省エネ住宅完全マニュアル!建築時にできる工夫も解説
家づくりの基本
2024/07/26
2024/07/26
近年、地球温暖化対策や電気代の節約のため、省エネ性能の高い家づくりが注目されています。本記事では、省エネ住宅の特徴や、建築時にできる具体的な工夫について詳しく解説します。
目次
省エネ住宅の基準・特徴
省エネ住宅は、エネルギー消費を抑えつつ快適な居住環境を実現する住宅です。以下に、その基準と特徴を詳しく解説します。
1. 断熱性能
高い断熱性能は省エネ住宅の最も重要な特徴の一つです。
・断熱等級:最新の基準では等級1〜7まであり、現代の省エネ住宅では等級5以上を目指します。
・等級5:平成28年省エネ基準相当
・等級6:ZEH基準相当
・等級7:ZEH+基準相当
断熱材の性能や厚さ、施工方法などが重要な要素となります。
2. 気密性能
高気密住宅の基準として、一般的にC値(相当隙間面積)が用いられます。
・一般的な住宅:2.0 cm²/m²程度
・高気密住宅:1.0 cm²/m²以下
・超高気密住宅:0.5 cm²/m²以下
省エネ性能の高い家では、0.5〜1.0 cm²/m²程度を目指します。
3. 省エネ基準
2025年度から新築住宅に義務化される省エネ基準があります。
・UA値(外皮平均熱貫流率):地域区分により0.40〜0.87 W/(m²・K)以下
・ηA値(平均日射熱取得率):地域区分により3.0〜4.5以下
・一次エネルギー消費量:基準値に対して100%以下
4. ZEH(ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス)基準
ZEHは更に高い省エネ性能を持つ住宅の基準です。
・UA値:地域区分により0.40〜0.60 W/(m²・K)以下
・一次エネルギー消費量:基準値に対して削減率20%以上
・太陽光発電などによる創エネで、年間の一次エネルギー消費量を正味でゼロ以下に
5. 高効率設備
省エネ性能の高い家では、以下のような高効率設備の導入が一般的です。
・高効率給湯器(エコキュートなど)
・LED照明 ・高効率エアコン
・全熱交換型換気システム
6. パッシブデザイン
自然の力を活用する設計手法も重要です。
・南面の大きな窓による太陽熱の取り込み
・夏季の日射遮蔽(庇、グリーンカーテンなど)
・自然換気を促進する間取り
これらの基準や特徴を総合的に考慮し、高い省エネ性能を実現することが、現代の住宅づくりでは求められています。地域の気候条件や生活スタイルに合わせて、最適な省エネ住宅を設計することが重要です。
【高断熱】にするためにできる工夫
高断熱化は省エネ性能の高い家づくりの要です。以下に、高断熱を実現するための具体的な工夫を詳しく解説します。
1. 複層ガラスや樹脂サッシを選ぶ
窓からの熱の出入りは大きいため、高性能な窓の選択が重要です。
・複層ガラス:二枚以上のガラスの間に空気層を設けたもの。
・Low-Eガラス:特殊金属膜をコーティングし、断熱性能を高めたガラス。
・真空ガラス:ガラス間を真空にし、より高い断熱性能を実現。
・樹脂サッシ:熱伝導率の低い樹脂製のサッシ。アルミサッシと比べて断熱性能が高い。
これらを組み合わせることで、窓からの熱損失を大幅に減らすことができます。
2. 窓の数は少なく、サイズは小さくする
窓の面積を抑えることで、熱損失を減らすことができます。
・南面:大きめの窓を設置し、冬の日射熱を取り込む。
・北面:小さな窓にし、熱損失を抑える。
・東西面:必要最小限の窓にし、夏の日射熱の侵入を防ぐ。
ただし、採光や通風、眺望とのバランスを考慮することが重要です。
3. 床断熱ではなく基礎断熱にする
基礎断熱を採用することで、床下空間も含めた家全体の断熱性能を高めることができます。
・基礎の外側に断熱材を施工。
・床下空間も室内と同等の温度環境に。
・配管凍結のリスクが低減。
・床からの冷気を防ぎ、快適性が向上。
4. 全熱交換器を配置し換気する
高気密住宅では適切な換気が重要です。全熱交換器を使用することで、換気による熱損失を最小限に抑えられます。
