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住宅金融支援機構の【フラット35】の仕組みや特徴、返済例を解説

家づくりの予算・費用

2024/11/22

2024/11/22

記事監修者

1級ファイナンシャル・プランニング技能士 / 渡辺 知光

住宅金融支援機構の【フラット35】の仕組みや特徴、返済例を解説

住宅購入時の住宅ローンとして人気の高い【フラット35】。全期間固定金利で返済額が変わらない安心感がある一方で、「仕組みが複雑で分かりにくい」という声も。そこで今回は、【フラット35】の特徴や仕組み、返済シミュレーションについて、住宅購入を検討されている方向けに詳しく解説していきます。

住宅金融支援機構とは

住宅金融支援機構は、政府100%出資の独立行政法人で、質の高い住宅の建設促進や住宅金融市場の発展を目的として設立された機関です。その代表的な商品が【フラット35】で、民間金融機関と連携して提供する長期固定金利住宅ローンです。

【フラット35】の特徴

【フラット35】には、他の住宅ローンと比べて特徴的な点が多くあります。ここでは主な特徴を詳しく解説していきます。

全期間固定金利

【フラット35】最大の特徴は、借入当初から最終返済まで金利が変わらない「全期間固定金利」という点です。例えば35年の返済期間を選んだ場合、35年間ずっと同じ金利が適用されます。そのため、将来の返済額が確定でき、家計の見通しが立てやすいというメリットがあります。

最長35年の返済期間

返済期間は15年以上35年以内から選択できます。35年という長期の返済期間を設定できることで、毎月の返済額を抑えることができます。ただし、完済時の年齢が80歳未満という年齢制限があります。

融資限度額と頭金

融資限度額は物件価格の最大9割までとなっており、残りの1割以上は頭金として用意する必要があります。また、融資限度額の上限は8,000万円となっています。頭金については、親からの贈与金や諸費用も含めることができます。

団体信用生命保険の加入が必須

【フラット35】では、団体信用生命保険への加入が必須となっています。借入れ者が死亡または所定の高度障害状態になった場合、残りの住宅ローンが返済される仕組みになっています。これにより、万が一の場合でも家族に返済の負担が残らないよう配慮されています。

技術基準による住宅の品質確保

【フラット35】で住宅を購入する場合、住宅金融支援機構が定める技術基準に適合している必要があります。耐久性や省エネルギー性、バリアフリーなどの性能が基準を満たしているかどうかの検査が行われ、良質な住宅の供給促進にも寄与しています。

金利優遇制度の活用

省エネ性能やバリアフリー性能などが優れた住宅を選択する場合、【フラット35】Sという制度を利用することで、当初の金利が一定期間優遇されます。これにより、性能の高い住宅の取得を支援する仕組みが整っています。

手数料と諸費用

【フラット35】を利用する場合、融資手数料として借入額の2.0%程度が必要となります。また、住宅の検査費用や火災保険料、登記費用なども別途必要になります。これらの諸費用は、借入額とは別に用意する必要があります。

借り換えの制限

【フラット35】は、原則として借り換えができない仕組みとなっています。そのため、金利が下がったとしても、借り換えによる金利の低減は期待できません。ただし、住宅金融支援機構が提供する【フラット35】借換融資を利用することは可能です。

収入合算の柔軟性

【フラット35】では、配偶者だけでなく親や子どもの収入も合算することができます。これにより、より多くの融資額を借り入れることが可能になります。ただし、収入合算する場合は、連帯債務者として住宅ローンを組む必要があります。

繰り上げ返済の柔軟性

毎月の返済とは別に、まとまった金額を繰り上げ返済することも可能です。返済期間を短縮するか、毎月の返済額を減額するかを選択できます。ただし、繰り上げ返済を行う場合は、事前に金融機関への申し出が必要です。

死亡や火事など、万が一の不安に対応する仕組み

住宅ローンを組む際に気になるのが、万が一の場合の対応です。【フラット35】では、借入れ者や家族を守るためのさまざまな保障制度が用意されています。ここでは、その詳細について解説していきます。

団体信用生命保険による保障

【フラット35】では、団体信用生命保険への加入が必須となっています。この保険は、借入れ者が死亡または所定の高度障害状態になった場合、残りの住宅ローンが返済される仕組みです。保険料は金利に含まれているため、別途支払う必要はありません。

三大疾病保障型の団信

通常の団体信用生命保険に加えて、がん・急性心筋梗塞・脳卒中という三大疾病による所定の状態になった場合にも保障される「三大疾病保障型団信」も選択できます。ただし、この場合は通常の団信より金利が若干高くなります。

新機構団信制度

高血圧症などで通常の団信に加入できない場合でも、新機構団信制度を利用することで住宅ローンを組むことができます。ただし、加入にあたっては所定の審査があり、金利も通常より高くなります。

火災保険の加入義務

【フラット35】では、火災保険への加入が必須となっています。火災や自然災害による建物の損害に備えることができ、保険期間は住宅ローンの返済期間以上とする必要があります。保険金額は、建物の再調達価額以上での設定が求められます。

