の削減が期待できます。ただし、具体的な削減額は家族構成、生活習慣、地域の気候条件などによって変わってきます。
Q2: 既存の家の断熱等級を上げるリフォームは可能ですか?
A2: 可能です。内窓の設置や壁・天井への断熱材の追加などで断熱性能を向上できます。ただし、新築時ほどの性能向上は難しい場合があります。具体的な方法としては、屋根裏や壁への断熱材の吹き付け、床下への断熱材の敷設、高性能な断熱窓への交換などがあります。リフォームの範囲や方法によって、1〜2等級程度の向上が見込めます。
Q3: 断熱等級が高すぎると、夏は暑くなりませんか?
A3: 適切な設計がされていれば問題ありません。高断熱と適切な日射遮蔽、通風計画を組み合わせることで、夏も快適に過ごせます。具体的には、庇やルーバーなどによる日射制御、夜間の自然換気システム、高性能な換気設備の導入などが重要です。また、断熱性能が高いと、外部からの熱の侵入も防ぐため、適切に設計された高断熱住宅は夏も涼しく過ごせます。
Q4: 断熱等級を上げると、換気が不十分になりませんか?
A4: 断熱性能と換気は別の問題です。高断熱住宅では、計画的な換気システムの導入が不可欠です。24時間換気システムや熱交換型換気システムなどを適切に設置することで、室内の空気質を保ちつつ、熱損失を最小限に抑えることができます。むしろ、高断熱・高気密住宅では換気がコントロールしやすく、より良好な室内環境を維持できます。
Q5: 断熱等級を上げるとどのくらいコストが上がりますか?
A5: 一般的に、断熱等級4から等級6に上げる場合、建築コスト全体の5〜10%程度の増加が見込まれます。例えば、3000万円の住宅で150〜300万円程度のコスト増となる可能性があります。ただし、この追加コストは長期的な光熱費の削減や快適性の向上によって相殺される可能性があります。また、補助金や税制優遇を利用できる場合もあるため、総合的に検討することが重要です。
まとめ
断熱等級の向上は、住宅の快適性と省エネ性能を大幅に高める重要な要素です。初期費用は増加しますが、長期的には光熱費の削減や健康面でのメリットが期待できます。これから家を建てる際は、少なくとも断熱等級5以上を目指し、可能であればさらに上の等級も検討することをおすすめします。ただし、高断熱住宅の実現には、断熱性能だけでなく、気密性や通風計画など総合的な設計が必要です。経験豊富な専門家のアドバイスを受けながら、自分に最適な住まいづくりを進めることが大切です。
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