・排気の熱を吸収し、給気に移動させる。
・冬は暖かい空気を、夏は冷たい空気を逃がさない。
・湿度も同時に調整可能。
5. 断熱材の選択と施工方法の工夫
断熱材の選択と適切な施工は高断熱化の鍵です。
・高性能断熱材の使用:フェノールフォーム、ウレタンフォームなど。
・充填断熱と外張り断熱の併用:断熱性能の向上と熱橋の防止。
・適切な厚さの確保:地域の気候に応じた必要十分な厚さを。
・隙間のない施工:断熱材同士の隙間や、配管・配線周りの隙間をなくす。
6. 熱橋(ヒートブリッジ)対策
熱橋は断熱性能を低下させる要因となります。
・外張り断熱の採用:柱や梁などの構造材を断熱材で覆う。
・断熱材の施工範囲の工夫:基礎と壁の接合部、屋根と壁の接合部など、熱が逃げやすい部分に注意。
・高性能な断熱工法の採用:例えば、枠組壁工法やSE構法など。
7. 屋根・天井の断熱強化
屋根や天井からの熱の出入りも大きいため、十分な断熱が必要です。
・屋根裏への断熱材の十分な敷き込み。
・屋根材の下への断熱材の施工(屋根断熱)。
・夏季の小屋裏の温度上昇を抑える工夫(通気層の確保など)。
これらの工夫を適切に組み合わせることで、高い断熱性能を持つ住宅を実現できます。ただし、地域の気候条件や建築様式、コストなどを考慮し、バランスの取れた設計が重要です。また、高断熱化に伴い、適切な換気計画も必須となります。
【高気密】にするためにできる工夫
高気密は高断熱と並んで、省エネ性能の高い家づくりに欠かせない要素です。以下に、高気密を実現するための具体的な工夫を詳しく解説します。
1. 断熱材は吹き付けタイプを選ぶ
吹き付けタイプの断熱材は、隙間なく施工することができ、高い気密性を実現できます。
・ウレタンフォーム:優れた断熱性能と気密性を持ち、複雑な形状にも対応可能。
・セルローズファイバー:古紙を原料とし、環境にやさしく、隙間なく充填可能。
・吹き付けグラスウール:従来のグラスウールを吹き付けることで、気密性を向上。
これらの吹き付け断熱材は、壁や天井の隙間を埋め、気密性を高めます。
2. 気密性が高くなる工法や部材を選ぶ
建築工法や使用する部材によって、気密性は大きく変わります。
・気密シートの使用:壁や天井の内側に気密シートを張り、隙間を防ぐ。
・気密テープの活用:気密シートの継ぎ目や開口部周りをしっかりとシールする。
・気密パッキンの使用:配管や配線の貫通部に使用し、隙間を塞ぐ。
・高気密性の建具選択:気密性の高いサッシや玄関ドアを選ぶ。
3. 気密測定と補修
施工後の気密測定は非常に重要です。
・気密測定器(ブローアドア)を使用して、気密性能を数値化。
・測定結果に基づき、必要に応じて追加の気密工事を実施。
・定期的な気密測定を行い、経年劣化による気密性能の低下を防ぐ。
4. 壁体内の通気層の適切な設計
壁体内の通気層は重要ですが、気密性を損なわないよう注意が必要です。
・通気層の入口と出口をしっかりと気密処理。
・通気層と室内側の間に気密層を確実に設ける。
・通気胴縁の継ぎ目にも注意を払い、気密性を確保。
5. 配管・配線設計の工夫
配管や配線は気密性を損なう原因となりやすいため、慎重な設計が必要です。
・配管・配線スペースを気密層の室内側に設ける。
・やむを得ず気密層を貫通する場合は、気密パッキンなどで確実にシール。
・床下や小屋裏の配管にも注意を払い、貫通部の処理を徹底。
6. 気密性の高い構造体の選択
建物の構造自体が気密性に影響を与えます。
・パネル工法:工場生産されたパネルを現場で組み立てるため、高い精度で気密施工が可能。
・RC造:コンクリート自体が気密性が高いため、開口部の処理に注意すれば高気密を実現しやすい。
・木造在来工法の場合:気密シートの確実な施工と、継ぎ目の処理が特に重要。
7. 換気システムの適切な設計
高気密住宅では、適切な換気が不可欠です。
・計画換気システムの導入:24時間換気や全熱交換型換気システムなど。
・給気口と排気口のバランスを考慮した設計。
・ダクトの気密性にも注意を払う。