地震保険のオプション

火災保険に加えて、地震保険への加入も検討できます。地震・噴火・津波による損害は火災保険では補償されないため、地震保険への加入で補完することができます。ただし、地震保険は任意加入となっています。

8疾病保障付住宅ローン

一部の金融機関では、8つの疾病(がん、急性心筋梗塞、脳卒中、高血圧症、糖尿病、慢性腎不全、肝硬変、慢性膵炎)により就業不能となった場合に、最長2年間の返済を保障する制度も用意されています。

失業保険制度

勤務先の倒産や会社都合による失業の場合、一定期間の返済猶予や返済期間の延長などの対応を検討できます。ただし、この制度の利用には一定の条件があり、事前に住宅金融支援機構への相談が必要です。

返済困難時の相談体制

災害や失業などにより返済が困難になった場合、返済方法の変更などの相談に応じる体制が整備されています。早めに金融機関や住宅金融支援機構に相談することで、状況に応じた対応を検討することができます。

債務承継制度

借入れ者が死亡した場合、配偶者や子どもが債務を引き継いで、そのまま住宅に住み続けることができる制度も用意されています。ただし、承継する方の年齢や収入などの要件を満たす必要があります。

住宅融資保険制度

金融機関の破綻などにより、住宅ローンの返済に支障が生じた場合でも、住宅金融支援機構が返済を引き継ぐ仕組みが整備されています。これにより、借入れ者は安心して返済を継続することができます。

【フラット35】の返済額や繰り上げ返済のシミュレーション

住宅ローンを検討する際、毎月の返済額や将来の返済計画を具体的に理解しておくことは重要です。ここでは、【フラット35】の返済額や繰り上げ返済について、具体的な数字を用いながら詳しく解説していきます。

基本的な返済額のシミュレーション

【フラット35】の返済額は、借入額、金利、返済期間によって決まります。以下に具体例を示します。

 

借入額3,000万円、金利1.5%の場合:

・35年返済:毎月約8.5万円

・30年返済:毎月約10.3万円

・25年返済:毎月約12.0万円

なお、総返済額は35年返済の場合、約3,570万円となります。

ボーナス払いを活用した返済プラン

ボーナス払いを活用することで、毎月の返済額を抑えることができます。

借入額3,000万円のうち、40%(1,200万円)をボーナス払いに設定した場合:

・毎月の返済額:約5.1万円

・ボーナス時の返済額:約51万円(年2回)

これにより、毎月の返済負担を軽減することが可能です。

繰り上げ返済のパターン別効果

借入額3,000万円、金利1.5%、35年返済の場合の繰り上げ返済効果:

・100万円の繰り上げ返済:返済期間を約2年短縮

・300万円の繰り上げ返済:返済期間を約5年短縮

・500万円の繰り上げ返済:返済期間を約8年短縮

または、返済期間はそのままで毎月の返済額を減額することも可能です。

返済額と年収のバランス

一般的に、年収に対する返済額の割合は25%以下が目安とされています。

・年収400万円の場合:毎月の返済額の上限は約8.3万円

・年収500万円の場合:毎月の返済額の上限は約10.4万円

・年収600万円の場合:毎月の返済額の上限は約12.5万円 この範囲内で返済計画を立てることが推奨されています。

諸費用を含めた資金計画

住宅ローンを組む際は、諸費用も考慮する必要があります。

借入額3,000万円の場合の諸費用例:

・融資手数料:約60万円(借入額の2.0%)

・火災保険料:約15万円(10年分)

・登記費用:約15万円

・団体信用生命保険:金利に含まれる

合計で約100万円程度の諸費用を見込む必要があります。

定期的な繰り上げ返済の効果

毎年一定額を繰り上げ返済することで、大きな効果が期待できます。

借入額3,000万円、35年返済で、毎年50万円ずつ繰り上げ返済をした場合:

・返済期間:約12年短縮

・総返済額:約500万円削減

このように、計画的な繰り上げ返済は大きな効果をもたらします。

返済プランの見直し時期

返済プランは、ライフステージの変化に応じて見直すことが重要です。

・結婚時:配偶者の収入を考慮した返済計画の見直し

・出産時:教育費を見据えた返済額の調整

・昇給時:繰り上げ返済の検討

・退職金受取時:まとまった繰り上げ返済の検討

このように、生活環境の変化に合わせて柔軟に対応することが大切です。

返済比率の計算方法

返済比率は、年収に対する年間返済額の割合で計算します。 計算式:(年間返済額 ÷ 年収)× 100 例えば、年収500万円で毎月の返済額が10万円の場合: (120万円 ÷ 500万円)× 100 = 24% となり、目安となる25%以内に収まっています。

返済シミュレーションの活用方法

住宅金融支援機構のホームページでは、様々な条件での返済シミュレーションが可能です。

・借入額の増減による返済額の変化

・返済期間の調整による毎月の返済額の変化

・ボーナス払いの割合による返済プランの比較

・繰り上げ返済による効果の試算

これらを活用して、最適な返済プランを検討することができます。

よくある質問(Q&A)

【フラット35】に関してよく寄せられる質問について、Q&A形式で詳しく解説していきます。住宅ローンの利用を検討されている方の不安や疑問に、具体的にお答えします。

申し込み・審査について

Q1: 誰でも【フラット35】を利用できますか?