これらの工夫を総合的に行うことで、高い気密性能を持つ住宅を実現できます。ただし、高気密化に伴い、結露や空気質の問題が生じる可能性もあるため、適切な換気計画と湿気対策も同時に考慮することが重要です。また、地域の気候条件や生活スタイルに合わせて、最適な気密レベルを選択することも大切です。
【高遮熱】にするためにできる工夫
高遮熱は、特に夏季の冷房負荷を軽減し、省エネ性能を高める重要な要素です。以下に、高遮熱を実現するための具体的な工夫を詳しく解説します。
1. 日射は庇(ひさし)や庭木で防ぐ
庇や庭木は、自然な方法で日射を遮る効果的な手段です。
・庇の設計:
– 南面の窓上部に適切な長さの庇を設置。夏は日射を遮り、冬は太陽光を取り入れる。
– 可動式の庇を採用し、季節や時間帯に応じて調整可能に。
・庭木の活用: 落葉樹を植えることで、夏は日陰を作り、冬は日光を取り入れる。 常緑樹を西側に配置し、強い西日を遮る。
2. 遮熱性能の高い屋根材を選ぶ
屋根は日射の影響を最も受ける部分であり、遮熱対策が重要です。
・高反射率塗料を使用した屋根材:日射を反射し、屋根面の温度上昇を抑制。
・遮熱シートの敷設:屋根裏に遮熱シートを敷き、熱の侵入を防ぐ。
・通気層の確保:屋根材と断熱材の間に通気層を設け、熱を逃がす。
・屋上緑化:植物や土壌の層が断熱効果を発揮し、建物への熱負荷を軽減。
3. 遮熱ガラスや熱線反射フィルムの使用
窓からの日射熱の侵入を抑えるための対策です。
・Low-E複層ガラス:特殊金属膜により日射熱を反射。
・熱線反射ガラス:可視光は通しつつ、赤外線を反射。
・熱線反射フィルム:既存の窓に貼付けて遮熱性能を向上。
4. 外壁の高反射率塗装
外壁の色や塗料の選択も遮熱に影響します。
・明るい色の外壁:濃い色よりも日射を反射しやすい。
・高反射率塗料:特殊な顔料を用いて日射反射率を高めた塗料。
・遮熱塗料:赤外線を反射する特殊な顔料を含む塗料。
5. 外部日よけの設置
窓の外側に日よけを設置することで、室内に熱が入る前に遮熱します。
・オーニング:布製の日よけで、必要に応じて展開可能。
・ルーバー:横型や縦型のスラットで日射をコントロール。
・すだれや よしず:伝統的な日よけ方法で、風通しも確保。
6. 窓の断熱シャッターや断熱カーテンの使用
窓からの熱の出入りを抑える効果があります。
・断熱シャッター:窓の外側に設置し、日射を遮るとともに断熱効果も発揮。
・断熱カーテン:厚手の生地や特殊な裏地を使用し、室内側から熱の出入りを抑制。
7. グリーンカーテンの導入
植物を利用した自然な遮熱方法です。
・つる性植物(ゴーヤ、アサガオなど)を窓の外側に育てる。
・葉の蒸散作用により周囲の温度を下げる効果も。
・冬は落葉するため、季節に応じた日射調整が可能。
8. 通風設計の工夫
風通しを良くすることで、室内の熱がこもるのを防ぎます。
・風の通り道を考慮した間取り設計。
・高窓の設置により、温まった空気を効率的に排出。
・ナイトパージ(夜間換気)を行いやすい設計。
これらの工夫を組み合わせることで、効果的な高遮熱住宅を実現できます。ただし、冬季の日射熱取得とのバランスも考慮し、地域の気候条件に応じた適切な設計が重要です。また、遮熱対策と併せて、適切な断熱・気密性能の確保も忘れてはいけません。総合的なアプローチにより、年間を通じて快適で省エネな住環境を実現することができます。
「省エネ」とあわせて「創エネ」「蓄エネ」も考えよう
省エネだけでなく、太陽光発電システムなどの「創エネ」技術や、蓄電池などの「蓄エネ」技術を組み合わせることで、さらに効果的なエネルギー管理が可能になります。特に、ZEH(ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス)の実現を目指す場合は、これらの技術の導入が重要です。
省エネ住宅についてよくある質問(Q&A)
省エネ住宅に関して、多くの方が疑問に思う点について、詳しく回答します。
Q1: 省エネ住宅とZEH(ゼッチ)住宅の違いは何ですか?