A1: 年齢や収入に関する基準があります。返済終了時の年齢が80歳未満であること、年収に占める返済額の割合が一定以下であることなどの条件を満たす必要があります。なお、自営業の方も利用可能です。

Q2: 審査の期間はどのくらいかかりますか?

A2: 通常、必要書類がすべて揃ってから2~3週間程度かかります。ただし、物件検査や金融機関の審査状況によっては、さらに時間がかかる場合があります。

金利・返済について

Q1: 金利は銀行ローンより高いのですか?

A1: 変動金利型と比べると高めですが、全期間固定型としては比較的低い水準に設定されています。また、【フラット35】Sを利用することで、当初の金利を引き下げることも可能です。

Q2: 返済期間の途中で金利は変わりますか?

A2: 【フラット35】は全期間固定金利なので、返済期間中に金利が変わることはありません。借入時の金利が返済終了まで適用されます。

物件・頭金について

Q1: 中古物件でも【フラット35】は利用できますか?

A1: 利用できます。ただし、新築住宅と同様に住宅金融支援機構が定める技術基準に適合している必要があります。築年数や耐震性能などの条件があります。

Q2: 頭金は必ず必要ですか?

A2: 物件価格の1割以上の頭金が必要です。ただし、親からの贈与金や諸費用も頭金として認められます。全額融資を希望する場合は、銀行の住宅ローンを検討する必要があります。

保険・保障について

Q1: 団体信用生命保険は必ず加入する必要がありますか?

A1: はい、加入は必須です。ただし、保険料は金利に含まれているため、別途支払う必要はありません。既往症がある場合は、新機構団信制度の利用を検討できます。

Q2: 失業した場合、返済はどうなりますか?

A2: 会社都合による失業の場合、返済の猶予制度を利用できる可能性があります。早めに住宅金融支援機構に相談することが重要です。

手続き・書類について

Q1: 必要な書類は何ですか?

A1: 本人確認書類、収入証明書、源泉徴収票、住民票、物件の契約書などが必要です。自営業の方は確定申告書なども必要となります。詳細は取扱金融機関に確認してください。

Q2: 借り換えは可能ですか?

A2: 原則として、一般的な借り換えはできません。ただし、【フラット35】借換融資という制度を利用することは可能です。

その他

Q1: 夫婦で収入を合算できますか?

A1: 可能です。配偶者だけでなく、同居する予定の親族の収入も合算できます。ただし、収入合算する場合は連帯債務者となります。

Q2: 繰り上げ返済は可能ですか?

A2: 可能です。返済期間の短縮か、毎月の返済額の減額を選択できます。手数料は無料で、最低10万円から繰り上げ返済が可能です。

Q3: 住宅ローン控除は利用できますか?

A3: 条件を満たせば利用可能です。最大13年間にわたり、所得税等の控除を受けることができます。詳細は税務署や税理士にご確認ください。

Q4: マンションでも利用できますか?

A4: 利用できます。ただし、新築・中古マンションともに、住宅金融支援機構が定める技術基準に適合している必要があります。

Q5: 【フラット35】Sとは何ですか?

A5: 省エネルギー性や耐震性などの性能が優れた住宅を取得する場合に、当初の金利が一定期間引き下げられる制度です。

まとめ

【フラット35】は、全期間固定金利で将来の返済額が確定できる安心感が大きな魅力です。ただし、頭金が必要なことや審査基準が厳格なことなど、いくつかの制約もあります。住宅ローンを検討する際は、自身の経済状況や将来設計を踏まえ、【フラット35】が最適な選択肢かどうかを慎重に判断することが大切です。

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記事監修者

1級ファイナンシャル・プランニング技能士 / 渡辺 知光

大学卒業後、積水化学工業に入社し住宅「セキスイハイム」を販売。3年8カ月千葉県内で営業に従事し、営業表彰を6期連続受賞。
途中、母の急死に直面し、自分の将来について悩み始める。結果、大学のゼミで学んだ「保険」事業に実際に携わりたいと思いFP資格を取得して日本生命に転職。4年間営業に従事したが、顧客に対して提供出来る商品がなく退職を決意。FP兼保険代理店を開業する。

収入も顧客もゼロからのスタート。しかも独立直前に結婚し住宅購入した為、返済不安に陥り貯蓄が日々減っていく恐怖を覚える。

人生で初めて家計の見直しを行い、根本的な改善により失敗と不安を減らすコツを発見。自分の経験を生かしお客様が同じ道を歩まないよう伝えるべく「マイホーム検討者向けFP」として活動中。

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    :有限会社ティーエムライフデザイン総合研究所

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    :渡辺知光

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