A1: 省エネ住宅は広義にエネルギー消費を抑える住宅全般を指しますが、ZEH(ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス)はより具体的な基準を持つ省エネ住宅の一形態です。
省エネ住宅
・一般的に高断熱・高気密・高効率設備を備えた住宅
・エネルギー消費量の削減を目指すが、具体的な数値基準は様々
ZEH
・年間の一次エネルギー消費量が正味でゼロ以下
・高い断熱性能(UA値が地域区分に応じて0.4〜0.6W/㎡K以下)
・省エネ設備と太陽光発電などの創エネ設備を組み合わせる
・具体的な数値基準があり、認定制度がある
Q2: パッシブハウスとはどのような住宅ですか?
A2: パッシブハウスは、機械的な冷暖房システムをほとんど必要とせずに快適な室内環境を実現する超高性能住宅です。
主な特徴
・極めて高い断熱性能(UA値0.25W/㎡K程度)
・高気密(C値0.6回/h以下)
・高性能換気システム(全熱交換器の使用が一般的)
・日射や通風などの自然エネルギーを最大限活用
・年間暖房負荷が15kWh/㎡以下、冷房負荷が15kWh/㎡以下
・一次エネルギー消費量が120kWh/㎡/年以下
Q3: 断熱材の種類は自分で選べるのでしょうか?それぞれの特徴は?
A3: 断熱材の種類は基本的に選択可能ですが、建築会社や設計者と相談しながら決めるのが一般的です。主な種類と特徴は以下の通りです。
グラスウール
– 特徴:軽量、安価、施工性が良い
– 課題:吸湿すると性能低下、圧縮されると性能低下
ロックウール
– 特徴:防火性能が高い、遮音性能が良い
– 課題:グラスウールと同様に吸湿や圧縮に注意
押出法ポリスチレンフォーム
– 特徴:防湿性が高い、圧縮強度が高い
– 課題:価格が比較的高い、有機溶剤を使用
ウレタンフォーム
– 特徴:気密性が高い、現場発泡で隙間なく充填可能
– 課題:価格が高い、施工時の臭気
セルローズファイバー
– 特徴:自然素材(古紙)、吸放湿性が良い
– 課題:施工に専門技術が必要、防湿対策が重要
Q4: 省エネ住宅は夏も冬も快適に過ごせますか?
A4: はい、適切に設計された省エネ住宅は夏も冬も快適に過ごせます。
・冬季:高断熱・高気密により室内の熱を逃がさないため、少ないエネルギーで暖かく保てます。
・夏季:遮熱対策と高断熱により外部からの熱の侵入を防ぎ、夜間の冷気を活用するなどして快適に保てます。
・中間期:自然換気を活用し、機械的な冷暖房なしで快適に過ごせることが多いです。
Q5: 省エネ住宅のコストはどのくらいですか?通常の住宅と比べて高くなりますか?
A5: 省エネ住宅は一般的に通常の住宅よりも初期コストは高くなりますが、長期的には光熱費の削減によりコストメリットがあります。
・初期コスト:通常の住宅と比べて5〜15%程度高くなることが多い
・ランニングコスト:光熱費が30〜50%程度削減できることも
・長期的視点:10〜20年程度で初期コストの差額を回収できるケースが多い
・補助金:various行政の補助金制度を利用することでコスト負担を軽減できる場合がある
具体的なコストは、住宅の規模、選択する設備、地域性などにより大きく異なるため、詳細は建築会社や設計事務所に相談することをお勧めします。
快適な暮らしの実現に向け、省エネ性能が高い家づくりを楽しもう
省エネ性能の高い家づくりは、単にエネルギー消費を抑えるだけでなく、快適で健康的な暮らしを実現する手段でもあります。高断熱・高気密・高遮熱の技術を適切に組み合わせることで、四季を通じて快適な室内環境を維持しつつ、光熱費の削減や環境負荷の低減を図ることができます。
ただし、省エネ住宅の建築には、従来の住宅よりも高度な技術と知識が必要です。信頼できる専門家と相談しながら、自分たちの生活スタイルや予算に合った最適な省エネ住宅を設計することが大切です。また、補助金や助成金制度を活用することで、初期費用の負担を軽減することもできます。
省エネ性能の高い家づくりは、私たちの暮らしを豊かにするだけでなく、地球環境の保護にも貢献します。これからの家づくりでは、省エネ性能を重要な要素の一つとして考え、快適で持続可能な住まいづくりを目指していきましょう。
なお、当社が提供している「housemarriage」では、住宅コンシェルジュが理想の家づくりのサポートとして、住まいを探す上で重要なハウスメーカーや工務店の営業担当者とのマッチングサポートをさせていただきます。住宅購入の資金計画の相談・作成や、相性良く親身になってくれる「営業担当者」をご紹介します。家づくりに関して少しでも不安を感じるようであれば、お問い合わせください。
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